2026年5月10日(日)に「第6回中高生のためのイノベーションセミナー 好きからはじまる、理系の世界 -Start with Curiosity : Your Journey into STEM-」を開催いたしました。今回も、前回と同じく対面とオンラインでのハイブリット開催で、現地開催ならではの臨場感がありながらも、全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。総合司会は植村知博先生(お茶の水女子大学理学部生物学科教授)が担当いたしました。
講演の部
最初に、川勝麻美様(BASFジャパン株式会社化学品中間体事業部事業部長)からBASFジャパン株式会社のご紹介をしていただきました。BASFは総合化学メーカーであり、ドイツに本社があります。生産拠点はアメリカ・ベルギー・中国・マレーシアにあり、世界中で約11万人の従業員がいます。1865年に設立されて以降、1869年に合成染料の開発、1902年にハーバー・ボッシュ法を用いた人工合成アンモニアの世界初の大量生産、1930年代の磁気テープの開発、1951年の発泡スチロールの開発、1998年の生分解性プラスチックの開発などにより、時代を牽引してきました。現在も化学技術を用いて環境問題に貢献する商品の開発を行っています。
次に、Dr. Annegret Welzel 様(BASF ファーマソリューションズ バイスプレジデント)にキャリアについて語っていただきました。通訳は川勝様が行ってくださいました。
Welzel 様は探検に強い憧れを持っていて、子どもの頃にはエジプトが好きで、考古学者になりたいと思っていました。しかし、視野を広げれば宇宙という広大な未知の領域があることに気づき、宇宙船を作ることや、宇宙飛行士になることにも憧れるようになりました。未知のものへの好奇心を強く持っていた中、ジェームズ・D・ワトソンの『二重らせん』という本に出会い、生命の仕組みに興味を持ったことが進路選択のきっかけになりました。また、高校生の時に、仲が良かった祖父をがんで亡くして、生物学を専門にしてがん治療に携わって社会貢献したいと思うようになりました。
生物学を学んでどうするのか、生物学をはじめとしたSTEM分野は男性の方が向いている学問であり、研究の世界は競争が激しいので、教師や医師になって手に職をつけた方がいいのではないか、と進路選択の際に言われたこともありました。しかし、自分の興味や情熱を大切にして、博士課程まで進学しました。
Welzel 様には2人の子どもがいながら、企業で働き続けています。周囲でも、両立ができている人はたくさんいるといいます。競争が激しいのはどこの分野でも一緒なので、自信を持って、自分がやりたいことをやれるのが一番だと力強くおっしゃっていました。
生物学を専攻していて、壁にぶつかったこともあり、特に博士課程ではなかなか結果が出ずに苦しまれたといいます。しかし、友人や教授、メンターなど困ったときに手を差し伸べてくれた人たちの助けもあって、諦めずに続けたことで成し遂げることができました。
Welzel 様はご自身の経験を通じて、興味があることはとにかくやってみることが重要だとおっしゃっていました。居心地の良い環境から一歩踏み出して、新しいことを始めた先に成長があり、達成した時の感動は何にも代えがたい素晴らしい体験だといいます。
現在の日本では研究開発の人材が不足しており、今回のイベントに参加された中高生の皆さんのように、STEMに関心がある女性を必要としています。STEMを専攻することで得られる分析力・論理力・データに基づく判断力・忍耐力は仕事をしていく上で重要な力です。ぜひ、皆さんには勇気を持ってSTEMを選んでほしいです、この社会には皆さんの力が必要です、と締めくくられました。
質疑応答
講演の後に質疑応答の時間を設けました。今回も対面会場・オンライン双方の参加者から寄せられた質問の一部をご紹介いたします。
Q 他の国の人と働く際に気をつけていることは何ですか?
A(Welzel 様)現在、アジア地域を担当していて、特にインドでの医薬品事業に力を入れています。仕事の関係で、様々な国の人と会議をしたり、ベトナムなど現地へ出張したりすることも多いです。会議をする際には、ドイツ人はずっと喋り続けるのに対し、アジア圏の、日本や韓国やタイの人はおとなしく発言が控えめなことが多いです。そのため、バランスよく話を聞けるように、発言が控えめな人に話を振ったり、たくさん話す人に休憩するように促したりします。また、出張で現地に行く際には現地の言語を少し覚えていきます。簡単な単語や挨拶でも良いので、覚えておくと、コミュニケーションを円滑にする助けになります。
Q やりたいことがたくさんある時に優先順位はどうやってつければ良いですか?
A(Welzel 様)リストを作成する際の優先順位のつけ方としては、上に持ってくるのは宿題など自分にとってやるべきことにして、その後にやりたいと思っている趣味などを入れるべきだと思います。ご飯を食べるときに、それほど好きではないものから食べて、最後にデザートを取っておくような感覚です。自分の中でシステム化していき、やるべきことをやってから自分のやりたいことをやりましょう。
Q 今まで取り組んできたプロジェクトで印象に残っていることは何ですか?
A(Welzel 様)研究をしていた時には、食肉用の鶏の餌の開発をしていました。鶏の骨が頑丈になると一羽から得られる肉の量が増えるので、鶏の骨を強化する成分を配合していました。自分が携わった研究から生まれた製品が実際に社会に発表され、販売される場面に立ち会うことができ、自分の中で研究開発がビジネスを通じてお客様の手に届き、お金をいただくまでのサイクルが完結したことが印象深かったです。



