0

2021年9月23日(木)にオンラインにて第1回フロントランナーセミナーを開催いたしました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえてオンラインでの開催となり、全国各地の沢山の方々にご参加いただきました。司会はお茶の水女子大学 理系女性教育開発共同機構 機構長の加藤美砂子教授が担当いたしました。


最初の講演は、沓掛 磨也子様(産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 研究グループ長)「昆虫研究者という道を選んで」というテーマでお話しいただきました。沓掛様は高校生のときに生命の不思議さに感動してお茶の水女子大学生物学科に進学されました。当時話題となったヒトゲノム計画の影響もあり、大学生のときにショウジョウバエで遺伝学の研究を始めたことが昆虫研究者としての道が始まりだったそうです。研究の中の「新しいことを自分で発見する」という楽しさと大変さ、世界中の人に研究成果を知ってもらえる喜びが、その後も研究を続けていく大きな後押しになったそうです。産業総合研究所に移ってからは、社会性アブラムシの研究に取り組まれています。昆虫の世界には面白いけどまだ解明されていない現象がたくさんあり、その謎を分子レベルで解明したいとおっしゃっていました。育児と両立しながらの研究者の生活についてもお話しいただき、仕事だけでない大学卒業後の人生について考える機会になりました。最後に参加者に持ち帰ってほしいメッセージとして「やりたいことがまだ見つからない人も大丈夫です。しかし自分が好きなことは何か?というアンテナだけは常に立てておき、目の前のことに真摯に最後まで取り組むことで、後々役立つような力を身についていきます。」という言葉をいただきました。

次の講演は、笠松 千夏様(味の素株式会社 食品事業本部 食品研究所 エグゼクティブスペシャリスト)「#食リケジョ しか勝たん 〜フードサイエンスを仕事にする〜」というテーマでお話しいただきました。笠松様はお茶の水女子大学の家政学部食物学科卒業後に味の素株式会社に入社し、一度退社したのち、家族を支えながら海外大学院での学び直しや、帰国後に派遣社員としての研究所での勤務など多様なキャリアを経験されたのち、現在は再び企業研究者としてご活躍されています。ご自身の経験から「ワーク・ライフバランス」に加えて、人生の各所でスタディを加えたバランスをとることが女性のキャリアには大事だとおっしゃっていました。また、食リケジョには商品企画→研究開発→・・・・といった食品会社での研究開発のバリューチェーン(価値連鎖)の各ステップで多くの活躍の場があるというお話もしていただきました。特に印象的だったのは「美味しさ」を測定するための数理モデル導入のお話でした。人がどのように・どの程度「美味しさ」を感じているのかという、直接測定することができない「認知や感覚」の量を客観的に評価できるようにしたことで、より最適な商品の開発に繋げていくというお話は大変興味深いもので、企業でどのような研究開発が行われ、理系で身につけた知識や思考がどのようにして役立っているのかを実感することができました。多様な経験を積むことで活躍の場をさらに広げてきた笠松様からは、最後に理系進学に関心のある参加者に向けて「イノベーションを生むには、自分の分野とは遠いところにアンテナを張ることが大事です。仕事を離れていた間の私生活の体験も生活者視点での研究開発に活きています。目的と情熱を持ち、価値あるものを世の中に提供することを目指してほしい」というメッセージをいただきました。

研究の最前線で働いているお二方のお話からは、理系進学後に多くの活躍の場があることを感じました。お二方が歩んでこられた理系進学後に広がる多様なキャリアのお話は、理系進学に関心をもっている参加者の皆様にとって理系への進路選択に自信をもって取り組める後押しになったのではないでしょうか。


講演後の質疑応答では、参加者はマイクを通して自分の言葉で講演者に直接質問を投げかけました。研究や海外生活についてなど多くの質問が多く寄せられ、オンラインながら講演者と質問者との間で活発なやりとりが行われました。