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2023年8月5日(土)に「陸の植物観察会」を開催しました。
講師は岩崎貴也講師(お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系講師)が担当し、アシスタントとしてお茶の水女子大学理学部生物学科の大学生5人が参加しました。

わたしたちの生活は、米や野菜でできた食事や、多様で豊かな植物が維持している自然など、さまざまな場面で植物に支えられています。今回の観察会では野外の植物を採集して観察・判別するだけでなく、植物が経てきた進化の歴史に注目しながら植物の今のかたちを振り返りました。また、大学の実験機器を使い、採集した植物から遺伝物質の一つであるDNAを抽出する実験にも挑戦しました。

講義とフィールドワーク

最初に岩崎先生から、生物を分類するための基本的な単位である「種」の概念や、種の見分け方についての講義を受けました。種を見分けることは、生物学の研究の基本でもあります。植物のかたちは非常に多様ですが、その中でも特に判別に重要となる葉の特徴(一枚の葉の単位や葉の鋸歯(葉のふちのギザギザ)、葉脈のかたち、葉のつき方など)について学びました。

その後、理学部1号館周辺を歩きながら、植物の観察・採集を行いました。実験室に持ち帰った植物をさらに詳しく観察し、図鑑を使って種を判別しました。目標は1人2種以上の植物を判別することでしたが、参加者のほとんどが2種以上の植物の種を調べることができ、中には4種ほど判別できた人もいました。身近な植物の採集・判別を体験することで、多様な葉の特徴を捉えることができました。

身近な植物が辿ってきた進化の道すじ

次に、岩崎先生から陸上植物の進化に関する講義を受けた後に、自分たちが判別した植物がどのように進化してきたか、そして判別した植物どうしは進化的にどのような関係であるかを調べました。陸上植物は4億数千万年前頃に出現したと言われていますが、わたしたちの身近にいる植物たちはこの長い期間をどのように進化してきたのでしょうか。進化の道すじを枝状の分岐であらわした図のことを系統樹と呼びます。自分たちが判別した植物が系統樹のどこに位置するかを確認し、観察した植物の形態と照らし合わせることで、植物のかたちと進化の関係について考えました。判別した植物を見せながらグループで話し合い、気づいたことを全体に共有しました。「ヤマグワとビワは同じバラ目であるのに、葉のかたちも色も全く違う。」や「ムクロジ科のイロハカエデとウコギ科ヤツデは系統樹上では離れているのに、どちらも分裂葉で葉のかたちも似ている。」などといった発見の共有がありました。

植物からDNAを取り出す

最後に、岩崎先生から植物の細胞の特徴や分子生物学実験の理論についての講義を受けた後に、実際に自分達が採集してきた植物からDNAを取り出す実験を行いました。
植物細胞のDNAは細胞壁、細胞膜、核膜によって厳重に包まれているだけでなく、細胞の中にはDNA以外の物質も多く含まれているため、実験には工夫が必要です。まずは液体窒素と組織破砕機を用いて、くっついている細胞をばらばらにし、細胞壁を破壊しました。次に細胞膜や核膜のような膜構造を壊すことで、膜の内部に含まれるDNAや他の物質を溶液中に放出させます。DNA以外の不純物を取り除くための精製ステップを行ったあと、DNAが含まれていると思われる沈澱を水に溶かしました。

最後に、DNAが存在する時のみ蛍光を発生する試薬を用いて、DNAが抽出できたかどうかを確認しました。

植物細胞は肉眼では見えないため、想像のしにくい実験でしたが、ひとつひとつの手順でやろうとしていることを理解したうえで実験を進めていました。蛍光を確認するまでは成功しているかどうかがわからないためか、強い蛍光が見られてDNAの抽出が成功していた時の喜びはとても大きかったようです。上澄みだけを吸い取るような難しい実験操作にも熱心に取り組みました。

また、実験ではマイクロピペットと呼ばれる微量の液体を測り取る道具を用いて実験を行いました。大学の分子生物学実験では日常的に使う道具ですが、参加者のほとんどにとっては初めて見る道具です。慣れない道具に最初は戸惑っていましたが、簡単な練習をした後にはみんな上手に使いこなせていました。細胞破砕機や遠心分離機、ボルテックス(容器内の液体を撹拌する器具)など、大学の実験機器をたくさん使用できたことも良い経験になったようです。

 

今回の陸の植物観察会では、植物を見分けるための観察力を磨いただけではなく、植物が過ごしてきた時間や歴史を考えながら、植物のかたちに注目することができました。また、植物のDNAを抽出する実験に取り組み、大学で行われている実験を体験することができました。実験が成功した時の嬉しさを感じられた方も多かったのではないでしょうか。