0

2026年6月14日(日)に「第57回リケジョ-未来シンポジウム サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。オンライン・対面のハイブリッド開催で、全国の女子中学生、女子高校生、保護者の方にご参加いただきました。

はじめに、理系女性育成啓発研究所の加藤美砂子所長から、「やりたいことをやろう-理工系分野を学ぶ-」というタイトルで、日本の理系女性人材の実情や、アンコンシャス・バイアスに惑わされずに自分が面白いと思う分野を専攻すると道は拓けるというメッセージをいただきました。

講演の部では、埼玉県立和光国際高等学校の宮川 瞳様、東日本旅客鉄道株式会社の谷 麻里子様にご講演いただきました。

 

講演の部

宮川 瞳 様(化学)  埼玉県立和光国際高等学校(理科教諭)

『すべての経験を生かせる「先生」という仕事』

宮川様は、お茶の水女子大学理学部で化学を学び、大学院博士前期課程を修了した後、理科教諭をされています。大学および大学院では血中タンパク質に関する研究に取り組み、現在は埼玉県の高等学校で理科教諭として授業や担任業務、学校行事を通して生徒の成長を支えています。

高校時代はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)で学び、実験や科学館訪問などを通して科学への関心を深められました。もともと教員になることが夢であり、「何を教えたいか」を考えた結果、理科教諭を目指して理系進学を決意されました。進学先を選ぶ際には、教育学部で教育を中心に学ぶか、理学部で専門知識を深めるかを検討し、化学を専門的に学べる理学部を選ばれました。オープンキャンパスや体験授業に参加する中で、化学と教育の両方を学べることや少人数教育に魅力を感じ、お茶の水女子大学への進学を決められました。

大学では学部3年生まで幅広い理学の基礎を学び、学部4年生から研究室で専門的な研究に取り組まれました。大学院進学後も研究を続けられましたが、他の職業の選択肢もある中、当初からの目標であった教員を志望し、教員採用試験を受験されました。宮川様は、大学で身につけた専門知識や研究経験が授業に活かせるだけでなく、幅広い学びが教育現場のさまざまな場面で役立つことが教員の魅力だと語っていらっしゃいます。

宮川様はご自身の経験を振り返って、進路選択については、中高生の段階で職業まで明確に決める必要はないと述べていらっしゃいます。大切なのは、学んだことを将来どのように活かしたいかを考えながら分野を選ぶことだと強調されていました。また、大学選びでは学校の特色や教育方針が自分の理想と合っているかを確認することが重要だといいます。さらに、就職や進路に迷ったときはさまざまな経験を積み、多くの選択肢に触れることを勧めていらっしゃいます。他の道と比較することで、自分に合った進路をより確信できるようになるとおっしゃっていました。

 

谷 麻里子 様(人間・環境科学)  東日本旅客鉄道株式会社東京建設プロジェクトマネジメントオフィス品川プロジェクトセンター主任

『「私らしく働く」を見つけるまで』

谷様は、お茶の水女子大学生活科学部人間・環境科学科を卒業後、住宅設備メーカーやベンチャー企業を経て、現在は東日本旅客鉄道株式会社で駅ビルの設計・計画に携わっています。一級建築士として、人々が利用しやすく快適に過ごせる空間づくりを担っていらっしゃいます。

幼少期から家づくりが大好きで、ブロック遊びや住宅番組を通して建築への憧れを育んでこられました。しかし、その夢を実現するまでには多くの挫折がありました。大学受験では建築学科を志望していたものの、数学や物理、化学といった理系科目に苦戦し、志望変更を余儀なくされました。そこで、建築やインテリア、都市デザインなど建築学科と近しい分野を学べるお茶の水女子大学生活科学部人間・環境科学科(当時)へ進学されました。

大学では理系科目に苦労しながらも友人と協力して学びを深め、建築や住環境に関する学習に意欲的に取り組まれました。また、学園祭実行委員として活動し、マップ作成などさまざまな経験を積むことで、人脈や視野を広がったといいます。卒業研究では、要介護者が避難しやすい避難所の配置について研究し、福祉と建築を結び付けた学びを深めました。

就職活動では建築業界を中心に企業研究を進めましたが、業界には多様な職種があり、自分に合った進路を模索しました。新卒で入社した会社では業務内容とのミスマッチを感じ、安定した環境を離れて転職を決意します。その後は大学で学んだユニバーサルデザインや福祉、情報処理の知識を活かせる仕事に出会い、やりたいことに挑戦できる充実した日々を送られました。さらに転職した先で一級建築士受験に必要な実務経験を積み、2022年に念願の一級建築士資格を取得されました。現在は駅ビルの計画・デザインを担当し、「どうすれば多くの人に利用され、快適に過ごしてもらえるか」を考えながら仕事に取り組まれています。夢の実現までに数々の困難や進路変更を経験しましたが、自分のやりたいことを大切にして選択を重ねた結果、今が最も「自分らしく働けている」と晴れやかにおっしゃっていました。

——————————————————
【理系女性育成啓発研究所からの補足】
現在は、お茶の水女子大学に2024年度に開設された共創工学部人間環境工学科(https://www.te.ocha.ac.jp/ug/eng/index.html)で人間環境工学を専門に学ぶことができます。
——————————————————

 

質疑応答

講演後には質疑応答の時間が設けられ、参加した中高生から多くの質問が寄せられました。

理系に関心が持つきっかけとなった本については、『ゾウの時間 ネズミの時間』や『13歳のハローワーク』が挙がりました。前者は、著者の講演会をきっかけに読まれたそうですが、心拍数と寿命の関係について論じられていて面白かったそうです。他にも化学が人類の歴史にどのような影響を与えてきたのかを解説する本など、分野横断的な切り口の本だと読みやすいのでは無いかとおっしゃっていました。『13歳のハローワーク』は自分の興味のある仕事を探し、それが文系か理系かどうかを知る上で役に立ったそうです。

他にも、「理系科目が苦手で、理系に進学してから困ることがあったか?」という問いに対しては、同じく理系科目に苦戦した経験を持つ谷さんが「入学してからは、理系に来る人は理系科目が得意な人が多いので、教えてもらったりして苦しむことはなかった、むしろ、受験の時は周りも受験生だったので教えてもらうことできず、苦しかった」とおっしゃっていました。参加者にとっては、理系科目が苦手でも、好きや興味を大事にして進路選択をする上で、励みになる言葉だったのではないでしょうか。

 

懇談会(対面)

対面での参加者を対象にした懇談会では、講演者のお二人と直接コミュニケーションできるということでさらに質問が寄せられ、和やかな雰囲気で進みました。今回の講演者はやりたいことから逆算して進路を決めたお二人ですので、参加者にとっては自身の将来の夢を踏まえてどのような進路を選ぶべきか、相談することができ、参考になったのではないでしょうか。