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2021年8月9日(月・休日)にオンラインにて教員や保護者の方向けの講演会「女子生徒の理系への進路選択を後押しするために」を開催いたしました。オンラインでの開催ということで、全国各地の方々にご参加いただきました。ファシリテーターはお茶の水女子大学 理系女性教育開発共同機構 機構長の加藤美砂子教授が担当いたしました。


最初の講演は、伊藤舞花様(株式会社ベネッセコーポレーション)「理系学生として過ごした日々を振り返って」というテーマでお話しいただきました。昨年度にお茶の水女子大学大学院ライフサイエンス専攻を卒業された伊藤様からは、ご自身が理系に進んだ理由や、理系大学生として過ごした学生生活についてお話しいただきました。サークルやアルバイトなどの学外活動に加え、専門科目の講義や泊りがけでの実習など、理系ならではの学生生活の楽しみについて教えていただきました。理系に進もうと迷っている方の背中を押すメッセージとして「オープンキャンパスや大学主催のイベントに参加することで、目指す大学や学部の具体的な魅力をぜひ見つけてみてください。勉強のモチベーションUPにもつながります。理系に進んだからこそ得られた学生生活の中で、大きく成長することができます。理系分野に興味があるならぜひ挑戦してみてください。」というメッセージをいただきました。

次の講演は、山岸由紀様(お茶の水女子大学 グローバル人材育成・男女共同参画本部 学生・キャリア支援センター特任准教授)「理系女子学生の就活事情とその後のキャリアパス~大学キャリア支援の現場から」というテーマでお話しいただきました。近年の理系の就活事情について、日々学生からのキャリア相談を受ける中で感じた経験やデータをもとにお話しいただきました。特に印象深かったのは、企業が評価する理系学生の強みについてのお話でした。理系が身につける専門性として学生が想像しやすいのは、研究分野や専攻の知識ですが、企業は論理的思考力や仮説検証力といった、理系学生の汎用性の高い能力を評価しているそうです。そのため、理系学生は専攻分野に関わらず大学で培った力を活かせる場がたくさんあるとのことでした。また、理系出身の女性のほうが文系出身の女性に比べて「長く安定して柔軟に働ける」雇用環境を手に入れているというデータをご紹介いただきました。女性活躍を推進する企業も増えてきているため、データサイエンスの基礎をしっかり身につけた女性の活躍の場は一層広がってきているとのことでした。


講演後の総合討論では、マイクを通して参加者やファシリテーターから直接質問が投げかけられ、オンラインではありましたが講演者との活発なやり取りが行われました。討論の一部をご紹介します。

  • データサイエンスや統計学などは文理問わず必修化の流れにあるかと思いますが、文系学部でも学べますか。

―文系学部でもデータサイエンスについて学べる学部はあります。また、お茶の水女子大学の「全学データサイエンス学際プログラム」のように、学部を問わず全ての学生にデータサイエンスの基礎を学ぶ科目群を提供する大学も増えています。データを活用する時代ですので、データサイエンスの基礎力をもつことは大きな強みになると思います。理系学生にはデータサイエンスの基礎力に加えて、論理的思考力などのプラスアルファの力が求められているのではないでしょうか。(山岸様)

  • 理系学生と文系学生の違いについて感じることはありますか。

―仕事で感じるのは、文系出身の方は資料の背景を広く考えて言葉豊かに伝える力があると感じます。それに対して理系出身の方は、資料にある事実からグラフを作ったり、一目で見て分かりやすい資料を作るのが得意なように感じます。膨大な情報や煩雑な問題の本質を見抜き、データなどの根拠を持って論理的に説明する力があるのは、理系で身につく強みだと思います。(伊藤様)

―個人差のほうが大きいとは思いますが、キャリア相談で学生と接するときに感じるのは、文系の学生さんからは細やかな配慮や語彙の豊富さを感じることがあります。理系の学生さんからは、真面目さや実直さを感じます。また、理系の学生さんは、よく知らない人と話すことに苦手意識をもっている人が少し多い気がします。さまざまな人と交流することを楽しいと思えるようになると自分の世界も広がりますし、人間的な成長の機会にもなりますので、できるだけ早いうちから多様な人と話すことが楽しいと思える機会を積極的にもつことをお勧めします。(山岸様)


お二人の講演と総合討論により、理系学生の学生生活や、理系学生が大学での学びを通して身についた力を社会の中でどのように活かしているのかを具体的に知ることができました。教員と保護者の皆様は、高校での学習の後に広がる大学での主体的な学びを理解し、女子生徒が理系に進学することによって拓かれる大きな可能性を実感されたことと思います。教員と保護者の皆様のこの講演会へのご参加が、女子生徒の気持ちに寄り添った理系進路選択の応援につながることを期待しています。