2025年8月3日(日)に「陸の植物観察会」を開催しました。
講師は岩崎貴也先生(お茶の水女子大学理学部生物学科講師)が担当し、アシスタントはお茶の水女子大学の大学院生2人と学部生3人が務めました。
私たちの身の回りには多くの植物が存在し、生活や食事、癒しなどさまざまな面で深く関わっています。今回は、植物に興味を持ち、植物をより深く知ってもらうことを目的とした観察会を実施しました。視覚や嗅覚を使って植物の観察・識別したり、構内で採集した植物の種を図鑑で調べたりする体験を通して、植物への理解を深めました。さらに、大学で実際に用いられている実験器具を使い、野外で採集した植物からDNAを抽出する実験にも挑戦しました。
植物の種類を見分けてみよう
最初に岩崎先生から植物の種を見分けるポイントや注目すべき特徴を学びました。一見同じに見えるような葉でも、様々な特徴(単葉・複葉、分裂葉・不分裂葉、常緑・落葉、鋸歯の有無など)に着目することによって見分けることができます。とりわけ単葉と複葉の見分け方に関しては、実際に葉を手に取りどこからどこまでが1枚の葉であるかを観察しました。


植物の「匂いソムリエ」を目指そう
植物がつくり出す「二次代謝産物」の構造やはたらきを学びながら、実際に構内の植物を使って「匂いソムリエ」を目指しました。二次代謝産物の機能や構造を学び、実際に構内にある植物を用いて匂いソムリエを目指しました。植物がつくる二次代謝産物は、動けない植物がその場で生き延びるために欠かせないもので、植物の「quality of life」を高める役割を果たしています。これらの多くは、独特な匂い成分を持っているのが特徴です。
今回は、構内にある植物(レモン、サンショウ、クロモジ、ゲッケイジュ、クスノキ)と、それらを原料としたエッセンシャルオイルや防虫剤などの製品の匂いを比較し、照合するクイズに挑戦しました。それぞれの植物が属する科に注目しながら、植物の種を特定することができました。
植物を観察して種を特定しよう
次に、大学構内を歩きながら気になった植物を採集し、図鑑を使って種の特定を行いました。最初に学んだ「植物の種を見分けるポイント」を意識し、花や葉の形に注目しながら種を特定することができました。


葉からDNAを抽出してみよう
最後に、実際に自分たちが採集した植物からDNAを取り出す実験を行いました。植物細胞にはさまざまな物質が含まれておりDNAは厳重に守られているため、その中からDNAを取り出すにはいくつかの工夫が必要です。分子生物学の実験では、単に作業工程をこなすのではなく、各ステップでどのような反応が起きているのかを想像しながら進めることが大切です。参加者たちは、チューブの中で何が起こっているかを意識しながら協力して実験に取り組みました。
DNAを取り出すために、まずは植物組織をばらばらにして細胞を取り出しました。葉をチューブに入れ、液体窒素によって凍結させた後、組織破砕機を使って粉状にしました。次に細胞膜などを壊し、膜の内部にあるDNAを溶液中に出す処理を行いました。その後、DNA以外の不純物(主にタンパク質)を取り除き、DNAを含む沈殿を水に溶かしました。最後にDNAが存在すること確認するため、DNAの存在に反応して蛍光を発する試薬を用いて観察を行いました、多くの参加者がDNAの抽出に成功し、達成感に満ちた声があがっていました。
また、実験の前には「マイクロピペット」と呼ばれる、微量の液体を正確に測り取る道具の使い方を学びました。ほとんどの参加者によって初めて触れる道具でしたが、実験を通して少しずつ慣れ、上手に扱えるようになっていきました。他にも、大学で実際に使用されているさまざまな実験器具を体験でき、普段ではなかなかできない貴重な経験となったようです。


今回の陸の植物観察会では、植物を見分けるポイントを学ぶだけでなく、植物の匂いに着目して種を特定する体験も行いました。また、DNAの抽出実験を通して、大学で行われている本格的な理科実験に保護者も一緒に挑戦することができました。こうした体験を通じて、身の回りの植物への見方や関心がこれまでとは少し変わったのではないでしょうか。