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2022年7月31日(日)にオンラインにて「女子中高生のための第3回グローバル講演会—サイエンスから世界へ—」を開催いたしました。今回も引き続きオンラインでの開催ということで、全国各地の方々にご参加いただきました。
今回は海外でも教育を受け、現在は第一線の研究者としてご活躍されている二人の先生にご講演いただきました。モデレーターは、世界中の研究者ともに国際共同研究をされている、お茶の水女子大学理学部生物学科の植村知博准教授が担当いたしました。


最初の講演は、河島 友和 先生(ケンタッキー大学 植物土壌学科 准教授)「出来る出来ないではなく、やるかやらないか:海外にも広がる・つながる理系の仕事」というテーマでお話しいただきました。

河島先生は大学院からアメリカで学ばれ、シンガポールやオーストリアでも研究をされてきました。主にアメリカでの教育環境、研究について、そしてそこから世界へ広がる理系の可能性についてお話しいただきました。
河島先生は、現在ケンタッキー大学で植物の種子の形体形成の研究をされています。植物研究の入り口となったのは、高校1年生のときにボーイスカウトの交換留学でオーストラリアに短期留学に行ったことでした。そのとき、現地の植物のカラフルさや形の多様さに衝撃を受けたそうです。その後大学での研究が楽しくなり、大学院への進学を決意したそうです。
科学研究には英語での専門的な読み書きや、ディスカッションが必要となりますが、大学生時代は英語に苦手意識があったそうです。そこで、最先端の植物研究を続けるため、さらに苦手な英語を克服するため、アメリカの大学院への進学を決意されました。
アメリカの博士課程は「自分自身で考え、創造し、問題解決を実行できる人材」を育成することが目的とされていて、常に英語で鍛えられる環境があること、奨学金などの生活支援が充実していること、そして進学後の就職先の広がりもあることをお話しいただきました。その分だけ大きなストレスがかかったりもしたそうですが「乗り越えた先にできる経験があるので、10年20年後に後悔するより、出来る出来ないより、やるかやらないかでぜひ挑戦してほしい」というメッセージをいただきました。
また、合わせてアメリカでの全体的な教育事情についてもお話しいただきました。学びのはやい生徒に対するプログラムが充実しているなど、日本の教育システムとの異なる点がとても興味深かったです。


次の講演は、Rzepecka Natalia様(お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 ライフサイエンス専攻 博士後期課程2年)「ポーランドで日本学科を卒業した私が、日本で植物の研究を始めるまでの道のり」というテーマでお話しいただきました。

Natalia様はポーランド、イギリス、日本の大学・大学院で学ばれ、現在はお茶の水女子大学の博士後期課程で植物の細胞研究をされています。ポーランドの教育事情や、ご自身が元々は日本学科卒業という経歴から、日本での植物研究という夢を実現された今に至るまでをお話しいただきました。
Natalia様が小学生だった当時は、ポーランドでは海外の大学で学ぶことはとても珍しいことで、想像もできなかったことだそうです。しかしEU加盟によって国境を越えた移動がしやすくなり、インターネットの普及でグローバル化が進んだ結果、国民の意識が大きく変化して、現在は国外の大学に進学する人も多くなったそうです。
Natalia様も日本の文化に興味をもったことから日本学科に進学され、2度の日本への留学を経験されています。そのときに日本語で生物学を学んだことがきっかけで、もともと関心のあった生物学を日本語で学び、研究するという夢がスタートしたそうです。
その後はポーランドに一度帰国し、日本学科の修士課程とバイオテクノロジー学科で学ばれたそうです。ポーランドでは大学の授業料が無償であるため、Natalia様のように同時に2つの大学に通う人も少なくないのだそうです。
また植物学者として、マレーシアのボルネオ島にデータ収集に行く経験もあったそうです。このとき、サイエンスをしているからこそ踏み入れることができる場所があること、そしてサイエンスを通して様々な人と国際交流をすることができることを実感したそうです。
日本語と生物学という二つの「やってみたいこと」をどちらも諦めずに挑戦してきたNatalia様からは「本当にやってみたいことがあれば、勇気をもってやってみてください。そうすれば新しいことを学べたり成長したりするチャンスがあります。」とメッセージをいただきました。


講演後の質疑応答では、参加者はマイクを通して自分の言葉で講演者に直接質問を投げかけました。海外の教育制度や学生生活に関する質問や語学習得に関する質問が多く寄せられ、モデレーターの植村先生を交えて講演者と質問者との間で活発なやり取りが行われました。

世界のさまざまな教育環境、留学事情を知ることができ、海外や理系進学に関心のある参加者も、海外へと学びの場を広げてみようと考える機会になったのではないでしょうか。