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2022年3月30日(水)にオンラインにて、女子中学生向けに「体験型数学セミナー:ミニ四駆で『ギア』を学ぼう ~比例と反比例の利用~」(午前に第5回,午後に第6回)を開催いたしました。東京はじめ全国からご参加頂きました。セミナーの講師は、お茶の水女子大学・理系女性教育開発共同機構の吉村和也先生が担当いたしました。

セミナーでは、理系女性教育開発共同機構が開発し、学校向けに貸し出している教材「ミニ四駆で「ギア」を学ぼう~比例と反比例の利用~」を使用して、「比例」「反比例」について実際に存在する歯車を例にとって学んで頂きました。

私たちの生活に身近な自動車や船などでは、モーターの回転を動力に移すため多くの「ギア」が用いられています。取り付けられている歯の数が違う「ギア」を用いることで回転の力を増幅したり速度を調節したりすることができます。この「ギア」の役割には数学の比例と反比例の考え方が利用されています。今回のセミナーにおける大きなテーマの1つが、ミニ四駆の「ギア」を用いた走行実験を通して「身近なところで数学が活用されていること」を中学生の皆さんに伝えることでした。

開発教材を使用した実験動画(2台のミニ四駆(電池でモーターを回して走る車)が走る)を見て、事前に中学生の皆さんに配布したワークブックに計算結果を書きこんでもらいながらセミナーを受けて頂きました。
見た目そっくりな赤と黒、2台のミニ四駆が同じ距離を走る動画を見て、その様子を観察しました。初めは黒い車がリードしますが、最後に赤い車が追い越しました。赤い車と黒い車は、車両の重さ、電池の電圧はほぼ同じで、モーターは同じものを使っています。しかし、車輪についているギアの色、大きさが違います。モーターにつけた紫色のピニオンギアが回転すると、水色もしくは青色のカウンターギアが回転します。すると、回転するカウンターギアが車軸についた黄色のスパーギアを回転させることで車輪が回転し、ミニ四駆が走ります。
それぞれのギアの歯の数を数え、赤い車、黒い車において、ピニオンギアが1回転する時のカウンターギアの回転数を計算しました。さらに、カウンターギアが1回転するときのスパーギアの歯数(X)と回転数(Y)の関係を式で表しました。その関係式を用いて、ピニオンギアが1回転するときのスパーギアの回転数を求めました。求めた計算結果を用いて、赤い車および黒い車におけるスパーギアの歯数と回転数の関係をグラフで表すと、反比例の関係になることがわかりました。加えて、赤い車および黒い車における、ピニオンギアの回転数とスパーギアの回転数の関係をグラフで表すと、比例の関係になることがわかりました。
このグラフとそれを表す直線の式から、赤い車と黒い車の走行距離について考えると、常に赤い車が黒い車より前を走ることになります。この結果においては、理科の知識から原因を考察しました。実際に車を走らせた場合では、タイヤと床の間には摩擦力が働きます。そのためどちらの車でも、走り出し直後はタイヤが回転しにくいため回転速度はすぐには上がらず、下に湾曲したグラフとなります。
黒い車の方が赤い車よりもスパーギアの直径が大きいため、黒い車のスパーギアの方が、より小さな力で回転することができます。従って、黒い車の方がより短い時間のうちに、スパーギアの回転速度を最高値に至らせることが出来ます。しかし、ある程度時間が経つと、赤い車でも、スパーギアの回転速度が最高に到達します。こうして、赤い車が黒い車を途中で追い越す結果になる理由がわかりました。

多くの学校では、ふだん数学の授業で実験をすることはないのではないかと思います。今回のセミナーを通して、実験をしながら数学を学ぶという新たな体験をして頂きました。学校の数学で習ったことが、今回のミニ四駆をはじめとして実際に社会の中で活用されていることを実感できたのではないでしょうか。今回のセミナーを受講された生徒の皆さんが、今後、数学にさらに興味を持ち、もっと数学を好きになって頂けることを願っています。