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2026年6月7日(日)に、お茶の水女子大学にて「第6・7回 植物の細胞の中のダイナミックな世界を体感しよう」を開催いたしました。

 

講義(実験の目的)

講義の前半では、講師の伊藤瑛海先生(基礎生物学研究所准教授)から原形質流動についての説明と、実験の目的についての講義を受けました。
原形質流動とは、植物細胞の中で葉緑体などの細胞小器官が流れるように移動する現象です。中学校までの理科ではあまり扱われませんが、その速さは「世界最速のスプリンターに匹敵する」とも言われています。

そこで本実験では、オオカナダモの原形質流動を実際に観察し、その速度を測定することで、この説を検証することを目的としました。細胞の中で起こる現象が、人間の走る速さと比べられるという意外な話に、参加者からも驚きの声が上がりました。

 

講義(材料と方法)

講義では、観察に用いるオオカナダモについても紹介しました。オオカナダモは外来種であり、生態系への影響が懸念されている植物ですが、細胞が大きく観察しやすいことから、学校教育や研究の現場で広く利用されています。

また、顕微鏡や実験器具(マイクロピペット)の使い方についても説明を行いました。特にマイクロピペットは初めて扱う参加者も多く、アシスタントの補助を受けながら慎重に操作しました。研究者が日常的に使用している器具に触れることで、研究活動を身近に感じてもらう機会となりました。

 

試料作成と顕微鏡による観察

完成したプレパラートを用いて原形質流動を観察しました。まず10倍の対物レンズで観察位置を決定し、その後40倍の対物レンズを用いて細胞内部を詳しく観察しました。
観察では、葉の中心を走る葉脈付近の細胞に注目し、葉緑体の動きを観ました。顕微鏡の中で葉緑体が次々と移動する様子が見えると、「本当に動いている!」という声も聞かれ、教科書や写真では分からない細胞のダイナミックな世界を体感してもらうことができました。

 

観察と計測

続いて、接眼ミクロメーターを用いて葉緑体の移動速度を測定しました。1目盛りの長さが分かっている接眼ミクロメーターを使用し、10目盛分の距離を葉緑体が移動する時間を測定しました。
測定は1人につき3回行い、得られた値から葉緑体の移動速度(=原形質流動の速さ)を計算しました。さらに3回の結果から平均値を求めました。
その後、求めた原形質流動速度を「葉緑体がウサイン・ボルト選手と同じ身長(195 cm)だった場合」の速度に換算しました。比例計算によって速度を m/s に換算し、100 mを何秒で走る速さに相当するのかを計算しました。

その結果、100 mを5秒程度で走る速さに相当する結果もあれば、60秒程度に相当する個体もありました。個体差は大きいものの、細胞内の現象が人間のスケールに換算すると驚くほど速いことを実感できる結果となりました。

 

 

原形質流動の解説

最後に、原形質流動の仕組みについて学びました。
原形質流動は約200年前に発見された現象ですが、その役割が明らかになってきたのは比較的最近のことです。植物の原形質流動は他の生物と比べても非常に高速であることや、その速さを決定する仕組みが少しずつ解明されつつあることを紹介しました。
また、細胞工学的な実験から、原形質流動が植物の成長や細胞サイズの決定に関わることも分かってきています。身近な植物の細胞の中で起こる現象が、現在も世界中で研究されている最前線のテーマであることを学びました。

 

考察と共焦顕微鏡による観察

実験の最後には、「①仮説とどのくらい違っていたか」「②なぜそのような結果になったのか」「③新たに芽生えた疑問はあるか」「④その疑問はどのようにすれば検証できるか」という観点から考察を行いました。
参加者は考察内容を付箋にまとめて掲示し、お互いの意見を共有しました。新たな疑問も多く挙がり、科学的な視点で現象を捉えるきっかけとなりました。

また最後に、共焦点レーザー顕微鏡を用いた葉緑体自家蛍光のタイムラプス観察を行いました。蛍光タンパク質や蛍光観察の原理について説明した後、研究現場でも使用される顕微鏡で細胞内部を観察しました。
参加者からは、顕微鏡の仕組みや蛍光退色についてなど多くの質問が寄せられ、細胞工学への高い関心がうかがえました。普段目にすることのない最先端の研究機器を体験することで、細胞の中で起こる生命現象への理解をより深めることができました。

また、一部の時間で保護者と大学教員による懇談会を開催し、理系進学に関する自由な質疑応答を行いました。