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2025年8月24日(日)に「第1回情報理工学入門セミナー〜AIで自分の歌を作ってみよう〜」を開催しました。稲見昌彦先生(お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系/東京大学先端科学技術研究センター 教授)が講師を担当し、多くの中学生・高校生と保護者の方にご参加いただきました。

稲見先生は、AIを利用して人間の能力を拡張する「自在化」の研究に取り組まれています。前半の講演では「『できる』を『つくる』」をテーマに、「自在化」の研究についてお話を伺いました。

稲見先生の研究の原点は、幼少期の「空を飛びたい」という夢にあります。中学生の時、ロサンゼルスオリンピック開会式に登場したロケットマンを見て、「技術を身につけることができれば生身の人間ではできないことができるのではないか」と考えたことが、研究の道に進まれるきっかけとなりました。

現在は東京大学の身体情報学研究室で身体の能力を拡張する技術を研究されています。研究室のスローガンである「自在化」という言葉は、稲見先生ご自身が作った言葉です。自分自身でやりたいことや表現することをAIに任せるのではなく、二人三脚で自分の能力を拡張していくことへの願いが込められています。

稲見先生は「JST ERATO 稲見自在化身体プロジェクト」を通し、多様な自己表現・社会活動をテクノロジーによって実現するための研究に取り組まれています。その代表例が「自在肢」です。ダンサーに自在肢をつけてもらうことで、新たな表現が誕生する可能性が生まれたそうです。また、東大レゴ部の協力のもと、「第6の指」を制作。腕の筋肉の電気信号によって操作できる6本目の指を装着することで、脳に変化が現れるといいます。人と機械はどのように協力できるか探っています。

また、身体能力を向上させるためのツールの開発もされています。テクノロジーによって、能力の向上に必要な失敗と成功の体験を提供したり、言葉では伝えにくいことの伝達をサポートしたりすることができるといいます。できなかったことができるようになる嬉しさは人間にとって大きな価値のあるものです。このように人間の「できる」を増やすこと、つまり自分の成長のために機械を使うという考え方は、今後AIを利用して価値を生み出していく上でも大きなヒントとなるでしょう。

 

後半の「自分の歌を『つくる』AIワークショップ」では、ChatGPTと音楽AIアプリの2つのAIを使って、参加者それぞれ楽曲を作成しました。予想以上に簡単に楽曲が作成でき、新鮮な体験となりました。AIを自己表現のツールとして利用することで可能性が広がることを実感することができました。

 

既存のものを学習するAIに対し、私たち人間はオリジナリティ、源流性に強みがあると稲見先生は話されます。AI時代において価値を生むのは、人が学びたい・AIに学ばせたいと思うような源流となるものを作ることだといいます。AIを恐れるのではなく、自らの創造性をサポートするツールとして二人三脚で価値を生み出していくことが求められていくそうです。講演の最後に「AIが賢くなっても、勉強を通して自分が成長する喜びは自分だけのものです。ぜひAIに学習される側を目指して頑張ってほしいですね」と参加者にエールを送られました。