国立大学法人お茶の水女子大学 〒112-8610 東京都文京区大塚2-1-1
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2005年10月~2006年6月の間、私はロンドン大学のひとつ、School of Oriental and African Studies (SOAS)という協定校に交換留学しました。開発学、とくに「ジェンダーと開発」という分野に興味を持ち始めてから2年半後に実現したこの留学。当初、留学期間中にやってみたいと思っていたことがすべてできたわけではありませんが、この一年はこの先の研究活動に欠くことのできない重要な肥やしになるのではないかと思います。
【SOASを選んだ理由】
その名の通り、SOASではアジア・アフリカ研究が盛んに行われております。研究分野は開発学に限らず、経済や政治、文学、語学、音楽と多岐にわたっています。また、常設の語学センターは、アフリカやアジアの言語教育機関としてヨーロッパの中でも非常に注目を浴びています。
さて、私はというと現在、東南アジア、とくにシンガポールにおける女性移住労働者についての研究をしています。が、この移住・移民の問題は途上国における開発問題と密接に関わっています。しかし途上国開発についての包括的な理論や議論を独学するのには限界がありました。また、開発学発祥の地であるイギリスでは、この分野においてどのような議論が展開されているのかを実際に体感してみたいと思い、SOASを留学先候補に決めました。
【留学前の語学学習】
交換留学が決まってからはTOEFL対策が中心でした。しかし実際に留学に際して役に立ったことは、タイのアジア工科大学大学院で行われる『「ジェンダーと開発」ワークショップ』に参加して実際に英語を使って調査演習・報告書作成を行ったり、ゼミで扱われる英語論文を読んでいたりしたことでした。
また、アカデミック・イヤーよりも早めに渡英し、8~9月の8週間にわたって行われる英語準備コースを受講しました。このコースではエッセーの書き方や、プレゼンテーションの方法論、講義中のノート・テイキング方法などを、課題を通して学び、アカデミック・イヤーに備えました。
【アカデミック・イヤー(10月~翌年6月)】
10月以降のアカデミック・イヤーで、私は開発学の修士課程で行われる「Theory, Policy and Practice of Development(開発理論・政策)」、「Political Economy of Development(開発政治経済)」、「Gender and Development(ジェンダーと開発)」、「Civil Society, Social Movements and the Development Process(市民社会、社会運動、開発プロセス)」という4つの科目を履修しました。それぞれの科目では、毎週課される大量の文献をもとに1~2時間の講義が行われ、その後10人前後のゼミにおいて文献のサマリーをもとにディスカッションをします。ゼミではプレゼンテーションを担当することもありましたが、ここでは準備コースで学んだプレゼンテーションのノウハウが役立ったと思います。ただ、読む量が増える分考える量も増えるので、言葉にまとめて発言するまでに至らないこともしばしばあり、しまいにはストレスを溜めることもありました。
また、それぞれの科目につき1~2本のエッセー課題や記述試験が課されます。自分のネイティヴではないというハンディキャップを持ちながら、問題に対してどう的確に答えていくか――英語で読み手を説得できるような意見を書くチャンスであり、それは非常に良い訓練になりました。
【勉強のための環境】
勉強するための環境は非常によく整っています。ロンドン大学内の学校であれば、どこの図書館にでも出入りできるので、オンライン・ジャーナルで入手できない資料があっても他校へ足を運ぶことで、エッセー課題に必要な資料は大体そろえることが出来ました。私自身の研究関心について言えば、SOASの図書館にはシンガポールや「ジェンダーと開発」に関する文献や資料が豊富にあります。シンガポールがイギリス植民地だったこともあり、独立以前の統計等が手に入るというメリットもあります。
