グローバル教育センター留学派遣

オックスフォード大学 クイーンズコレッジ
博士前期課程比較社会文化学専攻

オックスフォード大学 クイーンズコレッジの情報を見る

体験記


オックスフォード大学での生活は、多くの独特でおもしろい伝統に彩られています。慣れてしまうと段々と不思議に思わなくなりますが、最初はまるで小説『ハリー・ポッター』の世界みたい、とよく思ったものです。
蝶ネクタイと黒いガウンで臨む入学式に始まり、石造りのクラシカルな建物の中で受ける授業。チューターの部屋の前で、夕刻を告げる時計の鐘を聞きながら、自分の番が回ってくるのを待っていたこと。キャンドルが灯されたディナーの始まりに、読み上げられるラテン語の祈祷文。三時過ぎには暗くなり始めるイギリスの冬の午後、そっと歩く靴の音さえ響くような石造りの図書館で、破れそうに古い本のページを一枚一枚慎重に繰っていたこと。「毎年楽しみにしていたけれど、今年で卒業だから、ここのクリスマス・キャロルを聞けるのも最後なんだ」と寂しそうにしていた女の子と一緒に聞いた、静謐な聖歌隊の歌声。長く暗い冬が終わってクロッカスやライラックが咲き乱れる頃、オックスフォード名物の平底舟に乗り、友人が川に落ちて大騒ぎだったこと。イースターの後からほとんど図書館と部屋にこもりきりで試験勉強に取り組んだ友人の胸にGood luckの想いを込めた赤いカーネーションを挿してあげたこと。テムズ河のほとりで、熱い戦いを繰り広げるカレッジ対抗のボートレースをPIMM’Sというカクテルを片手に見守っていたこと。

イギリスに来て私が驚いたり不思議に感じた様々なことについて話していたら、「それはオックスフォードとケンブリッジだけだよ。イギリス全土で一般的な文化じゃない」と微笑まれたことがあるくらい特殊な環境ともいえるオックスフォード。学問的なこと、精神面での成長、様々な人との出会いなど、留学してよかったことは数多くあるけれど、一番はやはり、この特殊なオックスフォードの伝統を満喫できたことだと思います。一年が終わって日本に帰るのが寂しくて感傷的になっていた時、ある先生が声をかけてくれました。「大丈夫、帰ってきたければいつでも戻って来られるわよ。オックスフォードはずっと変わらずにここにある。だって、ここ何百年間だって変わらずにここにあったのだから」まさにその通り。学生の顔ぶれは毎年移り変わっても、彼らの学び舎とそこに脈々と流れるオックフォード精神はいつも変わらずそこにあるのです。

大学や授業のシステム、渡航までの手続きなどはQ&Aに詳しく書いたので、ここでは留学生活の一部を、写真で紹介していきたいと思います。上の写真は、カレッジの廊下で入学式の記念写真撮影の順番を待っているところ。オックスフォードには制服があって、公式な場面ではこのようにブラウスにリボンタイを結んで、黒いガウンを着ます。男性はシャツに白いタイ。ここまでフル装備になるのは入学式とテスト、卒業式くらいですが、ガウンだけは夜のディナーでも頻繁に着用します。

クイーンズ・カレッジでのディナーの様子。キャンドルが灯されて、料理がコースで運ばれてきます。ディナーの格によってドレスコードは異なりますが、イヴニングドレスとタキシードを着用することもあります。ほとんどのカレッジが立派なダイニングホールを持っているので、別のカレッジの友人をディナーに招いたり、逆に招かれたりして、ホールを見比べて回るのも楽しみのひとつ。

夜のクイーンズ・カレッジ。まさに『ハリー・ポッター』の世界。ちなみに、『不思議の国のアリス』の著者が教鞭を取っていたことで有名なクライスト・チャーチ・カレッジのダイニングホールは実際に『ハリー・ポッター』の映画に使われたとかで、観光客が絶えません。

オックスブリッジ(オックスフォードとケンブリッジを合わせてこう呼ぶ)名物のパンティング(punting)と呼ばれる平底舟遊び。長い棒で川底を突いて進みます。オックスフォードの永遠のライバル、ケンブリッジとは漕ぎ方が違うとか。慣れないとうまく進めず、棒が川底にささったまま抜けなくなったり、隣の舟と衝突したりして、きゃあきゃあと楽しい騒ぎになります。

