2025年8月9日(土)に、第52回リケジョ-未来シンポジウム スペシャル「理工系での学びから未来へ」を開催いたしました。本年はお茶の水女子大学創立150周年の節目の年であり、今回はそれを記念しての第2回目の特別企画になります。本シンポジウムは、オンラインと対面のハイブリッド開催ということで、現地、オンライン共に全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。
講演の部では、株式会社東京大学TLOの浅見唯葉様(数学科卒業生)、お茶の水女子大学生活科学部食物栄養学科 助教の野田響子様(食物栄養学科卒業生)、ダークトレース・ジャパン株式会社の山下暁香様(情報科学科卒業生)にご講演いただきました。
パネルディスカッションでは3名の講演者から理工系で学んでよかったことや、質問へのご回答を中心に伺いました。
講演の部

浅見 唯葉 様(数学) 株式会社東京大学TLO
『“わくわく”を大切に!』
浅見様はお茶の水女子大学理学部数学科を卒業後に、同大学院人間文化創成科学研究科博士前期課程理学専攻数学コースを修了し、現在は株式会社東京大学TLOでライセンスアソシエイトの仕事をされています。
ライセンスアソシエイトとは大学の研究を知的財産として企業で使ってもらうサポートをする仕事で、技術内容を理解した上で、特許に関わる契約書等の事務を行う必要があります。その業務にあたって、数学科で養った力が活きていると感じる場面も多いのだそうです。
このライセンスアソシエイトの仕事は、学生時代の課外活動をきっかけにインターンに参加したことで出会われました。この仕事は発明が生まれる瞬間を見ることができ、そして最新の研究に触れることができる感動があるといいます。
中学までは将来の夢が特になく、薬剤師になろうかと考えていらっしゃいましたが、高校に入ってから、授業や大学の体験授業を通して数学の面白さに目覚め、数学科での進学を決心されます。数学科に進学するにあたっては、「数学科に行っても数学の先生にしかなれない」などと言われることもありましたが、浅見様は数学が好きという気持ちを優先して、サイエンスコミュニケーションの課外活動をはじめとして、自身がわくわくする活動に取り組んだ結果、今の仕事にたどり着くことができた、とおっしゃっていました。

野田 響子 様(食物栄養学) お茶の水女子大学 生活科学部 食物栄養学科 助教
『大学は勉強をするところ』
野田様はお茶の水女子大学生活科学部食物栄養学科を卒業後に、同大学院人間文化創成科学研究科博士課程ライフサイエンス専攻に進学され、博士を修了されました。その後、長崎県工業技術センター研究員を経て、現在はお茶の水女子大学食物栄養学科の助教をされています。
研究テーマは食品の加工・貯蔵中に起こる化学反応、特に糖とアミノ酸などが反応するメイラード反応の機構解明だそうです。メイラード反応の代表例としてはトーストや炒め玉ねぎなどがよく知られており、加熱や時間経過によって香ばしい匂いや美味しそうな色、コクのある味を作り出します。メイラード反応で生成する化合物や、詳細な反応経路を研究されています。
高校生の時にはあまり受験勉強が好きではなく、野田様は勉強そのものが嫌いだと思っていたそうです。しかし、「大学とは勉強をするところだ」というお父様の言葉をきっかけに、学部選択にあたって少しでも興味のある学科を選ぼうと考えた結果、食物栄養学科を志望されたといいます。昔から食べることが好きだったことで勉強が続けられるのではないかと思われたそうです。そうして今では研究者になっていることを考えると、大学選択にあたって何を学びたいかを重視して良かったとおっしゃっていました。

山下 暁香 様(情報科学) ダークトレース・ジャパン株式会社
『理系の知識を活かしてサイバーセキュリティ業界で奮闘中』
山下様はお茶の水女子大学理学部情報科学科を卒業後に、同大学院人間文化創成科学研究科博士課程理学専攻に進学され、博士を修了されました。現在はダークトレース・ジャパン株式会社で働かれています。
ダークトレース・ジャパン株式会社はさまざまなサイバー攻撃からシステムを防御するサービスを提供しており、AIによるサイバー攻撃の感知を強みとしています。既存のセキュリティでは過去の事例をもとにした攻撃しか防ぐことができず、全く新しい手口に対応するためにはアップデートを重ねる必要がありました。それがAIに通常時の挙動を学習させることで、通常とは異なる通信が確認された時に検知ができるのだといいます。
山下様はサイバーセキュリティ要素のある謎解きイベントに学生時代から参加しており、ハッキングへの関心があったといいます。そこで、サイバーセキュリティに携わりたい、英語を使う仕事をしたい、という二軸を持って就職先を探したそうです。現在の仕事ではその希望を叶えて、システムへの侵入を検知するAIモデルの開発に携わっていらっしゃいます。ご自身の経験から鑑みても、理系は就職先が多様で、かつ営業や企画などのいわゆる文系職種にも応募できるという点で将来の選択肢を幅広く取ることができるので、おすすめだとおっしゃっていました。
パネルディスカッション・懇談会
パネルディスカッションでは、質問をもとにパネリストの皆様がそれぞれ丁寧にお答えいただきました。また、ファシリテーターからの質問にもいくつかお答えいただきました。
最後にいたただいた中高生への応援メッセージを紹介します。
浅見さん 「“道しるべ”を頼りに最後は自分で決断を!」
どうすればいいか迷う時には他の人に相談したりすることもあると思いますが、最後には自分で決断しないと後悔します。その決断にあたっての根拠は私の場合はわくわくする気持ちでしたが、好き・嫌いでも良いので、何か自分にとっての核となる価値観、“道しるべ”を持つことが持つことが大切です。
野田さん 「将来の姿を想像してみる」
高校や大学でも志望校に進学した後の自分の姿を想像してほしいです。楽しそうな姿でも、忙しそうにしている姿でも、何かしら想像できると、思い描くほどに将来での実現の可能性が高まるともいうので、想像してみてほしいと思います。
山下さん 「チャレンジする心が力になる」
日常生活でちょっと興味を持ったことや気になることを徹底的に突き詰めていくことで、自分の好きが見つけられると思います。方向性が違かったとしても後から変更することができるので、ひたすら何かにチャレンジして力をつけてほしいです。
終了後の懇談会にも多くの方にご参加いただき、講師の皆様とのお話で盛り上がっていました。

