0

2024年5月19日(日)に「第4回女子中高生のためのイノベーションセミナー 持続可能な将来のために私たちができること−化学からイノベーションを−」を開催いたしました。今回も、前回と同じく対面とオンラインでのハイブリット開催で、現地開催ならではの臨場感がありながらも、全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。総合司会は植村知博先生(お茶の水女子大学理学部生物学科教授)が担当いたしました。

講演の部

川勝麻美様(BASF Japan株式会社化学品中間体事業部事業部長)にご講演をいただきました。川勝様は世界最大の総合化学メーカーBASFの日本支社であるBASF Japan株式会社に勤務されています。子育てとお仕事を両立し、化学品中間体事業部の事業部長として活躍されていらっしゃいます。

川勝様は宮崎県都城ののどかな環境で幼少期を過ごされました。アメリカ留学経験のあったお母様の影響や、皇后雅子さまへの憧れから、小学生時代から英語に関心を持っていらっしゃったそうです。小学5年生から英語の塾、中学生になると英会話に通うようになりました。スキルを磨いてスピーチコンテストにも挑戦したそうです。中学校では生徒会活動に取り組みました。元々内向的な性格だったため、初めは嫌々生徒会の活動を行っていましたが、先輩との関わりの中で考え方が変化したといいます。人前で話すことに向いていると感じるようになり、中学3年生では生徒会長に立候補しました。気の進まないことでも決めつけずにやってみると、新たな発見があることを実感した出来事でした。

読書を通して科学に関心を持っていたため、高校は理数科に進まれました。しかし物理の授業が全く理解できずに試験の結果は惨憺たるものでした。友人に教えてもらって克服し、次のテストでは満点をとることができました。1人で解決できなくても諦めず友人の助けを借りた経験は、現在でもチームで仕事をする際に役に立っているそうです。高校2年生の夏にアメリカ・ミネソタに転居。都城とは異なり雪国で、高校も全く日本人のいない環境でした。アメリカの高校ではスクールカウンセラーと話し合って関心や希望する進路に合った授業を選ぶことができ、非常に新鮮に感じたそうです。印象的だった授業は「ジョブ・シャドイング」。様々な職業の方に半日ついて職業の実際を学ぶというプログラムで、川勝様は健康に関わる職業の方について学ばれました。都城で接することのなかった様々な職業について知る機会を得られたといいます。

大学は州内のミネソタ大学に進学。大学生活は非常に忙しく、キャンパス間を移動するシャトルバスの中で昼食のグラノーラバーを食べるのが日課だったそうです。アメリカの大学は卒業することが難しく、言語の壁もある中での大学生活は重圧感を感じるものでした。大学時代は、日本人の准教授が主宰するショウジョウバエの研究室でアルバイトをされていました。多国籍なメンバーを束ねる准教授から大きな学びを得られる経験だった一方、研究するより外に出て人と話したいと感じるようになったそうです。大学卒業後BASF Japan株式会社に入社され、これまでに3つの部署を経験されました。広報や営業、チームリーダーなどのお仕事を担当され、現在は事業部長として活躍されています。

現在BASFではサステナビリティのため、サーキュラーエコノミー(資源循環型経済)の実現に向けて取り組みを進めているそうです。サーキュラーエコノミーを実現する方法として、資源の再利用を基本とした循環モデルである「CCycle」によって、廃棄物削減や化石資源の節約、CO₂排出量削減を目指しています。CCycleの実現のためには、素材に適した循環型モデルを確立し、多様な循環ループで化学品を再利用していくことが必要です。川勝様が事業部長を務める化学品中間体事業部では、その中でもケミカルリサイクルに関わる研究・開発に取り組んでいます。ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックを樹脂から樹脂へとリサイクルするマテリアルリサイクルに対して、樹脂の重合を解いてモノマーへと戻してから新たな製品へと作り変えるリサイクルのことです。現在までに、衣類を再度衣類に再生したり、使用済みタイヤからドアハンドルの原料を得たりする開発が実用化に至りました。

ご講演の結びに川勝様ご自身の経験から、「好きなことを追求していくと武器になる!」「興味が無くても試してみたら新たな発見がある!」「自分の力だけで解決できなくても大丈夫。助けを求められることが大事!」「何か違うと思ったらやめる勇気も大切。学びをバネに次へ進もう!」という4つのエールを参加者の中高生の皆さんに送られました。

 

質疑応答

ご講演の後、質疑応答の時間を設けました。今回も対面会場・オンライン双方の参加者から寄せられた質問の一部をご紹介いたします。

Q:チームのリーダーを務める中で大変だったことはありますか?(中学2年生)

A:自分の持つリーダーのイメージとの戦いです。尊敬するリーダーに出会う中で理想のリーダー像ができていったのですが、自分自身にそのリーダー像に合うとは限らないと気が付くまでに時間がかかりました。

Q:BASFでのやりがいは何ですか?(中学1年生)

A:化学品は正しく使うことが必要で、作ることに責任が伴います。BASFがサステナビリティに30年近く取り組んでいるのは、将来に対しても責任を持って事業を行うためです。商品や技術のためにたくさんの開発・研究が必要なので、お客様に紹介できる時にはやりがいを感じますね。