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2022年12月18日(日)にオンラインにて「第2回女子中高生のためのDXセミナー」を開催いたしました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況を踏まえ、今回も引き続きオンラインでの開催となり、全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。

今回は女子中高生の皆さんに、新たなデジタル技術で変化していくこれからの未来について考えていただくため、DX(デジタルトランスフォーメーション)についてご講演いただきました。モデレーターは、加藤美砂子教授(お茶の水女子大学 理系女性育成啓発研究所 所長)が担当いたしました。


講演は、安間裕様(アバナード株式会社 会長)DXの未来は、理系女子が作る」というテーマでお話しいただきました。
はじめに、ITイノベーションは利益を生み、社会を豊かにするというお話をしていただきました。日本の企業の利益率は、先進諸国と比較すると低いそうですが、IT投資の多い産業分野では利益率が高くなっているそうです。
次に、最近よく耳にするDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何なのか、世の中にはどのようなDXの事例があるのかご紹介いただきました。DXとは、企業がIT技術を利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させるものです。DXの事例として、ボルボカーズのFEST―データ収集や分析ツールを活用し、CO2排出量削減などのサステナビリティ目標を達成するというプロジェクトや、仏ミシュラン社の「マイレージ・プログラム」—トラックタイヤを無料で貸与し、タイヤに付けたセンサーで計測した回転数に応じて料金が加算されるシステムなどがあるそうです。「マイレージ・プログラム」はタイヤの所有権をミシュラン社が持っているため、使い古したタイヤを再利用して提供することでSDGsにも貢献することができるそうです。
その他にも鉱業や農業など、様々な業界でDXによってすでに新しい商品やサービスが多く生み出されていることに驚き、未来への想像に胸が膨らみました。

続いて日本が抱えている社会課題の解決に何が必要か?という観点からお話しいただきました。
現在、日本では少子高齢化が進行し、労働力が減少して国内市場が縮小しています。この状況の中で、今後も経済を維持・拡大していくためには、グローバル化と女性の活躍推進がキーであるとのことでした。日本では女性の出産後の就業継続率は諸外国と比較して低いそうです。女性が継続して活躍できる環境を整えていくことが、持続的な日本を作っていくために重要だとのことでした。
新型コロナウイルス感染症の影響により、日本でもリモートワークが急激に拡大し、働き方が大きく変化しました。アバナード株式会社でも8割がリモートワークを継続しているそうです。出勤することなく、日本全国どこでも働くことができるようになり、より柔軟な働き方ができるようになってきています。リモートワークの活用が、女性が継続して働き続ける環境をつくることにも繋がるのではないかとのことでした。
また、アバナード株式会社の関わった開発として「Cancer board」—時間や場所の制限なく世界中の医師がディスカッションに参加し、患者に合わせた効果的ながん治療を可能にするシステムをご紹介いただきました。デジタル化は柔軟な働き方を実現し、さらに人の命を救うようなシステムを作り出す、大きな力を持っていることを実感しました。

最後に理系進学に関心をもつ女子中高生の参加者の皆さんに向けて、『ITイノベーションによって、これまでは社会構造の中で十分に力を発揮することができなかった女性の活躍が進んでいくと思います。挑戦する心を忘れずに、いろいろなことに取り組んでみてください』という温かなメッセージをいただきました。


講演後の総合討論では、マイクを通して参加者から直接質問が投げかけられ、オンラインではありましたが参加者と安間さま、モデレーターとの積極的なやり取りが行われました。討論の一部をご紹介します。

  • デジタルが必要とされる時代はどのくらい続くと思いますか?
    ―コンピューターの登場によって、世界が変わったと初めて言われたのは、1960年代です。そこから現在まで、少なくとも60年くらいはコンピューターによって革新が起こる時代が続いています。非デジタルを求める新しい価値観が台頭してくれば別ですが、今後少なくとも私たちが死ぬまでの間はデジタルによって新しい技術や仕組みが生まれ、それに関する職業は必要とされると思います。
  • IT投資が重要であることはよくわかりましたが、デジタルエキスパートになるためには、理系に行くしかないのでしょうか?(保護者)
    ―ビジネスに最も必要なのはアイデアです。チームで仕事をする以上、相手をリスペクトしてしっかりと意見を聞き、論理的に自分の意見を届ける力がアイデアを大きくするために必要です。理系でも文系でもそういった力は育めると思いますが、とくに研究開発に必要な研究マインドは理系の方が身につけやすいかもしれません。
  • 悪意のない無意識の偏見をなくすにはどうしたら良いでしょうか。もし無意識の偏見をもっている人がいたら、どう接したら良いでしょうか。
    ―まずは普段から、自分もそういった偏見をもってないか、一人ひとりが考えていくことが大切だと思います。そして人間関係のあることなので、必ずしも相手を指摘しなくとも良いです。他人の思想を変えるのは難しいので、回り道でも相手の行動を変えられるように働きかけることができないかなど、少しずつでも自分にできることを考えてみても良いと思います。

 

安間様の力強いメッセージに溢れたご講演と活発な総合討論により、DXとはどういったものか具体的に知ることができ、理系進学に関心を寄せる女子中高生の皆様にとって、デジタル化によって実現できるかもしれない未来を考えるきっかけになったのではないでしょうか。