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2024年7月28日(日)に、「女子中高生のための第5回グローバル講演会 —サイエンスから世界へ—」をオンラインにて開催いたしました。東京近辺だけでなく、関西圏や中部地方、九州・四国地方など、様々な地域にお住まいの中高生の方々にご参加いただきました。今回の講演会では、研究員としてグローバルに活躍される方々をゲストにお招きし、ご自身の経験や現在のお仕事などに関するお話をしていただきました。モデレーターは、お茶の水女子大学理学部生物学科の植村知博教授が担当いたしました。植村教授は様々な国や地域の研究者の方々と交流し、共同研究を行なっております。

 


一つ目の講演は、清水 優太朗 様ボルドー大学 博士研究員)による『高校生の時に夢見た研究者になり,最近フランスで働きはじめました』です。

中学時代、サッカーに打ち込む傍らでファンタジー小説を筆頭とした読書好きでもあった清水様は、図鑑をきっかけに生物にも興味を持たれました。また、高校3年生には現在の恩師である理化学研究所の一般公開で中野明彦教授(東京大学/理化学研究所を兼任)に出会ったことをきっかけに、自身の目で観察し体験する研究に憧れを抱くようになりました。

大学進学後、人の役に立つ研究を目指して動物系の研究室に所属するも、清水様はマウス解剖とデータ処理に追われる研究生活から楽しさを見出せませんでした。しかし、就職活動と研究室選びに悩む渦中で、再び中野教授を訪問し、高校時代に体感した“ワクワクさ”を取り戻しました。この経験を機に、自身の興味のある分野での研究を極めたいと強く思い、東京大学への大学院進学を志します。そうして中野教授のもとで研究を進め、博士課程を修了したのち、理化学研究所にて博士研究員を務められました。その後、今年3月にフランスに赴き、現在はボルドー大学にて博士研究員として活動されています。

フランスの生活は、日本と比べて様々な違いがある、と清水様は語りました。ワークライフバランスやイベント文化を大切にしたり、活発な議論を交わしたりする点は、日本と大きな差があるとのことです。

最後には、中高生の皆さんに「自分が好きだと思えることを大切にして、積極的に色々な体験を通して自分のことを理解していってください」と、ご自身の経験を踏まえたアドバイスを向けられました。

 


二つ目の講演は、崔 勝媛 様日本たばこ産業株式会社 研究開発員)による『身近な国から考えるグローバルな世界』です。

崔様は韓国で生まれ育ちましたが、大学の学部生の頃、自国とは違う世界を見てみたいと思い、一年休学して海外へと渡りました。バックパックひとつでギリシャとトルコに赴き、何もかも手探りの状態で暮らす生活を送りましたが、“意外となんとかなった”ことに自信を持たれました。大学院の修士課程まで韓国で過ごした後は、日本に渡り東京大学の大学院にて博士課程を修了されました。理化学研究所では研究員として、大学では非常勤講師として働く経験を積んだ後、現在は日本たばこ産業株式会社にて活躍されています。

崔様がこのようなキャリアを歩まれたのも、学生時代の海外旅行の経験が大きいと語ります。韓国から出て、新しい環境に身を置くことで、新たな文化や常識の発見が多々ありました。そういった経験を繰り返すことで、自身が見ている世界を広げ、自己理解を深めていくことができたとのことです。

女性研究者の割合は、日本では2割、韓国では3割程度で、年々増えてはいるものの両国とも他国より低い数値を示しています。女性のキャリア形成において、日本も韓国も、共通した問題意識を有していると考えられています。しかし、崔様の身近には、様々な経験を海外で積まれて働く女性研究者の方々も複数人いらっしゃいます。講演の終盤には、そういった研究者の方々のキャリアの一例や、留学に関する経済的支援についての紹介をしていただきました。

最後に、女子中高生の方々に向けて、「サイエンスとグローバルに興味のある女性は貴重な存在です。ぜひ、自身の興味の赴くままに挑戦してみてください。」とのアドバイスで締め括られました。

 


講演後の質疑応答では、参加者と講演者との積極的なコミュニケーションが図られました。
特に人生の分岐点における心境の変化や、今から学んでおくべき事柄についてなど、グローバルな活躍を視野に入れた将来を意識されている中高生の方々からの質問が多く見られました。

この講演を通じて、中高生の方々の視野が広がったのではないでしょうか。講演中にも挙げられていた通り、百聞は一見に如かず。まずは勇気を出して挑戦してみることが何よりも大切です。様々な経験を積んだ先人と触れ合い、話を聞くことで、新たな可能性に目をむける一助となったかと思われます。