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2022年11月20日(日)に「第3回女子中高生のためのVR体験セミナー」を開催いたしました。オンライン開催ということで全国各地の方にご参加いただきました。今回は女子中高生の皆さんに、インターネット上でVR空間を体験してもらいながら、情報科学の最新技術と理系に進学した女子大学生・大学院生の日常を紹介しました。

参加者は事前に送付したマニュアルにしたがってVR専用のSNS「cluster」をインストールし、お茶の水女子大学の講堂「徽音堂」を模したVR空間で自分のアバターを操作して参加しました。実際の講堂での講演のように登壇者は壇上に上がり、壇上の両側のスクリーンに映像やスライド、コメントを映し出しました。参加者はアバターで徽音堂の中や周囲を歩き回り、リアクションをしてVR空間や講演を楽しみました。同時配信をしたYouTubeからの参加者も、VR空間を疑似的に体験することができました。

開会挨拶は加藤美砂子教授(お茶の水女子大学 理系女性育成啓発研究所 所長)が務め、司会は伊藤貴之教授(お茶の水女子大学 基幹研究院 教授、文理融合AI・データサイエンスセンター長)が担当いたしました。

基調講演

講演は、長澤 夏子先生(お茶の水女子大学 生活科学部 人間・環境科学科教授)「私たちが新しい環境を創造する方法」というテーマでお話しいただきました。

長澤先生は、よい建築や都市をつくるために、利用者の使いやすさを評価する研究などをされています。今回は、会場となった徽音堂のVR空間を体験しながら、建築の世界で使われてきたVR技術やその展望についてお話しいただきました。建物を建てるときは、どのような建物を建てるか、空間を構想し、それを他者と共有する必要があります。そのため透視図や立体的な絵画技法など、古来より構想を表現する手法が開発されており、およそ50年前から、コンピューターによる設計のために3D技術が開発されてきたそうです。さらに近年活用され始めたVRでは、アバターを操作して視点を移動することにより、空間環境を理解することができます。

VR技術は、設計プロセスでインテリアのシミュレーションや、建設技術や現場研修にも利用されているそうです。大学では、実際に見学した建物を3Dモデリングし、風の流れなどを可視化して建築の改善案を考える講義をおこなっているそうです。さらに大学の研究の場では、VR空間内を車いすで避難する体験をしてもらい、建物を評価する研究や、高所体験での人間の生体反応を見る研究に使われているそうです。VRは立体視知覚を拡張し、時間と空間を超えて体験をすることができる技術です。VR活用が進むにつれ、私たちもVR技術を使いこなすための空間体験の学習が必要になるかもしれないとのことでした。

理系進学に関する現役学生との座談会

お茶の水女子大学大学院 理学専攻情報科学コースの現役大学院生3人と理系進学に関する座談会を行いました。参加者はclusterやYouTubeのコメント欄から質問を投稿して交流をしました。座談会の一部を紹介します。

 

  • 理系進学を志した動機は何ですか?

―理系に強いこだわりがあったわけではありませんが、数学が嫌いではなく、文系科目にあまり関心がありませんでした。周りの人も理系に進むことに抵抗が無かったので、進学しやすい環境でした。

―得意科目が数学と物理と国語だったが、理系科目を活かしたいと思っていました。何となく将来を考えたときに、理系っぽい職業に憧れがありました。

―高校生のときに数学が好きでした。数学が好きな主人公の漫画が好きで、何か一つの分野のプロになるということに憧れがありました。

 

  • 大学で理系に進学してみて印象的だったことは何ですか?

―計算よりも、自分で課題を見つけたり解決したりする思考力を鍛える機会が多いと感じました。

―数学の授業が多く、文章を書く機会が少なかったことです。理系学部に進学をしても文系科目や語学など、自分の興味のある分野を勉強することもできることが印象的でした。

―大学で習う数学と高校で習う数学では全く違っていることに驚きました。どうしてその式が計算に使えるのか、という証明をすることがメインでした。

 

  • 就職活動はどのように始めて、何を重視して会社を選びましたか?

―まずは研究室の先輩から誘いを受けて3か月ほどインターンシップに参加しました。自分がやりたいと思える仕事か、一緒に働く人の雰囲気が自分に合うかどうかを重視しました。

―修士1年の春くらいから長期インターンに参加しました。インターンシップでは社員さんと一日中一緒にいるので、実際の雰囲気が分かり、ここで働きたいと思うようになりました。

―さまざまな進路に進んだ研究室の先輩の話を聞きました。インターンシップで一緒に働いた社員さんの学ぶ意欲の高さを見て、ここなら自分も成長できると感じました。

 

  • 最後に、理系進学へ関心をもつ女子中高生へメッセージを

―私は、文系・理系とあまりこだわらずにやりたいことをやってきました。建築分野は、文系も理系も色々な人と関わることができます。大学では、文系分野でも理系分野でも、自分の好きなことを思う存分学んでください。(長澤先生)

―やりたいことがはっきりしていなくても、小さなきっかけからでも、自分の進む道を決めてみて、そこから目標を達成できるように、できることから少しずつ努力していくと良いと思います。

―進路は、自分で決めることを大事にしてほしいです。選択した瞬間は、何が正解で間違っているとかはないと思いますが、自分で決めたことなら、その先も頑張れると思います。

―大学では、様々な分野を深く学んでいる人が周りにたくさんいるので、とても楽しいです。自分がやりたいと思うことを信じて進んでください。