私が住んでいた寮の外観。大きいけれど元は普通の家のようで、部屋によって作りが違います。階段の踊り場にある本棚には何故か日本語の本がたくさん置いてあって、歴代の日本人居住者(おそらくお茶大からの先輩も含む)が残していったものではないかと推測。日本語の本に飢えていたときによくお世話になりました。実は私も何冊か残してきました…。

寮のキッチン。ご飯を作っている人もいれば、新聞を読んでいる人もいて、おしゃべりしている人もいる。必ずと言っていいほど誰かしらいるので、帰ると「ただいま(英語にこの言葉はないけれど)」という気分で、必ず顔を見せに行っていました。ここでパーティーをやったり、飲み会をやったりもよくしましたし、皆の団欒の場です。

Q & A:留学準備

Q留学に先立ち、どの位の期間、どのように語学の勉強をしましたか。結果的にどの程度習得できましたか(もしあれば、取得した級など)
A

実際にTOEFLを受験しだしたのは学部4年生の初夏頃だったと思います。当時はTOEFLの形式がCBTからiBTへの移行期で、新試験への対応がうまくできなかったのと、卒論の執筆に追われて試験勉強がはかどらなかったこともあって、大学規定のスコアを満たすことが出来ず、その年度の交換留学は残念ながら落選してしまいました。これは勉強法を改善して勉強量も増やさなくてはいけないと一念発起して、修士1年の春から夏にかけて渋谷にあるTOEFL予備校でiBT対策コースを受講し、段々コツもつかめてきたのか9月に85点を取得。しかし同時に、TOEFLスコアアップの難しさからIELTS受験に方針転換して、受験直後に6.5点を取得。規定スコアを満たすことができなした。それぞれ好みや向き不向きがあると思いますが、個人的にはIELTSの方がとっつきやすいように感じました。留学先がIELTSも受け付けて下さる方は、TOEFLと両方受けてみるといいかもしれません。私はリスニングとスピーキングが苦手だったので、リスニングはNHKのラジオ講義を毎日聞いて耳慣れをはかり、スピーキングはヴァッサー大学からの語学留学生との共同授業に出席したり、アメリカから短期でいらっしゃった講師の先生のランゲージエクスチェンジパートナーを勤めるなどして、積極的に話す機会を持つように努めました。

Q交換留学の情報をどのように入手しましたか。それは十分なものでしたか。
A

入学時から交換留学に興味があったので、毎年秋頃に行なわれる説明会に出て、学校間協定の情報資料等を入手していました。学部一年生の頃はあまり情報もなくて、ただ協定校の一覧と応募要項くらいしか資料にも載っていなかったような気がしますが、ここ数年は行った方の報告書を頂けたり、体験談を聞ける場があったり、申し込みに向けての準備や考えるべきことをレクチャーして下さったり、ずいぶん説明会の内容やバックアップが充実してきた印象があります。また、国際交流室に質問に行ったときは、わかる範囲で丁寧に答えて下さったのが好印象でした。

Q準備期間にたいへんだったこと、不安に感じたことは何でしたか。
A

グローバル教育センターに相談に行けばよかったのでしょうが、派遣学生決定後のオックスフォード留学窓口がセンターとは別だったこともあって、そのことが全く念頭になく…一人で事務手続きや、留学準備に右往左往していました。留学経験者や留学仲間が近しい友人の中におらず、前年度にオックスフォードに行った人もいなかったので、書類をどう書けばいいのか、留学前に何をしなくてはいけないのか、それをどう解決していくのか、全くの手探り状態で半分パニックになっていたのを覚えています。オックスフォード大学から指定された提出書類(応募動機書、エッセイ、英語の推薦書、学費の支払い能力証明書など)をどのようなフォーマットで書くべきかがわからず、英語にも自信がなかったので出来上がるまでに相当な時間がかかってしまい、窓口になって下さった先生をはらはらさせてしまったことも…。ビザ申請や渡航前手続き、引越し準備など考えるべきこともやるべきこともいっぱいで。何か抜けていることがあるのではないか、何かトラブルがあったら、と初めての留学なので相当ナーバスになりました。しかし今思えば、この面倒な留学準備をこなしたことで、かなり行動力がついた気がします。それと、「これはどうすれば?あれはどうする?この場合は?」と不安にかられて投げかけた膨大な質問に、メール等で一つずつ丁寧な答えを返して下さった留学経験者の先輩方にとても感謝しています。先輩方のおかげで、ずいぶんと不安が軽減されました。

