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 2024年11月4日(月・休)に「第47回リケジョ-未来シンポジウム サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。オンライン・対面のハイブリッド開催で、全国の女子中学生、女子高校生、保護者の方にご参加いただきました。今回はお茶の水女子大学で理系の分野を専攻した二人の先輩に、「なぜ理系に興味を持つようになったのか、理系に進学してよかったと思うこと、大学での学びがつなぐ現在の自分」をキーワードにご講演をいただきました。司会進行は、伊藤瑛海さん(日本学術振興会 特別研究員-RPD (お茶の水女子大学))が担当いたしました。

講演の部

牛房 奈菜子 様(人間・環境科学) 横河電機株式会社 マーケティング本部

最初の講演は、『やりたいことの探求』をテーマに牛房奈菜子さんにお話しいただきました。牛房さんはお茶の水女子大学生活科学部人間・環境科学科の出身で、卒業研究では美しい歩き方についての研究に取り組んだそうです。

牛房さんははじめから理系に進学しようと心を決めていたわけではありませんでした。理系に進学する背中を押したのは、学校の先生の「牛房さんは考え方が完全に理系だ。」という言葉だったそうです。リケジョの先輩の中には、はじめから理系進学を決めていた人もいれば、牛房さんのように迷いながら理系に進んだ方も多くいます。文理選択など将来の選択のことを考えると焦る気分になってしまう中高生は多いかもしれません。牛房さんの「焦らなくてよい、答えをその都度探していきましょう。」という言葉は支えになるのではないでしょうか。

理系進学を決意した牛房さんが人間・環境科学科への進学を決めたのは、自分の好きなこと、興味を持っていることは何かを「探索」した結果でした。大学のパンフレットの人間・環境科学科の学生の言葉と自分の興味が合致していたことがきっかけで、進学先を決めたそうです。この「探索」は牛房さんの人生を特徴づけていて、就職活動のときにもたくさんの企業説明会に参加して情報収集を行なったり、自分の人生を振り返って自己分析をしたりしながら将来を考えたそうです。これまでの人生を振り返って自分の興味がどういうところに向いているだろうかと考えることは、将来の方向を決めるにあたって、とても大切です。人生の岐路で大きな決断をするときには、自分自身に立ち返って「探索」をしてみるのが良いかもしれません。

卒業後はメーカーのデザイン部署でデザインリサーチのお仕事をされています。社会人になってから修士課程を修了するなどチャレンジも続けられています。好きなもの、自分の興味を「探索」し、情報収集を通じて世の中を知ることが牛房さんの人生を形作っていることが分かりました。


 

早川 栞 様(生物学)アズビル株式会社 ビルシステムカンパニー 計装本部

次に早川栞さんに『働く大人』をテーマにお話しいただきました。早川さんは小学校から大学院まで女子校で過ごす経験をされています。今回のイベントには女子高校からの参加者もいたので、バックグラウンドが近しく感じられたかもしれません。

早川さんはお茶の水女子大学理学部生物学科、ライフサイエンス専攻生命科学コースの出身で、高校生時代に生物の授業に感銘を受けたことが進学の決め手だったそうです。皆が当たり前に信じていることが実験によって覆ることがあるということを知り、自然科学の面白さに魅了されたとのことでした。また、自分の研究業績が長く残り活用されるという点も、早川さんにとって研究者を目指す理由になったそうです。ピアニストから翻訳者、さらに研究者へと早川さんの夢の変遷を伺っていく中で、興味を持っていることと将来なりたい姿のイメージとを結びつけて考えてみることは、人生の進路選択に欠かせないことだと改めて感じました。

早川さんははじめ薬学部への進学を考えていたそうですが、化学よりも生物に興味があり、お茶の水女子大学理学部生物学科へ進学することになりました。中学生、高校生の皆さんも、理系進学を決断したら、さらにその中の分野を選ぶことになります。一口に理系といっても、生物や物理のように様々な分野が含まれているので、自分が特に興味を持てる領域を探してみることが大切です。

その後早川さんは大学・大学院での学び、研究活動の経験から、結果的に研究者ではなく、理系のメーカーで総合職(技術営業)として勤務することに決めました。大学や大学院で学んでいくうちに、高校生のときに描いていた将来とは違う道に進もうと考えるようになることはよくあります。早川さんの「どの道を選べば正解なのかは分からない。どの道を選んだとしても、選んだ道を正解にしていく努力をしていくことが大事だ。」という言葉は非常に印象的でした。

早川さんは社会人として、上司とコミュニケーションをとるとき、業務の段取りを考えるとき、お客様からの質問の対策をするときに大学で学んだことが役に立ったと感じたそうです。社会に出てからも研究活動や研究室での経験がたくさんのシーンで活きると知ることができ、リケジョのイメージを大学進学のその後にまで膨らませられたと期待します。

質疑応答

講演後の質疑応答の時間には、「物理基礎で躓かないようにするにはどうすればよいか。」、「興味を持っている分野と得意な分野のどちらを優先すればよいか。」などの質問が寄せられました。牛房さん、早川さんお二人とも具体的な経験を踏まえて回答されている姿が印象深かったです。お二人が中学生・高校生のときに似た悩み(物理が苦手だ、など)を抱えていたからこそ、同じような悩みを持つ参加者の気持ちに寄り添ったアドバイスが多く紹介されていました。特に物理分野の苦手の克服についてというトピックに興味を持つ参加者が多かったように見受けられましたが、「友達と教え合いながら取り組んでみよう。」「学校の先生に相談してみよう。」など今回の回答が参考になれば幸いです。

懇談会(対面)

対面での参加者を対象にした懇談会では、講演者のお二人と直接コミュニケーションできるということで「理系の企業は男性が多くてなじめるか不安だ。」「お茶の水女子大学の魅力は。」など質疑応答よりもさらに踏み込んだ内容が多く飛び出しました。NGなしで率直な回答をお伝えできたことで、リケジョのイメージをさらに広げ、深められる場を提供できたのではないかと思います。

 

今回のイベント全体を通じて、理系に進学しようか迷っている女子中高生の背中を少しでも押すことができたら嬉しいです。