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2022年11月6日(日)に、第35回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。今回はオンラインと対面でのハイブリッド開催ということで、現地ならではの臨場感がありながらも、全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。
講演の部は、株式会社ベネッセコーポレーション 伊藤舞花様、弁理士法人あしたば国際特許事務所 柴田紗知子様にご講演いただきました。
司会進行は、本研究所 研究員の近藤るみ准教授が担当いたしました。

講演の部

伊藤舞花(生物学) 株式会社ベネッセコーポレーション 高校生マーケティング営業部

“ワクワク”を信じて開く未来

苦手な数学を克服して理系の道に進み、現在は教育業界で活躍する伊藤さんからは、迷ったときの進路の決め方や理系で身につけた力の活かし方についてお話しいただきました。
伊藤さんは、高校での生物の実験を通して生物学に興味をもちました。しかし数学が大の苦手で、一時は理系に進んでも良いのか悩んだそうです。そのとき「理系に進んだ自分」と「それ以外の道に進んだ自分」を想像してみたところ、生物を学ぶ道を想像したほうがワクワクしたため、理系への進学を決めたそうです。
猛勉強の結果、苦手な数学もカバーすることができ、お茶の水女子大学理学部生物学科へ進学し、同大学大学院にも進学されました。大学ではゼニゴケの二次代謝に関わる酵素の研究に打ち込んだそうです。
卒業後の仕事として教育業界へ進んだのは、これまでの自分を振り返ってみて「“教育の場”でたくさんの方に導き支えてもらったことで、なにより大切な、学ぶ楽しさを得ることができた。今度は自分がたくさんの人の学びの力になりたい。」と考えたからだそうです。
現在のお仕事では、高校生の悩みや要望を調査・分析し、チラシやHP制作などの企画をおこなっているそうです。理系で身につけてきた論理的な思考力やマルチタスク能力、チームで進める力は、仕事のさまざまな場面で役立っているそうです。
最後に進路に悩む中高生のみなさんに向けて、「壁にぶつかったときは初心を思い出してみてください。自分がどうしてやりたいと思ったのか、新鮮な気持ちを思い出すことで、私は気持ちを奮い立たせていました。また、進路に迷ったときは“ちょっとワクワクするほう”を選んでみるのもアリではないでしょうか。悩むことは無駄ではないけど苦しいので、自分の感覚を大事にして、思い切って決断するのも大事だと思います。」という励ましのメッセージをいただきました。


 

柴田紗知子(物理学) 弁理士法人あしたば国際特許事務所 弁理士

理系が活躍する知的財産の仕事

大学院で受けた特許の講義をきっかけに弁理士になり、特許申請や知的財産の調査研究をされてきた柴田さんからは、理系が活躍する知的財産の仕事についてお話しいただきました。
柴田さんは高校で物理・化学を選択し、はじめは化学分野を志望していたそうです。しかし苦手だった物理を克服するため勉強していくうちに、物理や数学の面白さに気づいたそうです。そこで志望分野を変え、お茶の水女子大学理学部物理学科・東京大学大学院へ進学されました。そして大学院で受けた特許の講義で弁理士という仕事を知り、卒業後に特許事務所へ就職し、仕事をしながら国家資格である弁理士資格を取得されました。
特許事務所では、生活雑貨など身近にある製品の知的財産を守るため、意匠、特許などの申請をおこなっているそうです。申請が認められると、その製品の独自の技術・商標・デザインといった発明を独占的に使用することができ、時間とお金をかけて開発した技術やアイデアを守ることができます。特許に関わる仕事では製品の技術を理解することが欠かせないため、多くの理系出身者が活躍されているそうです。また女性も活躍しやすい環境があると感じているそうです。ときには顧客である企業にとって多額の金銭が関わる仕事であるため、理系の知識だけでなく、法律の知識や文章力・表現力・語学力といった幅広い能力が必要だそうです。理系だけでなく、さまざまな分野に興味があり、語学力を活かしたい人は楽しく活躍することができるそうです。
最後に、やりたいことがまだ見つからない中高生とその保護者に向けて「興味のある学問を思う存分学ぶ中で、そのうちやりたいことが見つかるから焦らなくても大丈夫です。理系に進んで身につく論理的な思考はどんな仕事にも役立ちます。親御さんは、お子さんを信じて興味のある学問を思う存分学ばせてあげてください。医歯薬系以外でも理系女性の活躍の場はあるので、応援してあげてください。」とメッセージをいただきました。


 

質疑応答

お二人のご講演の後、質疑応答の時間を設けました。講演中あるいは講演後に、参加者の皆様から挙手またはチャットから質問をお寄せいただきました。今回も対面会場・オンライン双方の参加者から多くの質問があり、ハイブリッド開催ならではのにぎやかな交流ができました。中高生の参加者からは苦手な科目の勉強方法やモチベーションの保ち方についてや、女子大学での学びについての質問がありました。講演者のお二人が一つ一つの質問に丁寧に回答してくださったことで、参加者は将来の進路への不安や疑問を解消するヒントが得られたのではないでしょうか。

懇談会(対面)

閉会の後、対面会場の希望者のみで懇談会を行いました。講演の部よりも少人数での実施となり、より講演者と参加者の距離が近く、進路や勉強方法についてなど、より相談しやすい機会となったのではないでしょうか。ときには会話するような形で盛んなコミュニケーションが行われていました。