Qどのようなビザを取得しましたか。また、取得のためにどのような手続きをしましたか。
A

学生ビザを取得しました。申請用紙、申請料金、パスポート、必要提出書類(入学許可書、資金証明書、私の場合は親の銀行口座を資金の証明に使用したので、親が資金のスポンサーであるというサポートレターも作った)など。ほとんどが英語記入。パスポートや提出書類はそれぞれ、原本の他にコピーも必要だった気がします。必要な書類は多いし、すぐにビザが出ないことも多いので早めの手続きが必要だし、おまけに申請受付の職員の対応は慇懃無礼で不愉快だったし…と、留学前の手続きの中では最も面倒くさい&大変な手続きのひとつだったという印象があります。行くことが決まったら、早めに英国大使館のホームページなどで詳細を調べて、手続きを済ませることをおすすめします。

Qその他渡航に関してどのような手続き。手配をしましたか
A

出発の数ヶ月くらい前に一年オープンの航空券を購入。同時期くらいに、イギリス留学保険という一年間対応の保険にも加入しました。学校や国から予防接種証明は要求されませんでしたが、海外渡航者向けの予防接種に詳しい病院で相談して、肝炎や破傷風、狂犬病などの予防接種も念のため受けておきました。それと、現地での現金調達法を考えて、クレジットカードを作ったり、銀行の国際キャッシュカードに申し込んだり。ちなみに、現地でのメインの現金調達法は、銀行口座を開設して日本から一括送金してもらうという方法を取りました。学費の支払いや家賃の引き落としにも現地の銀行口座が必要だったので。他の学生の評判を聞いたり、実際に銀行で話を聞いたりした結果、日本にも支店があって送金方法が簡単という理由で、私はLloyds TSBという銀行を利用しました。出発間際の準備としては、必要な荷物だけを手持ちで、冬服や本はヤマトの留学宅急便というサービスを利用して二箱ほど送りました。また、日本にいる実家と連絡を取る手段として、スカイプのアカウントを自分用と実家用と二つ作りました。普通の利用方法だけだとパソコンを立ち上げておかなくては繋がらないので、緊急時の連絡にも使えるようにと、スカイプクレジットという有料サービスを使ってパソコンから家の電話に転送できるようにしたり、スカイプから日本やイギリスの固定電話にも電話できるようなサービスをつけたりとオプションも入れました。私は日本の携帯電話を持っていかなかったのですが、人によっては日本との緊急連絡手段用に国際ローミングサービス搭載の携帯電話を持って行ったりしたみたいです。

Q & A:生活について

Q住居はどのような形態(寮・アパートなど)でしたか。また、どのように住居を確保しましたか。住み心地はいかがでしたか。
A

カレッジが用意してくれました。クイーンズカレッジの大学院生向けの寮は二種類あって、一つは約90人が住むSt. Aldates House、もう一つは普通の一軒家のような外観で13人の少人数でシェアするOxley Wrightです。私が住んでいたのは後者で、フレンドリーで親切なハウスメイトたちに恵まれ、まるで家族のようにアットホームな生活がおくれました。うちの場合、寝室は一人に一つの割り当てで、トイレ・バスは共用。(St. Aldatesの方は自室に付属していたようです)ユニットバスもあったので、私はお湯をためて風呂につかったりしていました。キッチンも共用。大きいキッチンで、食器やら調理器具やら豊富にあったので、お茶碗くらいしか自分で買い足す必要がなくて助かりました。他の寮に住んでいる友人たちの中には、一年しかいないのに炊飯器やらトースターやら買わなくてはいけない人もいて、大変そうだったので。

Q住居費は1ヶ月どのくらいかかりましたか。
A

400ポンドちょっとでした。光熱費やインターネット通信費など全て込みです。

Q生活費は1ヶ月どのくらいかかりましたか。現地の物価は東京に比べてどうでしたか。
A

細かく家計簿をつけないどんぶり勘定タイプなので(す、すみません)正確な金額を覚えていないのですが、東京で生活しているのとほぼ変わらないぐらいでした。むしろ、行った時(1ポンド≒200円)はイギリスの方が高いと感じたくらい。東京から来たというと「物価が一番高い街だ!じゃあ、ここは安く感じるでしょ?」とよく言われたので「東京の方が安い!」と憤慨していたような。特にバス代や食費が高かったかな。安いと感じたのはビール。さすがエールの国。

