2022年10月9日(日)に「第2・3回 海の生き物観察会」を開催いたしました。
講義と観察
最初に清本先生から、動物の分類や体の対称性についての講義を受けました。
その後、参加者は千葉県館山市の湾岸生物教育研究センターからやってきた貝やカニ、ウニといった海洋生物の観察をしました。
まずは軟体動物である巻貝(アマオブネ、スガイ、イシダタミ)とヒザラガイを観察しました。巻貝の見分け方や、巻貝でも二枚貝でもないヒザラガイについて学びました。
次に節足動物であるカニ(ヒライソガニ、オウギガニ)とヤドカリ(ホンヤドカリ、イソヨコバサミ)の観察をしました。節足動物の体は頭部・胸部・腹部の三つに分けることができ、さらに一つの体節に対して一対の付属肢(足)があります。(例えば、昆虫では胸部に三つの体節があるので付属肢は六本。) 体節や付属肢の数の違いがカニやヤドカリ、エビを分類するときの大事なポイントになります。
時にはピンセットを使って触りながら、カニやヤドカリの体の腹側をよく観察して、体節と付属肢はいくつあるか数えて違いを探しました。ヤドカリは宿を取り上げられた状態で配れたため、普段では見ることのできない部分まで観察することができました。
その後、カニへの餌やり体験をしました。餌であるプランクトンを与えると、口付近にある脚のようなものを動かして餌を食べる様子が観察できました。これは脚ではなく顎脚といい、餌を集めるときに使う器官です。
また、宿を持たないヤドカリに貝殻を与えると、貝殻に入っていく様子を見ることができました。ヤドカリの滅多に見ることができない姿に、参加者からは歓声が上がっていました。
次は、棘皮動物であるムラサキウニとイトマキヒトデの観察です。棘皮動物はヒトデを見ればわかるように五放射相称の体のつくりをしています。では、体の中はどのようなつくりをしているのでしょうか?
ウニとヒトデを切り開き、体の中を観察すると、どちらも内臓などが五放射相称のつくりになっていることがよく分かりました。
実体顕微鏡とモバイル顕微鏡を使った観察
ここからは実体顕微鏡、そしてモバイル顕微鏡を使って、海の中のさらに小さな生き物の観察を行いました。モバイル顕微鏡は自分のタブレットやスマートフォンを使って観察し、写真を撮ること のできる顕微鏡です。参加者はホールスライドガラスとこれらの2つの顕微鏡を使って観察を行いました。
はじめは焦点の合わせ方など、顕微鏡の使い方が分からなかった参加者も、すぐに使い方を習得して生き物を観察できるようになり、思い思いに写真を撮っていました。
まずは節足動物であるウミホタルの観察です。ウミホタルは発光物質を出して青い光を出す生き物です。顕微鏡で観察した後、電気刺激を与えて発光する様子を見てみました。
続いてムラサキウニとイトマキヒトデの幼生、そして稚ウニの観察をしました。ウニやヒトデは子どものときは大人とは異なる体のつくりをしていて、昆虫と同様に「変態」をして、先ほど観察した五放射相称のつくりになります。では、幼生のときの対称性はどうなっているのでしょうか。
顕微鏡で観察してみると、ウニやヒトデの幼生は左右対称のつくりをしていました。観察前の講義で「棘皮動物は五放射相称であるのに、左右対称の動物の仲間に分類されているのはなぜか?」という問いが清本先生から出されていましたが、「左右対称な幼生から五放射の成体になるということは、左右対称な祖先から五放射の体に進化したと考えられるから」という答えが、幼生と成体の両方を観察した参加者にはよく分かったようでした。
3時間と短い時間でしたが、たくさんの海の生き物を観察することができ、参加者は生き物の分類や体のつくりについて理解を深めることができました。
講義や観察の中で、参加者からは「生き物たちは何を食べていますか?」「この臓器はなんですか?」など、海の生き物の生態や体についてたくさんの質問が挙がりました。
実際の生き物に触れることで普段見ることのできない部分を見ることができ、海の生き物についての関心が高まったようでした。