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2026年8月23日(日)に「第58回リケジョ-未来シンポジウム サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。オンライン・対面のハイブリッド開催で、全国の女子中学生、女子高校生、保護者の方にご参加いただきました。

はじめに、理系女性育成啓発研究所の加藤美砂子所長から、「やりたいことをやろう-理工系分野を学ぶ-」というタイトルで、日本の理系女性人材の実情や、アンコンシャス・バイアスに惑わされずに自分が面白いと思う分野を専攻すると道は拓けるというメッセージをいただきました。

講演の部では、長谷川香料株式会社の酒井 藍子様、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社の中村智佳子様にご講演いただきました。

 

講演の部

酒井 藍子 様(食物科学) 長谷川香料株式会社 ビジネスソリューション本部 総合研究所 技術研究所

“好きなこと”を学ぶために選んだ道

酒井様は、幼い頃から食べることが好きで、漫画に載っていたレシピをまねして、こっそりお菓子作りをしていたそうです。その際、卵を勝手に使うことをためらって卵を入れずに作ったところ、うまく固まらず、材料の役割を経験的に学ばれたといいます。

高校時代には、文化祭の屋台をすべて回ろうとした際、周囲の友人との熱量の違いに気づいたことをきっかけに、「自分は食べることや、食べ物そのものが好きなのかもしれない」と自覚されたそうです。進路を考える中で、食について学び、将来はお菓子メーカーに就職したいと考え、お茶の水女子大学生活科学部生活環境学科(食物科学講座)へ進学されました。

大学では食品化学や栄養学、調理科学など幅広い分野を学び、研究室では食品化学、特に香料の機能性を専門に研究されました。就職活動では食品メーカーだけでなく、食品に使われる香料を扱う会社にも視野を広げ、現在の会社へ入社されました。講演では、食品のおいしさには味だけでなく香りも大きく関わっていることや、食品香料が「着香」「補香」「強化」「矯正」など、さまざまな役割を担っていることを、身近な飲み物や果物を例に紹介されました。

さらに、香料の研究開発では、目標とする香りの特徴を捉え、必要な香気成分を分析し、組み合わせを何度も調整しながら狙った香りに近づけていくことを説明されました。いちごの香り一つをとっても、フルーティー、サワー、完熟、甘さなど複数の要素から成り、単一の成分だけで「いちご」らしさが生まれるわけではないそうです。また、分析の仕事では、香りの成分や量を明らかにし、調香や製品の品質保証につなげていることも紹介されました。

講演の最後には、高校時代に「食べることが好き」と気づいたことが進路につながったご自身の経験を振り返り、文理選択では「もっと深く知りたいこと」「自分の好きなこと」を考えることが大切だと語られました。「理系」と一口に言っても分野は多様であり、大学での学びが思いがけない仕事につながる可能性もあると、中高生の皆さんへメッセージを送られました。

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【理系女性育成啓発研究所からの補足】
現在は、お茶の水女子大学の生活科学部食物栄養学科
(https://www.hles.ocha.ac.jp/ug/food/)で食物栄養学を専門に学ぶことができます。
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中村 智佳子 様(生物学) アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社 ネクストビバレッジ研究所 第二部 部長

「得意」より「好き」を選んだ -数学が苦手だった私の理系キャリア-

中村様は、お茶の水女子大学理学部生物学科を卒業後、東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻の修士課程を修了し、現在はアサヒグループの研究専門会社で、研究開発チームの部長として活躍していらっしゃいます。中高生の頃は国語や社会が得意で、数学や物理は苦手だったことから、当初は文系に進むイメージを持っていたそうです。しかし、高校で生物を学ぶ中で、すべての生物に共通する仕組みや、身の回りの自然現象を説明できる面白さに惹かれ、生物学への興味を深めていかれました。

大学受験では、生物を学びたいという気持ちを軸に志望校や受験科目を見直し、苦手科目があっても合格できるよう、科目ごとの得点戦略を考えて、お茶の水女子大学に合格されました。大学では生物学の専門講義やさまざまな実験・実習を経験し、研究室配属後は、植物の未知の遺伝子がどのような役割を持つのかを明らかにする研究に取り組まれました。そこで、自分で問いを立て、仮説を考え、実験で確かめ、結果を分析して次の仮説につなげる「仮説検証」の考え方を身につけたといいます。

大学院修了後は、研究成果が商品やサービスとして人々の暮らしに活かされるまでの距離が近い企業研究者の道を選ばれました。入社後はサプリメントや化粧品の機能性研究に携わりました。開発に携わった商品が店頭に並んだときはとても嬉しかったといいます。その後、研究成果を事業につなげる仕事や、研究チームをマネジメントする仕事へと役割を広げていらっしゃいます。企業の研究者の仕事は「実験をする」だけではなく、お客様や社会の課題から問いを見つけ、仮説を立てて検証し、周囲と協力して新しい価値を形にしていく仕事だと紹介されました。

また、研究成果を事業につなげるためには、研究だけでなく、人にわかりやすく伝える力や、チームで話し合う力も不可欠だといいます。国語などの文系科目で培った「相手の話を正確に理解する」「自分の考えを整理する」「相手に合わせて伝える」といった力と、理系で培った仮説を立てデータから論理的に考える力の両方が、現在の仕事に活かされているそうです。研究、商品・サービス開発、営業・事業開発、マーケティング、経営・企画、マネジメントなど、理系で学んだ先には幅広い仕事の選択肢があることも示されました。

中村様は、将来を決めるほど好きなことがすぐに見つからなくてもよいとおっしゃっていました。いろいろなものを見たり、調べたり、人と話したりする中で「もっと知りたい」と思えるものを探し、その思いを手掛かりに進路を考えていくことが大切だといいます。「好き」「面白い」という気持ちは、受験だけでなく、その後の人生のさまざまな場面で踏ん張る力になると締めくくられました。

 

質疑応答

講演後には質疑応答の時間が設けられ、中高生や大学生、保護者の方から多くの質問が寄せられました。香料の調香がどのように最終決定されるのかという質問には、複数の香りの案を作って、得意先とやり取りを重ね、実際の食品に香りを付けながら採用を決めていくことが紹介されました。

また、苦手科目との向き合い方についても多くの質問がありました。中村様は、数学が苦手であること自体は現在も変わらないものの、「達成したいことは何か」を考え、別の方法を探したり、周囲の力を借りたりしながら進んできたとお話しされました。研究でなかなか成果が出ないときには、小さな目標を立てて成功を積み重ね、失敗についても「この方法ではうまくいかないことが分かった」と前向きに捉えているそうです。

学部選択についての質問には、お二人から、大学の研究室情報を調べたり、体験授業に参加したりして、自分が「楽しい」「もっと知りたい」と感じるかを確かめることが勧められました。進路選択では文系・理系という枠だけにとらわれず、自分自身の興味を出発点に、さまざまな経験を重ねることの大切さを学ぶ機会となったのではないでしょうか。

 

懇談会(対面)

対面での参加者を対象にした懇談会では、講演の部よりも少人数での実施となり、講演者と参加者の距離がより近い中で、活発なコミュニケーションが行われていました。
特に、実務において大学での学びがどの程度役立っているのかなど、実際に働いている方からしか聞くことのできない生の声を聞くことができ、参加者にとって今後の進路を考える上で参考になったのではないでしょうか。