Q学費や勉学にかかる費用はどのくらいでしたか。
A

交換留学時の私の立場:Visiting Student(大学院生扱い) College Fee:1,939ポンド+University Fee:5,605ポンド=7,544ポンド。 これに10,000ポンド程度の生活費(住居費等も込みで)を上乗せした約17,500ポンド程度が、入学許可が下りたときにカレッジから一年間の見込み費用として連絡が来ました。学費は前年度分を参考にして見積もってあったので、実際に私が払った金額には多少の誤差がありましたが、ほぼ見込み金額通りの費用がかかりました。オックスフォードへの交換留学を考える場合、この費用の高さが一番のネックですよね。私も、なかなか大変でした…。

Q現地の気候は一年を通していかがでしたか。
A

一日の間にころころと天気が変化するので大変でした。朝は晴れていても突然雨が降り出して、また止んで…ということがよくあります。雨も日本に比べると冷たい霧雨のようなものが降り、風も結構強いことが多かったので、傘よりはパーカーやジャケットのフードをかぶって歩くのが一番便利でした。冬場は冷えますが、雪が積もることはめったにないそうです。去年は珍しく積もって、町中大騒ぎでした。

Q大学近くの街はどのような雰囲気でしたか。
A

オックスフォードは街そのものが大学と言ってよく、街中にカレッジが点在しているので、学生や大学関係者であふれています。観光客も多く、特に夏場は実家に帰省した学生の代わりに、観光客やサマースクールの生徒がたくさんいます。歴史的な建物が多く、街の規模も大きくないので、落ち着いた雰囲気で住みやすいところだと思います。

Q生活する上で日本から持って行った方が良いものがありましたか。
A

自転車通学をしていたので、私の場合はレインコートでした。ウォータープルーフのジャケットは良く見かけるけど、日本によくある膝まですっぽりおおうタイプをほとんど見かけなかったので結構困りました。あと洗濯ネットもあると便利。日本食の材料等はロンドンでたくさん手に入るので、ほとんど困らなかったですね。

Q病気になったとき、困った時など、どのように対処していましたか。
A

一年間の交換留学の場合、NHSというイギリスの国民医療制度に登録することができます。医院に行ってすぐには診察してくれず、電話での事前予約が必要であったり、診察まで何日も待たされたりと不便な点もありますが、無料で見てくれるので安心です。医者にかかる前に、自分のカレッジで担当の看護婦さんに相談することもできます。私の場合、日本で留学保険にも入って行ったので、英語でやりとりするのが難しい専門分野(婦人科など)はロンドンにある提携病院に出かけて行って、キャッシュレスサービスで診察を受けたりもしました。うまく使いわけるといいかもしれません。ちなみにイギリスでは、風邪はなるべく自然治癒を目指すので、抗生物質はめったに処方してくれません。それは長い目で見た環境・健康面では良いことかもしれませんが、冬場に何回も風邪をひいた私としては(気候風土の違いからか、冬場は体調を崩す留学生が多かったです)、解熱・鎮痛剤だけで乗り切るのはなかなか大変で、風邪をひくたびにぐったりしていた思い出があります…。

Q現地で生活する上で注意した方がよいことはありますか。
A

ロンドンに比べれば治安のいい方だとはいえ、日本人留学生が強盗事件に巻き込まれた話なども聞きましたし、東京に比べれば人々の帰宅時間が全体的に早いこともあって、夜遅くなると人通りが少なくなります。パブに飲みに行ったり、BOPと呼ばれるダンスパーティー(クラブみたいな感じ)が開かれたりと、オックスフォードの学生生活はナイトライフも充実していて楽しく過ごせるとは思いますが、帰り道は大勢の友人と連れ立って帰ったり、タクシーを拾うなど、危機管理には十分注意した方がいいです。また、変な場所に行ったり変な人と付き合ったりしなければ基本的には大丈夫だとは思いますが、日本と比較するとドラッグの使用が広まっているように見受けられるので、そちらも十分注意して下さい。

