0

2023年10月8日(日)に「第4・5回 海の生き物観察会」を開催いたしました。

講師は、清本正人教授(お茶の水女子大学理学部生物学科教授、湾岸生物教育研究所長)が担当いたしました。アシスタントはお茶の水女子大学大学院ライフサイエンス専攻の大学院生3名が務めました。

講義と観察

初めに清本先生から動物の分類や体の対称性についての講義を受けました。その後、参加者は千葉県館山市の湾岸生物教育研究所からやってきた貝やカニ、ウニやヒトデなどの海洋生物の観察を行いました。

まずは軟体動物である巻貝(アマオブネ、スガイ、イシダタミ)とヒザラガイを観察しました。巻貝の見分け方や、巻貝でも二枚貝でもないヒザラガイについて、実際に手にとってよく見ながら学びました。

次に節足動物であるカニ(ヒライソガニ、オウギガニ)とヤドカリ(ホンヤドカリ、イソヨコバサミ)を観察しました。節足動物の体は、頭部・胸部・腹部の3つに分けることができ、さらに一つの体節に対して一対の付属肢(足)があります。(例えば、昆虫では胸部に3つの体節があるので付属肢は6本。)この体節や付属肢の数の違いが、カニやヤドカリ、エビを分類するときの重要なポイントになります。時にはピンセットを使って触りながら、カニやヤドカリの体の腹側をよく観察して、体節と付属肢はいくつあるか、数えて違いを探しました。ヤドカリは宿である貝殻を半分割られた状態で配られていたため、後ろからつつくと嫌がって宿から出ていく様子を見ることができました。また宿を持たないヤドカリに先ほど取り上げた宿を再度与えると、脚を使って宿を探ったあと、貝殻に入っていく様子が観察できました。

その後、カニへ餌をあげてその様子を観察しました。餌であるプランクトンを与えると、口の付近にある脚のようなものを動かして、餌をかき集めるようにして食べる様子が確認できました。これは顎脚といって餌を集める時に使う器官で、カニには胸部から生えた3対もの顎脚があるということでした。
カニやヤドカリの普段見ることのできない部分や様子を観察することができ、参加者も楽しんでいた様子でした。

 

次に、棘皮動物であるムラサキウニとイトマキヒトデの観察を行いました。棘皮動物はヒトデを見るとわかるように五放射相称の体のつくりをしています。では、体の中はどのようなつくりをしているのでしょうか?
参加者は、実際に自分の手で解剖をしてヒトデとウニの体の中を観察しました。ヒトデとウニを切り開き体の中を観察すると、内臓などの体のつくりが五放射相称になっていることがよくわかりました。「アリストテレスの提灯」と呼ばれる、ウニの口を確認することもできました。

 

実体顕微鏡を使った観察

ここからは実体顕微鏡を使って、海の中のさらに小さな生き物の観察を行いました。

まずは節足動物であるウミホタルの観察です。ウミホタルは発光物質を出して青い光を出す生き物です。ウミホタルをたくさん入れた水槽に電気刺激を与えて発光する様子を参加者全員で見てみました。水槽の中が青く綺麗に光る様子に参加者からは歓声が上がっていました。その後、スポイトを使って自分たちでウミホタルを捕まえ、時計皿の上に乗ったウミホタルの観察を行いました。透明な体のため体の中をじっくり観察することができました。さらに抱卵をしているお母さんウミホタルも配られ、その様子も観察しました。体の中に卵が詰まっている姿を初めて見て、驚いた参加者も多いようでした。

続いてムラサキウニの子どもである稚ウニ、イトマキヒトデの子どもである稚ヒトデの観察をしました。
ウニやヒトデは子どものときは大人とは異なる体のつくりをしていて、昆虫と同様に「変態」をして、先ほど観察した五放射相称のつくりになります。では、幼生のときの対称性はどうなっているのでしょうか。

スクリーンに映し出された映像を見ると、ウニやヒトデの幼生は左右対称のつくりをしていました。その前の講義で「棘皮動物は五放射相称であるのに、左右対称の動物の仲間に分類されているのはなぜか?」という問いが清本先生から出されていましたが、「左右対称な幼生から五放射の成体になるということは、左右対称な祖先から五放射の体に進化したと考えられるから」という答えが、参加者にはよく分かったようでした。

 

3時間と短い時間でしたが、たくさんの海の生き物を観察することができ、参加者は生き物の分類や体のつくりについて理解を深めることができました。時には参加者と保護者の方とで協力しながら解剖や観察を行う様子も見え、皆さん楽しんで取り組まれているようでした。

講義や観察の中で、参加者からは「ヤドカリはどうやって宿を選んでいるのですか?」「この臓器はなんですか?」など、海の生き物の生態や体についてたくさんの質問が挙がりました。

実際の生き物に触れることで普段見ることのできない部分を見ることができ、驚きや疑問を持つとともに、海の生き物についての関心が高まったようでした。