2025年11月16日(日) に 「第6回中高生のためのVR体験セミナー」 を開催いたしました。オンライン開催ということで全国各地の中高生の方にご参加いただきました。前回の開催と同様、中高生の皆さんにVR空間を体験していただきながら、情報科学の最新技術、理系に進学した女子大学生の日常を紹介しました。
参加者は事前に送付したマニュアルにしたがってVR専用のSNS 「cluster」をインストールし、お茶の水女子大学の講堂「徽音堂」を模したVR空間で自分のアバターを操作して参加しました。実際に講堂での講演のように登壇者は壇上に上がり、壇上の両側のスクリーンに映像やスライド、コメントを映し出しました。参加者はアバターで徽音堂の中や周囲を歩き回り、リアクションをしてVR空間や講演を楽しみました。セミナーの最後には、参加者全員で徽音堂から屋外に出て、実際のお茶の水女子大学の雰囲気をより身近に感じていただきました。
開会挨拶は加藤美砂子教授(お茶の水女子大学 理系女性育成啓発研究所 所長)が務め、司会は伊藤貴之教授 (お茶の水女子大学 基幹研究院 教授、文理融合AI・データサイエンスセンター長)が担当いたしました。
基調講演
講演は、萩田真理子先生(お茶の水女子大学 理学部 数学科教授)にお話しいただきました。萩田先生は組合せ論や暗号理論を専門に研究をされています。今回は印象評価への組合せ論の応用というテーマでご講演いただきました。
印象評価や推薦システムなどの分野では、対象同士をペアで比較したデータから順位を決める場面が多くあります。しかし、すべてのペアを比較できるとは限らず、観測データが偏ることもあります。そのような状況でも安定した推定を行うことが重要であり、先生の研究では比較構造そのものに着目するアプローチが取られています。不完全なデータや矛盾を含む評価結果に対しても、どのように堅牢に順位推定を行うかが重要であり、そのための仕組みづくりが必要であることが示されました。これらの手法は印象評価だけでなく、社会的・文化的データの解析にも応用が期待され、幅広い分野の基盤技術となり得ることがわかりました。
講演を通して、離散数学の枠組みを用いることで、曖昧な評価データからでも合理的で説明可能な順位を導くことができるという点を学びました。数学的な理論と実社会の課題を結びつける研究として大きな可能性を感じるとともに、印象評価の新しい基盤を築く取り組みの重要性を実感することができました。
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理系進学に関する現役学生との座談会
お茶の水女子大学大学院理学専攻数学コースの学生2人と理系進学に関する座談会を行いました.参加者はclusterのコメント欄から質問を投稿して交流をしました.座談会の一部を紹介します.
- 理系進学を志した動機は何ですか?
―算数から数学に変わるタイミングで、考えることそのものが楽しいと感じるようになりました。数学についての本を読むうちに、大学では数学を学びたいと思うようになりました。
―高校で理系科目が得意だったので、大学で理系科目を学ぶことに興味を持つようになりました。 - 高校時代の理系の勉強で大変だった点は何かありましたか?
―理系そのものの内容というよりは、周りに理系志望の友達が少なかったため、勉強のペースや方向性がこれで合っているのか不安になることもありました。
塾に通っていなかったので自分で勉強方法を考えるのは大変でしたが、その分自分なりに工夫する力がついたと思います。 - 進学先に数学科を選んだ動機はなんですか?
―理学部に進んだ理由と重なりますが、面白いと思う自然科学の話題がすべて数学に関わっていることに気づいたからです。
いろいろな分野の基盤となる数学をじっくり学んでみたいと思いました。
―高校の頃一番得意な科目が数学で、証明問題が好きだったので数学科に進学しました。
- 大学で理系に進学してみて印象的だったことは何ですか?
―いい意味で、想像していた通りでした。みんな真面目で落ち着いていて、先生方もとても優しいです。
難しい内容も多いですが、落ち着いた環境で集中して学べるのは理系の魅力だと思います。
―学部1年から3年の数学の授業が難しく、大変だった記憶があります。4年生から研究室に配属され、興味のあるテーマを見つけることができ、研究が楽しくなりました。 - 理系に進学してみて周囲の女子の友達の印象はどのような感じですか?
―みんな自分のペースを大切にしていて、落ち着いた雰囲気の人が多いです。
勉強にも生活にも誠実に向き合っている人が多くて、刺激を受けることも多いです。オンオフの切り替えがしっかりできている人が多いという印象です。
―文理であまり変わらないと思います。勉強熱心な人が多いですが、サークル活動やアルバイトを楽しんでいる人も多いです。 - 大学院進学の理由
―大学に入った時から大学院まで進むつもりでした。
学部で学ぶ内容を踏まえて、自分なりのテーマを持って研究をしたいと思ったからです。
3年生のときに就職活動も少ししてみましたが、研究にもう少し深く取り組んでからでも就職はできると感じ、大学院に進学しました。
―研究の内容を深めたかったから、就職を遅らせたかったというのが主な理由です。進学して良かったと思うことは、大学院在学中に留学したり、企業のインターンシップに参加したりと、学部を卒業してすぐに就活するよりも自分のやってみたいことに挑戦するチャンスが増えたことだと思います。 - 本日参加された中高生の皆さんへメッセージを
―お茶大は本当に温かい雰囲気の学校で、のびのびと自分のペースで過ごせます。サークルでもアルバイトでも、人に恵まれているなと感じます。
受験勉強はもちろん大変だと思いますが、高校まではクラスで過ごす時間も多く、友達と過ごす時間がいちばん楽しい時期です。勉強も大切ですが、今の学校生活もぜひ大切にしてほしいです。
大学では自分のペースでじっくり好きなことに取り組めるようになります。いろいろなことに興味を持って、自分に合うものを見つけてください。
―私はやりたいことが明確にないまま、大学の数学科に入学しました。大学に入って勉強するうちに、情報やIT系に興味を持つようになりました。暗号理論の研究室に入ったり、IT企業のインターンに参加したことで、卒業後はサイバーセキュリティエンジニアとして働くことになりました。高校の間も、大学に入ってからもやりたいことが変化することは当然なので、あまり考えすぎず色々なことに挑戦してみてください。
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