Q & A:学業について

Q留学前(ならびに留学中)、現地で語学学習に特化したクラスを受講していましたか。していた場合、クラスの内容・レベルを教えて下さい。
A

以前にオックスフォードに交換留学をされていた先輩のアドバイスにしたがって、大学のLanguage Centreが夏に開講しているPre-sessional English Courseに参加しました。前期と後期に分かれていて、私は後期の一ヶ月だけ受講しました。初日にクラス分けのテストがあって、その評価を元にReading/WritingとListening/Speakingのクラスが決定します。宿題量も多く、プレゼンテーションやグループワークの課題もあって、学習面でも充実していましたが、それ以上に知り合いや友人を作るのに最適な場所でした。通常通りの十月からの入学だと、どうしても同じ寮やカレッジ、コース内での友人のみになってしまいがちなので、カレッジや専攻、出身国やバックグラウンドも様々な人々とクラスメイトになれるのが英語コースに参加する大きな利点だと思います。

Q学部または大学院での授業を自由に選択・受講できましたか。できなかった場合、どのような制約がありましたか。
A

全くの自由でした。オックスフォード大学はお茶大のようなキャンパス制の大学と違って、カレッジ制を取っています。専攻内容によって所属する組織(お茶大ならば文教育学部や生活科学部のような)がDepartmentやFacultyで、学生の専攻に関わらず生活の面倒を見る(寮を用意したり、学食を提供したり)組織がCollege(カレッジ)です。なので、私がいたThe Queen’s Collegeにも物理学に古典学、神学と様々な専攻の人がいました。私はカレッジには正式に所属していましたが、DepartmentやFacultyには所属できなかったので、義務も課題もない代わりに、授業内容や開講状況などの情報も全くもらえず、最初は授業選択から苦労しました。インターネットで調べたり、実際にFacultyに出かけていって授業の一覧表をもらい、指導教官(アカデミック・アドバイザー)と相談しながら授業の難易度や自分の興味や研究内容に合わせて取る授業を決めていきました。メインは歴史学部の授業を受講していましたが、アドバイザーの助言を受けて英文学部の授業や古典学部の授業なども取っていて、毎学期始めはそれら全ての開講スケジュールに目を通して時間割を立てていたので、好きな授業に何でも出られることが嬉しい反面、何でも自分で計画を立てなくてはいけないので、面倒くさいなーとも感じていました。実は。

Q学部または大学院の授業についていくのはたいへんでしたか。
A

はっきり言って、大変でした。英語のリスニング能力が高いわけではなかったので、まず、授業がよく聞き取れずに集中力が続かなくて。自分が発言しなくていいレクチャーや大規模なセミナーはただ呆然(笑)としていても問題はなかったですが、語学のように当てられたり答えなくてはいけない授業はそうもいかないので。私は歴史学コースの院生に混じってラテン語の基礎コースを受講していたのですが、英語そのものも覚束ないのに、英語で他言語の説明をされるというのは結構ハードでした。しかも、他の生徒は全員英語のネイティブスピーカーで、同じラテン語学習一年生でも、習得の速さが全く違って焦る一方。ラテン語-英語は、ラテン語-日本語に比べれば言語体系的に似ているからか、逐一辞書を引かなくても単語の予想がつくときが多いので彼らは予習のペースも早くて。おまけにダメ押しのように、彼ら歴史コースの正規所属生徒は夏休みに集中ラテン語コースを受講していて教科書の半分を既に終了済だというのに、私は上で書いたような情報不足による不利益をこうむって(笑)夏期コースの存在すら知らなかったという…。明らかにクラスで一番の落ちこぼれ。そんな私を気づかって先生がかけて下さる優しい言葉が逆に胸に刺さり、授業に出かける前は毎週どんよりとしていたことも。負けず嫌いなので途中で投げ出すことも嫌で、冬期休暇中に必死で教科書の復習に精を出したことを覚えています。そのおかげか、すらすらレベルとは全く言えないものの、冬休み明けの授業では何とか質問に答えられるようになりました。私自身「あれ、ちょっとはマシになったかな」と手ごたえを感じましたが、「頑張ったわね!本当に頑張った!」と私以上に先生が喜んで下さったことに感激しました。

