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2022年1月9日(日)に、オンラインにて第31回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。今回も引き続きオンラインでの開催ということで、全国各地の多くの方にご参加いただきました。
講演の部は、経済産業省 特許庁 寺﨑遥様、パナソニック株式会社 塚原 知里様にご講演いただきました。
司会進行は、本機構 機構長の加藤美砂子教授が担当いたしました。

講演の部

寺﨑 遥(化学) 経済産業省 特許庁

『リケジョの私をつくった栄養素 ~文系生徒が特許審査官になるまで~』

高校入学時は文系に進もうと考えていた寺﨑さんからは、理系を志すようになったきっかけや、理系公務員である特許審査官のお仕事についてお話しいただきました。寺﨑さんは教師を目指して、高校入学当初は文系に進もうと考えていたそうです。しかし、高校でSSH(スーパーサイエンスハイスクール)課程を履修したところ、化学の面白さに気づいたそうです。特に化学電池の研究にのめりこみ、化学研究者を目指してお茶の水女子大学理学部化学科に進学されました。大学での研究やサークル、アルバイトなど、様々な経験を経て、このころから将来の道に再び悩み始めたそうです。そして本当に自分の力が活かせる仕事は何かと考え抜き、自身の専門性を活かして特許庁で理系公務員として働く道を選択されました。特許庁での業務では、企業などから出願された発明が、特許法に定められた特許の要件を満たすか審査されています。申請のあった発明内容の理解や、先行技術の調査といった審査過程では、理系の専門知識と特許法などの法律の知識の両方が必要なのだそうです。現在寺﨑さんは審査官補ですが、将来は特許審査官として自身の名前でより責任をもって特許審査をし、科学技術の発展を支えていきたいそうです。最後にご自身の進路選択を振り返って、理系進学に関心をもつ中学生の皆さんに向けて『今のあなたと未来のあなたでは、やりたいと思っていることが変わるかもしれません。いろいろなことを経験して自分の可能性を広げて、自分の本当にやりたいことを探してみてください』というメッセージをいただきました。どんなことでもチャンスがあれば一生懸命に取り組んだり、様々な人と話したりすることが、自分の物事の見方や考え方を変えるチャンスになるそうです。

 

塚原 知里(食物栄養学)パナソニック(株)くらし事業本部 くらしアプライアンス社 キッチン空間事業部 調理機器BU 調理器神戸技術部

『好きなことを仕事にするということ』

小さい頃から好きだった「食」に関わる仕事を選択した塚原さんからは、どのように進路選択をしてきたのか、そして現在のお仕事ではこれまでの学びがどのように活きているのかをお話しいただきました。塚原さんは小さい頃から変わらず「食」が好きで、進路を選択するときの軸も常に「食」が中心だったそうです。高校生時代は医療系の職業に興味があったそうですが、その中でも食に関わる管理栄養士の資格を取れる大学を目指すことにしたそうです。そしてお茶の水女子大学生活科学部食物栄養学科に進学され、管理栄養士養成課程を学ぶ中で、やっぱり「食」は楽しいと感じたそうです。そして同大学の博士前期課程に進んだ後、就職について考えた際にも「食を通じて世界中の人々の心身を健康にしたい」という思いを軸に職種を考えたそうです。特に「健康な人をもっと健康にし、健康を維持するはたらきかけをしたい」ということで、幅広い人の日々の食生活に寄り添える調理家電の開発職を志望されたそうです。現在は炊飯器の調理ソフト開発に取り組まれ、市場の声に基づいて科学的に美味しいお米の炊き方が実現できるように追究しているそうです。「おいしさ」も科学的に分析され、論理的なアプローチで日々の美味しい食卓が支えられていることに気づかされました。最後に理系の進学に関心のある参加者に向けて『新しく何かを生み出して、商品に対するお客様の声・世間の反応が聞けるのは、理系に進学して良かったことの1つです。理系の知識は案外生活の身近なところにあります。ぜひこの機会にいろいろなことに興味をもって、本当に自分がやりたいことは何なのか考えてみてください。』とメッセージをいただきました。

 

質疑応答

お二人のご講演の後、質疑応答の時間を設けました。講演中あるいは講演後に、参加者の皆様に質問をチャットに書いていただきました。質問を書いた参加者は、マイクを通じて自分の言葉で講演者に直接質問を投げかけました。今回も参加者から多くの質問があり、オンライン開催でありながら活発な交流ができました。進路選択や勉強方法についての相談、お仕事のやりがいについての質問など、幅広い質問が寄せられました。講演者のお二人が一つ一つの質問に丁寧に回答してくださったことで、参加者は目標達成へのヒントや理系の進路の具体的なイメージをつかんだ時間となったのではないでしょうか。

 

懇談会(ブレイクアウトセッション)

閉会の後、希望者のみで懇談会を行いました。ブレイクアウトセッションのツールを用いて2つの部屋を作り、講演者が1人ずつ部屋に入って、参加者との交流の場を設けました。それぞれの部屋の司会進行は、本学大学院ライフサイエンス専攻修士1年生の大堀智博さんと本学理学部生物学科3年生の池田陽香さんが担当しました。講演の部よりも少人数での実施となり、より講演者と参加者の距離が近く、ときには会話するような形で盛んなコミュニケーションが行われていました。