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2021年12月27日(月)にお茶の水女子大学・国際交流留学生プラザにて、女子中学生向けに「第三回 体験型数学セミナー」(午前に第三回,午後に第四回)を開催いたしました。東京および関東近郊から11名の生徒の皆さんにご参加頂きました。セミナーの講師は、お茶の水女子大学・理系女性教育開発共同機構の吉村和也先生が担当いたしました。

セミナーでは、理系女性教育開発共同機構が開発し、学校向けに貸し出している教材「プラレールで数学しよう:発展編(追い越し編)」を使用して、「ダイヤグラム」及び「一次関数」について実験を交えながら学んで頂きました。

私たちがふだん列車を使う際には、「時刻表」を見て自分が乗りたい列車の発着時刻を知ることが出来ます。一方、駅員さんは「ダイヤグラム」という特別な運行表を使って、列車の運行を確認しています。この「ダイヤグラム」には一次関数の考え方が利用されています。
今回のセミナーにおける大きなテーマの一つが、「ダイヤグラム」の作成やプラレールを活用した走行実験を通して、「身近なところで数学が活用されていること」を中学生の皆さんに伝えることでした。

受講者の皆さんが、プラレールを使って、電池で走る2台の列車(速度が速い列車と遅い列車)を走らせました。レールに取り付けてある切り替え機を使ったり、駅で列車を一時停車・発車させたりして、「遅い列車が駅に停車している間に速い列車が遅い列車を追い越す」ことが出来るようになってから、実験を始めました。皆さんに配布したワークブックに実験の結果を書きこんだり、作成したダイヤグラムをグラフ用紙に書き込んだりしながら、セミナーを受けて頂きました。

レールには、端から順にA, B, C, D駅を配置しました。速い列車がA駅から,遅い列車がB駅から発車し、遅い列車が途中のC駅に停車している間に速い列車が遅い列車を追い越し、両車とも同じD駅に(速い列車が1番線、遅い列車が2番線に)終着するように、レールを組みました。速い列車のA~D駅間、遅い列車のB~C駅間とC~D駅間の走行時間をストップウォッチで計測して、速い列車(A駅発)と遅い列車(B駅発)が同時に発車する場合のダイヤグラムを作成しました。

完成したダイヤグラムでは、速い列車の運行状況を表す直線と遅い列車の運行状況を表す直線が、交差しました。その交点から速い列車が遅い列車を追い越す瞬間の時間を読み取りました。ダイヤグラムから予想される「追い越す時間」と実際に走らせた場合の「追い越す時間」が一致するのか、実験をして確かめました。さらに、速い列車が先に発車する場合、遅い列車が先に発車する場合を想定し、それぞれのダイヤグラムを作成しました。遅い列車のC駅での停車時間や、2台の列車の発車時間の差などをよく考えて作成しました。ダイヤグラム作成後、実験をして、実際に追い越す時間が、ダイヤグラムから読み取った時間とほぼ同じになるかどうか確かめました。結果として、同時発車・時間差発車のいずれの場合も、列車はほぼダイヤグラム通りに走りました。また、追い越す時間も「ダイヤグラムから読み取った値」と「実測値」がほぼ同じになりました。

多くの学校では、ふだん数学の授業で実験をすることはないと思います。今回のセミナーを通して、実験をしながら数学を学ぶという新たな体験をして頂きました。学校の数学で習ったことが、今回の列車運行(ダイヤグラム)をはじめとして実際に社会に活用されていることを実感できたのではないでしょうか。今回のセミナーを受講された生徒の皆さんが、今後、数学にさらに興味を持ち、もっと数学を好きになって頂けることを願っています。