Q学部または大学院の授業は自分の専門性を高める上で有益でしたか。
A

有益でした。私の専攻がイギリス史だから余計かもしれませんが、日本と比べて圧倒的に先生の数も専門書の蔵書量も上ですし、日本ではなかなかまとまって聞くことができない基礎レクチャー群(時代やテーマにそった授業がたくさん開講されている)や、中期英語や中世ラテン語の授業などの日本ではあまり習えないような専門的な授業もたくさん開講されているので、贅沢な環境だなーと嬉しかったです。ただ、私の英語力の問題からか、せっかくそういう授業に嬉々として参加しても「な、内容がよく理解できません…」と、がっくりうな垂れることも多かったんですけどね…。

Q授業内で現地の学生と親しくなる機会はありましたか。
A

コースに所属していなかったので、他の生徒と親しくなれる機会があまり多くなかったです。レクチャーは人数が多いし、毎回参加メンバーが変わるので難しい。ラテン語の授業は、ほぼ固定メンバーでしたが、週に数回顔を合わすだけでしたし、私以外は同じ歴史コース所属の生徒ばかりで既に固まってしまっていたので、挨拶や世間話程度は交わすけれども、友人となるまでには至れませんでした。

Q大学内、とくに授業において、交換留学生に求められているもの、あるいは位置づけはどのようなものでしたか。
A

「お客さん」なので、好きなようにして下さいという放任主義でした。それこそ何もしなければ、ぼーっと一年間過ごせてしまうという。その代わり、本人のやる気次第ではいろんなことにチャレンジできるし、一流の教授陣に、豊富な公開セミナーやレクチャー、所蔵数もサービスも充実した図書館、コンピュータサービスと、素晴らしい設備や環境をたっぷり使い放題できるので、自分がこれをやりたいという方向性を見つけたら、アカデミック・アドバイザーと相談したり、図書館の司書に詳細を尋ねてみたりして、自分から積極的に動いていった方が有効に時間を使えると思います。

Qどの部署の方が交換留学生の窓口になってくれましたか。担当者のお名前がわかれば併せて教えて下さい。
A

クイーンズカレッジ所属で日本文学がご専門のDr. Phillip Harriesが窓口になって下さいました。最初の連絡は彼を通して行いましたが、事務手続きはその後、直接カレッジのオフィスを通して行ないました。

Qアドバイザー・個人チューターなどのシステムはありましたか。
A

生活面での相談役(学期に一度くらい面談して、生活面での悩みや困ったことはないか相談にのってくれる)であるMoral Tutorに上記のDr. Harriesがなって下さいました。幸運にもトラブルや困ったことはおきませんでしたが、何かあった時に日本語が通じる(普段は練習のために英語で会話していました)Dr. Harriesがついていて下さるというのは心強かったです。また、学業面でも指導教官(アカデミック・アドバイザーまたはチューターとも言う)がついて一対一(場合によっては一対複数)の指導をして下さいます。おそらく、交換留学の申し込み時に自分が提出した志望動機書やエッセイなどを参考にカレッジ内で最適な先生を探してアドバイザーにつけて下さるのだと思います。私の場合は、元々カレッジ内で指導していただきたい先生がいらっしゃったので、志望動機書にお名前を書いたりして積極的にアピール(笑)をした結果、希望通りのアドバイザーがつきました。私の場合、オックスフォードでの研究はアドバイザーとのチュートリアルをメインに行なっていました。自分のやりたい方向性や内容を伝えて、読むべき本や課題をアドバイスしてもらい、研究成果をレポートにして提出して面談、また次のアドバイスをもらう、といった進め方でした。読んだ方がいい本をリストアップして下さったり、せっかく方向性を熱心に説明して下さった後に「わかった?」と聞いたら「えーと、大事なところがよく聞き取れませんでした…」とずっこける答えを返す生徒(私です…)に根気よく説明を繰り返して下さったアドバイザーにはとても感謝しています。

Q単位互換の手続きについて、注意した方がよいことがあれば教えて下さい。
A

オックスフォードの場合、単位互換はなかったです。

Q & A:学生生活全般

Q留学した大学で与えられた身分は、現地学生と比べて扱いに違いや区別がありましたか。
A

Matriculation(入学式)に出席できない、DepartmentやFacultyに所属できない(コース生ではない)という以外は、特に区別はなかったように思います。カレッジには正式に所属しているので、カレッジの行事やパーティーにはどれも問題なく参加できました。

