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2021年10月10日(日)にオンラインにて「第1回女子中高生のためのDXセミナー」を開催いたしました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況を踏まえ、オンラインでの開催となり、全国各地の沢山の方々にご参加いただきました。
今回は女子中高生の皆さんに、新たなデジタル技術で変化していくこれからの未来について考えていただくため、DX(デジタルトランスフォーメーション)についてご講演いただきました。モデレーターは、加藤美砂子教授(お茶の水女子大学 理系女性教育開発共同機構 機構長)が担当いたしました。


講演は、安間裕様(アバナード株式会社 代表取締役)DXの未来は、理系女子が作る」というテーマでお話しいただきました。まず、ITイノベーションが利益を生み、社会を豊かにしているというお話をしていただきました。先進諸国と比較すると日本の企業の利益率は低いけれども、産業別に見ると、デジタルに投資をしている産業分野では利益率が高いそうです。次に、最近よく耳にするDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何なのか、世の中にはどのようなDXの事例があるのかご紹介いただきました。DXとは、企業がIT技術を利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させるものです。DXの事例として「Pay per Laugh」―コメディ劇場の客席にカメラを設置し、入場料は取らずに顔認識で”笑い”が認識されるたびに料金が加算されるものや、仏ミシュラン社の「マイレージ・プログラム」—トラックタイヤを無料で貸与し、タイヤに付けたセンサーで計測した回転数に応じて料金が加算されるシステムなどがあるそうです。「マイレージ・プログラム」はタイヤの所有権をミシュラン社が持っているため、使い古したタイヤを再利用して提供することでSDGsにも貢献することができるそうです。その他にも農業分野など、様々な業界でDXによってすでに新しい商品やサービスが多く生み出されていることに驚き、未来への想像に胸が膨らみました。

続いて日本が抱えている社会課題の解決に何が必要か?という観点からお話しいただきました。現在、日本では少子高齢化が進行し、市場が縮小し、労働力が減少しています。経済を維持・拡大していくためには、グローバル化と女性の活躍推進がキーであるとのことでした。日本では女性の出産後の就業継続率は諸外国と比較して低いそうです。女性が継続して活躍できる環境を整えていくことが、持続的な日本を作っていくために重要だとのことでした。近年日本では新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが導入され、働き方が大きく変化しました。アバナード株式会社でも8割がリモートワークを継続しているそうです。出勤することなく、日本全国どこでも働くことができるようになり、より柔軟な働き方ができるようになってきています。リモートワークの活用は、女性が継続して働き続ける環境をつくることにも繋がるのではないかとのことでした。また、アバナード株式会社の関わった開発として「Cancer board」—時間や場所の制限なく世界中の医師がディスカッションに参加し、患者に合わせた効果的ながん治療を可能にするシステムをご紹介いただきました。デジタル化は柔軟な働き方を実現し、さらに人の命を救うようなシステムを作り出す、大きな力を持っていることを実感しました。

最後に理系進学に関心をもつ女子中高生の参加者の皆さんに向けて、『「理系女性」など属性グループへのタグ付けは、一緒に働いて交流していくうちに次第に個人へのタグ付けに変わっていきます。ぜひ中高生のみなさんには「ITができる〇〇さん」になっていただいて、今後の日本を支える人になっていただきたいです。』というメッセージをいただきました。


講演後の総合討論では、マイクを通して参加者やモデレーターから直接質問が投げかけられ、オンラインではありましたが講演者との積極的なやり取りが行われました。討論の一部をご紹介します。

  • DXで実現する新しい仕組みや商品を提案できるようになるための柔軟な発想は、どのようにして養っていくことができるのでしょうか。
    ―中高生の皆さんは幼い時から身近にコンピューターやスマートフォンがあって使いこなしているので、逆にコンピューターはまだこんなこともできないの?という発想ができるのではないかと思います。そこから、デジタル化で便利になった世界でさらに求められるものは何か?と、想像のさらに先の想像ができるようになってほしいと思います。また、中高生のうちに計算などの基礎を固めてほしいとも思います。さらに、例えばスマホがどうやって動いているのか?と仕組みについて考えることも大事です。
  • DX化の事例では、どういったことが開発の障壁になることが多いのでしょうか?
    ―日本では、ウォーターフォール型の開発というのですが、誰かが「こういうものを作ってほしい」と決めてから作る形が多いです。しかし最先端のものを作っていくには、ディスカッションをしながら作り、試作品を前にしてディスカッションを重ねるという形のほうが適していると思います。作ることとディスカッションを両輪で回していけるような開発環境が整うことが理想だと思います。
  • 理系女性が活躍し続けるにはどういった環境を作っていくことが必要なのでしょうか。
    ―育休制度などを整えていくことも大事ですが、そういった制度を活用しやすいカルチャーを作っていくことが最も重要なのではないかと思います。女性に限らず、どういった人でも休みやすい、働きやすい会社の雰囲気を作っていくことが必要だと考えています。

安間様の力強いメッセージに溢れたご講演と活発な総合討論により、DXとはどういったものか具体的に知ることができ、理系進学に関心を寄せる女子中高生の皆様にとって、デジタル化によって実現できるかもしれない未来を考えるきっかけになったのではないでしょうか。