2024年10月6日(日)に「第6・7回 海の生き物観察会」を開催いたしました。
講師は、清本正人教授(お茶の水女子大学理学部生物学科教授、湾岸生物教育研究所長)が担当いたしました。アシスタントはお茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻の大学院生4名が務めました。
講義と観察
初めに清本先生から動物の分類や体の対称性についての講義を受けました。その後、参加者は千葉県館山市の湾岸生物教育研究所からやってきた貝やカニ、ウニやヒトデなどの海洋生物の観察を行いました。
まずは軟体動物であるウメボシイソギンチャクや巻貝(マガキガイ、イシダタミ、イソアオウミ)、巻貝でも二枚貝でもないヒザラガイやイソアワモチを観察しました。イソギンチャクの対称性や、貝の形や殻の有無によって異なる体のつくりについて、実際に手をとって観察しながら学びました。
次に節足動物であるカニ(ヒライソガニ、オウギガニ)とホンヤドカリを観察しました。節足動物の体は、頭部・胸部・腹部の3つに分けることができ、さらに一つの体節に対して一対の付属肢(足)があります。(例えば、昆虫では胸部に3つの体節があるので付属肢は6本。)この体節や付属肢の数の違いが、カニやヤドカリ、エビを分類するときの重要なポイントになります。ピンセットや手で触りながら、カニやヤドカリの体の腹側をよく観察して、体節と付属肢はいくつあるか、数えて違いを探しました。ヤドカリは宿である貝殻の一部に穴を空けた状態で配られるため、空いた穴からピンセットで本体をつつくと嫌がって宿から出て行く様子を観察できました。普段は見られないヤドカリの全身を観察した後は、先ほど取り上げた宿を再度与えると、脚を使って貝殻に入っていく様子が観察できました。
その後、カニへ餌をあげてその様子を観察しました。細かく砕いた金魚の餌を与えると、口の付近にある小さな脚のようなものを動かして、餌をかき集めるようにして食べる様子が確認できました。これは顎脚という餌を集める時に使う器官で、効率よく餌を集めるための小さな毛が生えています。同じ甲殻類でも顎足の数は異なり、カニには3対の顎脚がある一方で、シャコのように顎脚が5対もある生き物もいるそうです。
海の生き物が動く様子だけでなく、普段は見ることのできない部分まで観察することができ、参加者も楽しんでいた様子でした。
次に、棘皮動物であるムラサキウニとイトマキヒトデの観察を行いました。棘皮動物はヒトデを見るとわかるように五放射相称の体のつくりをしています。では、体の中はどのようなつくりをしているのでしょうか?
参加者のうち希望者は、自分の手で解剖をしてヒトデとウニの体の中を観察しました。ヒトデとウニを切り開き体の中を観察すると、内臓などの体の中のつくりも五放射相称になっていることがよくわかりました。「アリストテレスの提灯」と呼ばれるウニの口も観察し、放射状に5つの歯がついている様子が確認できました。
実体顕微鏡を使った観察
ここからは実体顕微鏡を使って、海の中のさらに小さな生き物の観察を行いました。
まずは節足動物であるウミホタルの観察です。ウミホタルは体内から青い発光物質を出して光る生き物です。ウミホタルをたくさん入れた水槽に電気刺激を与えて発光する様子を観察しました。水槽の中が青く綺麗に光る様子に参加者からは歓声が上がっていました。その後、スポイトを使って自分たちでウミホタルを捕まえ、顕微鏡でウミホタルの観察を行いました。ウミホタルの体は透明のため、心臓が動く様子など体の中をじっくり観察することができました。実は肉食であることや、節足動物の中でも珍しい体のつくりをしていることなど、ウミホタルの生態に驚いた参加者も多いようでした。
続いてムラサキウニの子どもである稚ウニ、イトマキヒトデの子どもである稚ヒトデの観察をしました。米粒ほどの大きさの稚ウニや稚ヒトデに、参加者からは「小さくて可愛い」という声が上がっていました。
最後に稚ウニや稚ヒトデよりも更に小さい、ムラサキウニの幼生とヒトデの幼生を観察しました。ウニやヒトデは幼生のときは大人とは異なる体のつくりをしていて、昆虫と同様に「変態」をして、先ほど観察した五放射相称のつくりになります。では、幼生のときの対称性はどうなっているのでしょうか。
実際に観察してみると、ウニやヒトデの幼生は左右対称のつくりをしていました。その前の講義で「棘皮動物は五放射相称であるのに、左右対称の動物の仲間に分類されているのはなぜか?」という問いが清本先生から出されていましたが、「左右対称な幼生から五放射の成体になるということは、左右対称な祖先から五放射の体に進化したと考えられるから。」という答えが、参加者にはよく伝わったようでした。
3時間と短い時間でしたが、たくさんの海の生き物を観察することができ、参加者は生き物の分類や体のつくりについて理解を深めることができました。時には親子で一緒に解剖や観察に取り組む様子も見え、子どもも大人も楽しまれていました。
講義や観察の中で、参加者からは「オスとメスの見分け方はありますか?」「どうしてこのような生態を持つようになったのですか?」など、海の生き物についてたくさんの質問が挙がりました。
実際の生き物に触れることで普段見ることのできない部分を見ることができ、観察会を通じて海の生き物についての関心が高まったようでした。