QLanguage Exchangeなど、授業外で現地の学生と触れ合う機会はありましたか。
A

私は日本人の友達のつてでスコットランド人のLanguage Exchange Partnerを得ましたが、彼とはLanguage Exchangeというよりは文化交流という名の下に、日英のお料理作りあいや日英映画鑑賞会に励んでいて(笑)、英語に関する疑問に答えてくれたり、発音のチェックをしてくれたりしたのは、英語教師の免状を持っているハウスメイトや日本に留学したことのあるイギリス人の友人でした。英語文の添削は日本に長年住んでいたアメリカ人(彼も英語教師経験者)の友人がしてくれました。話が少しずれてしまいましたが、オックスフォードはMCR(Middle Common Roomの略:カレッジごとにある学生組織のようなもの)主催のイベントであったり、クラブやサークル活動であったり、社交生活がとても充実しているので、自分さえその気になれば新しく人と知り合う機会はたくさんあります。ただ、学部生はイギリス人が多いけれど、大学院生の大半は世界中から来ている留学生なので、「イギリス人」の知り合いを重点的に求めると意外と見つからない…ということになりがちかもしれませんが。私はハウスメイトに誘われて、街のサルサ教室にも通っていたので、学生以外の街の人々と触れ合う機会も持てました。

Q留学生対象のオリエンテーションやイベントなどが開催されることはありましたか。あった場合、それはどのようなイベントでしたか。
A

一学期目の初めに海外からの学生対象の大規模なオリエンテーションが数日に渡って行なわれました。参加の申し込みを済ませると、カレッジの自分のメールボックスにパンフレットが届き、当日は大学組織の案内、International Office、Career Service、図書館やコンピュータサービスの案内、イギリス生活の注意点(チップとか)などいくつかの分野に合わせたレクチャーが行なわれ、自分の聞きたいときだけ出席するといった形式でした。ティールームも併設されており、レクチャーの合間の休憩にも利用できますし、レクチャー後に大規模なお茶会が行なわれて、そこで気さくに話しかけて知り合いを増やしたりもできました。留学生だけでなく全学生対象のイベントでしたが、数日間に渡って大規模なサークル・クラブ活動のオリエンテーションも行なわれました。ただ、Visiting Studentだけが対象のイベントやオリエンテーションはなかったので、他の正規入学の人々がコースのオリエンテーションに参加して授業登録をしたりしているのを横目に、誰からもどこからも何の連絡ももらえなくて(運悪くDr. Harriesにもアカデミック・アドバイザーにもすぐに会えなかったので、自分の立場の詳細がわからず、余計に不安になっていたのですが…笑)全く自分の身の振り方がわからずに焦っていたのを覚えています。結局、私の場合は全く学業的な決まりも義務もなくて、学校側からすれば「好きにして」といった感じだったのですが…。

Q & A:その他

Q交換留学をするために、事前に知っておいた方がよいと思う情報や知識がありますか。あったら自由に書いて下さい。
A

情報というより心構えと言った方がいいかもしれませんが、何かに行き詰まった時は自分から行動をおこしたら少しは状況が変わるかもしれない、ということを気に留めておいてほしいなと思います。オックスフォードの教育方針を見ていると、交換留学生や正規生を問わずに、どちらかというと放任主義です。生活にしても放っておいてほしければそのままひっそりと暮らすこともできますし、課題にしてもこなすのが厳しい量の課題がぽんと与えられて、できたらまた連絡してね、といった様子です。あれこれと世話を焼いてくれるわけではありません。しかし、冷たいかと言ったらそうではなく、アドバイザーにしても寮長にしても自分から問いかければ、よく相談にのってくれますし、融通がきくこともたくさんあります。知り合いを増やしたいと思うなら、自分から積極的にパーティーやディナーなどに出かけていけば、いろいろおもしろい出会いもあります。留学中は辛いときや悩むときも多くあるでしょうし、納得がいかなかったり、頭にくることなども起きるかもしれませんが、かなりのことは自分の考え方や行動次第で好転させられる!と信じて、ストレスをため過ぎない留学生活を送って下さい。思いつめて体調を崩したり、ノイローゼになってしまった人を、身の回りでちょくちょく見かけたので…。心身の健康を一番大事にして、大いに楽しんで下さい。