また、試験期間中には図書館およびコンピュータールームが24時間オープンになるので、いつも集中して勉強することが出来たと思います。
【ロンドンでの生活】
住まいは途中の3ヵ月以外、大学寮に住んでいました(途中の3ヶ月は大学寮に空きがなかったので、プライベート・フラットに住んでいました)。大学寮では二人部屋で別の留学生と共同生活をしていたので、英語で話すだけにとどまらず、互いの言葉や文化等を学ぶのにも良い機会でした。時にはアカデミックな議論をすることもありました。
食事についてはほとんど自炊をしていました。日本からもいくらか調味料など持って行きましたが、ロンドンにはジャパンセンターや日本食を置く店がいくつもあるので、特に困ることはありませんでした。また、ロンドンにはたくさんの移民が住まうので、その分いろいろな食材が手に入ります。渡英後に同じクラスだった友達とディナーパーティーを何度もしましたが、日本のカレーライスやたらこスパゲッティ、サーモン寿司などが大人気でした。
課題に追われることが多く、あまり旅行に行けなかった分、私はロンドンという街をじっくり楽しむことが出来たと思います。大学の近くには大英博物館があり、他にも歩いていける距離に教会や博物館、マーケット等があったので、多様な文化や美術、食を満喫しました。また、街中を歩くことでエスニシティによる職域や職階層があることを知ることができ、移住・移民について研究している私にとっては非常に興味深かったです。
【留学生活を振り返って】
学部から現在の院までずっとお茶大に在籍しているので、そこから外に出るのは初めての体験だった分、専門性を高めたり語学を鍛錬したりする以上に、学ぶこと、体験することがたくさんありました。また、他大学での研究環境を目の当たりにすることで、自分の研究に対する姿勢も変わりつつあります。留学期間中にしたかったことのすべてが出来たわけではありませんが、課題や生活、そして何よりも友だちを通して多くのことを得た今、振り返ってみると、本当に有意義な一年を過ごしてきたと思います。
TOEFLのスコアを上げるため、その対策をした。それ以外には、普段の授業や研究活動等で忙しかったため、語学力を向上させるような勉強はあまり出来ず、授業で扱う英語論文を読む程度であった。
上記以外の勉強はしていない。すでにTOEICである程度のスコアを得ていたが、TOEFLスコアは結果的にあまり上昇しなかったので、何とも評価できない。ただ、海外での調査・研究において英語を使う機会はあった。
交換留学制度については学部のときから知っていたので、時期を見て国際交流課に募集要項を取りに行った。
生活費やロンドンの治安状況について、ロンドンに留学経験のある友人に話を聞いたり、物価について調べたりした。また、留学先大学のHPにアクセスして授業内容等について調べた。
特に不安はなかった。留学先でのステータスを知らされていなかったので、気になった。
学生ビザ
パスポートを持って在日イギリス大使館に赴き、必要な書類を提出した。
インターネットで航空券購入及び海外保険加入の手続きをした。また、1年だけの滞在期間なので、現地で銀行口座を作ることを止めた分、自分が口座を持っている日本の銀行で国際キャッシュカードを作った。さらにマイレージを貯めることのできるクレジットカードを作った。
渡英後2ヶ月および12月下旬から大学寮に入った。途中3ヶ月は、個人でフラットを借りた。
最初に2ヶ月住んだ寮は、大学側から送られてきたパンフレットをもとに自分で申請した。それ以外はすべて自分で確保した。
最初の寮および個人フラットでは日本円で10万円前後、現在の寮は7万円弱。
10万円以下。物価そのものは何をするにも東京の2倍かかるが、外食を控え自炊をすれば、それほど高くはない。
授業料はお茶大が負担しているので、それ以外は上記の生活費10万円以下に含まれている。しかし、文献コピーやPCルームでのプリントアウトには別途かかることもあった。学期初めに授業用の文献パック(スタディパック)を購入すると1冊5,000円くらい支払うこともあった。また、電子機器が壊れることが多く、買い換えたりもした。
基本的に乾燥していて寒かった。夏の間1ヶ月半ほどは汗ばむときもあったが、朝晩はいつも涼しく寒いときもあった。雪が降ることはあまりなかったが、冬はとても寒く、一日中暖房をつけていた。春には次第に暖かくもなるが、雨が降ると寒い。また風が強くなるため、5月半ばは花粉が飛ぶ。
