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2026年7月25日(土)に「中高生のための第7回グローバル講演会—サイエンスから世界へ—」をオンラインにて開催いたしました。東京近辺だけでなく、関西圏や中部地方、九州・四国地方など、様々な地域にお住まいの中高生の方々にご参加いただきました。今回の講演会では、研究者としてグローバルに活躍される方々をゲストにお招きし、ご自身の経験や現在のお仕事などに関するお話をしていただきました。モデレーターは、お茶の水女子大学理学部生物学科の植村知博教授が担当いたしました。植村教授は様々な国や地域の研究者の方々と交流し、共同研究を行なっております。

 


一つ目の講演は、中村 友輝 様(理化学研究所 環境資源科学研究センター チームディレクター・東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 教授)による『シンガポール、ドイツ、台湾―研究者のキャリアで世界をめぐる』です。

中村様は高校では部活動に打ち込んでおり、理系科目が苦手で、最初は文系での進学を考えていました。しかし、DNAをきっかけに生物の原理に感動し、理系に興味を持つようになりました。当初は文系として受験勉強を続けていましたが、生物への興味を諦めきれず、高校3年生の夏に理系へ進路変更されました。東京工業大学(現 東京科学大学)に進学し、学部生時代には異文化に憧れてバックパッカーとして80カ国以上を訪れました。研究室配属では学部唯一の植物系のラボに配属され、そこで行っていた研究が現在のご専門の植物の脂質分子の研究に繋がっています。

大学院在学中も海外への渡航を重ねて一時は就職も考えられました。しかし、自ら考案した実験が成功したことをきっかけに研究の面白さを実感し、博士後期課程への進学を決意されました。博士後期課程へ進学後は論文原稿を書き上げては海外に行く生活を繰り返していました。その中で、海外への興味と研究を両立する方法として、海外で研究する道を選ばれました。そこで、アジアでリーダーシップを発揮する研究者を目指し、博士号取得後にはアジアの中でも国際的かつ基礎科学研究の誘致に積極的だったシンガポールに行くことを決意されました。

日本学術振興会海外特別研究員に採用され、シンガポール国立大学で3年間研究に従事したのち次はフンボルト財団研究フェローに採用され、新たな研究分野を学び研究者ネットワークを広げるためドイツへ渡り、植物育種学研究所およびボン大学に赴任されました。その後2011年には台湾で自身の研究室を立ち上げ、国際的な研究拠点として活動されました。多様な文化圏に行くたびに現地に溶け込んだ研究生活を心がけていたことは、研究室での異文化の相互理解にも役立ちました。アジア在勤アジア人研究者で史上初の欧州分子生物学機構若手研究者として選出されるなどの実績を重ね、研究成果を挙げた後、2022年に日本に戻ることを決め、理化学研究所(東京大学を兼務)で研究を開始されました。現在は植物が脂質を作る仕組みの理解とその応用を目指し、植物由来の油脂を産業利用する研究に取り組んでいらっしゃいます。

最後に中村様は、「自分が自分の最大の応援者であることが大切」と述べられました。人生は一度きりであり、自分が本当にやりたいと思うことを選ぶこと、そして選択には後から自分自身で意味や物語を見いだしていけばよいと、中高生へ温かいメッセージを送られました。

 


二つ目の講演は、石井 みどり 様(エディンバラ大学 博士研究員)による『スコットランドで暮らし働く』です。

石井様は、現在イギリスのエディンバラ大学で細胞分裂における染色体分配の研究を行っていらっしゃいます。幼い頃から昆虫採集や「つくば科学フェスティバル」などの体験型イベントに親しみ、科学者が身近な環境で育ったことが理系へ進む原点になりました。高校では何を学びたいかが決めきれず、入学後に学部・学科を選ぶ「進学選択(進学振分け)」制度に魅力を感じて東京大学へ進学されました。進路選択にあたっては、保護者からは自由に進路を選ぶよう背中を押されたそうです。入学後には、取り組みたい学問分野を探すために色々と授業を受ける中で、映像で見たタンパク質のダイナミックな動きに魅了され、生物化学の道へ進むことを決心されました。顕微鏡で生きた細胞の変化を見ることへの強い関心が、現在に至るまで研究のモチベーションとなっているのだといいます。

海外で研究することを考え始めたのは、大学院博士後期課程の一年生でアメリカへ渡航したことがきっかけでした。そのときに、「英語が流暢でなくとも、サイエンスの言語は世界共通であり、飛び込んでみればどうにかなる」という実感を強く得たといいます。その後、研究分野の面白さと、現地の指導教員に惹かれ、イギリスで博士研究員として働くことを決意されました。海外では博士号が「どこへでも行けるパスポート」として高く評価されており、専門職として働く上で大きな強みになったといいます。また、日本とは慣習の異なる現地の保育園での子育てと、研究の両立についても詳しくお話を伺いました。

最後に石井様は、「英語は完璧でなくても、まずは飛び込んでみることが大切」と述べられました。交換留学や旅行なども活用し、身軽な中高生のうちに海外を経験することで、自身の世界や選択肢が大きく広がると、中高生へエールを送られました。

 


講演後の質疑応答では、参加者と講演者との積極的なコミュニケーションが図られました。苦手科目への向き合い方や、海外渡航費用をどのように準備したのか、海外で研究することを決めた際の不安など、海外での学びを将来の選択肢として考えている中高生から、積極的な質問が多数飛び交いました。

この講演を通じて、海外で活躍する研究者の多様なキャリアや価値観に触れ、中高生の皆さんが将来の可能性について考える貴重な機会となったのではないでしょうか。講演者のお二人のお話を通して、自分の興味や好奇心を大切にしながら新たな挑戦へ踏み出すきっかけとなれば幸いです。