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2024年5月5日(日)に「植物の細胞の中のダイナミックな世界を体感しよう」を開催いたしました。

 

講義(実験の目的)

最初に、講師の伊藤瑛海先生(日本学術振興会特別研究員-RPD(お茶の水女子大学))から本日観察する原形質流動についての説明と、実験の目的についての講義を受けました。中学生の生物の教科書には原形質流動については触れられていませんが、高校の生物の教科書を参考に原形質流動の定義を学びました。さらに、大学の生物の教科書には、「原形質流動は人類最速のスプリンターの速さとほぼ等しい」という内容が書かれていることを踏まえ、これが本当なのかどうかを調べることを実験の目的としました。

講義(材料と方法)

実験材料として使用するオオカナダモについて、説明を受けました。続いて、観察に使用する光学顕微鏡について、実際のパーツを指さししながら、それぞれの部分の名称、役割、使用上の注意点についての説明を受けました。また、使用機器である、マイクロピペットの使用方法について学びました。アシスタントが、参加者の近くで実際に使用する様子をデモンストレーションし、間近で使用方法の説明を受けました。

試料作成と顕微鏡観察

観察に用いるプレパラートを作りました。まずはマイクロピペットを用いて、正確に50マイクロリットルの水を計りとり、プレパラートにのせました。続いて、ピンセットを用いて、オオカナダモの葉をプレパラートにのせ、カバーガラスをかぶせ、プレパラートを完成させました。プレパラートを顕微鏡のステージにのせ、注意深くピントを合わせました。それぞれが個別にアシスタントからピント合わせのコツを教えてもらいました。10倍、40倍と対物レンズの倍率をあげ、オオカナダモの中肋と呼ばれる部位の細胞小器官(葉緑体)の動き(原形質流動)を観察しました。

観察と計測

1目盛り長さがわかっている接眼ミクロメーターを用いて、接眼ミクロメーター10目盛り分を、葉緑体が何秒かけて移動するかを、ストップウォッチを用いて計測を行いました。葉緑体3個分にについて計測を行いました。速度の計算の公式と平均を求める公式を復習し、ワークシートを用いながらそれぞれの葉緑体が流れる速度(マイクロメートル/秒)を計算し、平均値を算出しました。

続いて、求めた原形質流動速度が、細胞小器官が自分と同じサイズ(身長)だった時、どれぐらいの速度に相当するのかを求めました。比例計算を用いて、速度を(メートル/秒)に換算し、100メートルを何秒で移動する速度に相当するのかを計算しました。今回の実験では、自分が走るのと同じぐらいの速度になった人(100mを12~25秒程度)や、人が歩く速度くらいの速度(100mを1分程度)になる参加者が多かったようです。

原形質流動の解説

最後に、原形質流動の速度を決める仕組みについて学びました。原形質流動は、約200年前に見つかった現象であること、植物の原形質流動速度は他の生物にくらべて早いこと、この速さがモータータンパク質と呼ばれるタンパク質の性質や形によって決定されることが分かりつつあること、原形質流動には植物のサイズを決定する役割をもつことがわかってきたことを、大学の細胞生物学の教科書や、最近の学術論文を参照しながら学びました。解説をうけて、今回の実験で得た結果を考察しました(「自分の結果は他のひとの結果とくらべてどうだったか?」「仮説と異なった場合、このような結果を得た理由はなんだろうか?」「新たに浮かんだ疑問は?」「どのような追加実験をすれば、この新たな謎の解明に迫ることができるか?」など)。考察は、「ふせん」に書き、掲示して読み比べることで参加者全員の考えを共有し、学びを深めました。