近くにホテルや博物館があるため、観光客で賑わっている。近くにはスクエア(公園)があり、夏や春にはたくさんの人が日光浴を楽しんでいる。
医薬品。常備薬以外に、市販の風邪薬や頭痛薬は重宝する。テストを受けることを念頭に入れているなら、腱鞘炎防止に湿布を持っていった方が良いと思う。ロンドンで日本の薬を購入すると日本よりも3倍くらいの価格で買うことになる。生理痛を抑えるためのピルも必要ならば持っていったほうが良いだろう。こちらでは無料で処方されるが、合わないと授業にも参加できないほど、体調が悪くなったことがあったので。
スリに気をつけること。
語学学習に特化したクラスは、現在は受講していない。時間的余裕がないため。外国人留学生にはそれぞれの英語力や目的に合わせたコースが5週間ずつ提供されている。一度、セミナースキル(講義ごとに行われる少人数クラスで必要なスキル―ディスカッションやプレゼンテーション―の練習をするクラス)を受講したが、受講科目の課題や準備に追われあまり参加できなかった。クラスメートはアジア出身者が多い。私が受講したものは一人だけヨーロッパ出身で、他はアジア―とくに日本人が多かった。
院での科目は最終的に選択できたが、学期始めの科目登録の際にそれぞれの科目を総括する先生のサインが必要で(交換留学生のみ)、それを依頼する際、私が留学先ではUndergraduateの身分であることを理由に、幾度か受講を考え直すよう促された。
基本的に大変。ただ、それは現地の正規学生にとっても同じ。
有益だった。
科目ごとにあるチュートリアル(少人数のディスカッショングループ)ではパートナーを作ってプレゼンテーションをするため、その際に話をするようになったりはするが、授業についていくこと自体が大変なので、割りと一人で勉強したりもしくは日本人の正規留学生と勉強したりすることが多かった。
交換留学生として特に求められているものはない。同じように扱われる。ただ、上記に記したように、交換留学生はUndergraduateの身分しか持たないので、院の授業を受ける旨を説明しても、理解してもらえないことがあった。これは選択した科目の正規受講生がすでに200人を超えていたこともあり、チュートリアルの人数制限に支障をきたすかもしれないという、教員側の懸念があったと思われる。
上記の通り、Undergraduateの身分。扱いに区別はなく、課題もプレゼンテーションもテストもこなすが、科目登録時、および院生寮に申請する際に、その身分であることに面倒な思いをした。身分のことについては国際交流課から何も聞いていなかったので、かなり当惑した。
同居人が居たので、英語・日本語・中国語などで話す機会があった。また、アカデミック・イヤー前の友達とディナー・パーティーをするときに色々と話をした。大学寮の申請にあたっては、いかに礼儀良い英語を話すかを学ぶ良い機会だった。
日韓の交換留学生を対象としたイベント、また提携大学へこちらの大学から留学する学生との交流会があった。しかしいずれも、課題等の準備が理由で、参加できなかった。
大学での身分のことは先に知らせてほしい。
交換留学ゆえこちらでdegreeは取れないが、1年という期間はDiplomaを取るのに十分な期間である。ある条件(たとえば、特定のコースの科目を正規学生同様履修する、こちらでの学費を一部負担する、など)を満たせばDiplomaを取れるような留学制度にした方が、留学した個人の経歴上の強みにもなるし、それは就職や進学にも非常に有益な道具になるだろう。留学前に、交換留学時を在学扱いにするか休学扱いにするか、という選択肢が募集要項にあったが、私は休学にした。というのも、M1の折に卒業に必要な単位はすべて取得した分、こちらでの単位を卒業単位に換算する必要はないため、在籍しているお茶大に授業料を払う意味はない、と判断したためである。また、授業料を支払うことで単位を換算し在学扱いになったとしても、こちらでの成績がどのように換算されるのか不明瞭であったし、こちらでの授業に加えお茶大へ提出する修士論文を執筆する余裕が時間的にないと判断したためである。授業料を支払うことで交換留学時の単位や在学期間を在学大学でのそれらに振り替えることは、学部生にとっては有益であるが、院生にとっては実用的な制度ではない。