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2023年6月11日(日)に、第13回先端科学セミナーを開催いたしました。本セミナーは、オンラインと対面のハイブリッド開催ということで、現地オンライン共に全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。

 

今回は 福澤秀哉 先生(京都大学名誉教授・生命科学研究科研究員)から、『光合成をする小さな生き物の話』というテーマで、光合成や最新の研究について幅広くお話しいただきました。
司会進行は、本研究所 所長の加藤美砂子教授が担当いたしました。

 

最初に微細藻類とはどのような生き物か、またどのように進化してきたかについてお話しいただきました。海や湖の水中には、微細藻類と呼ばれる植物プランクトンが生きています。福澤先生は微細藻類の中でも単細胞で2本のひげ(鞭毛)を用いて泳ぐ、クラミドモナスを用いて研究をされています。クラミドモナスは窒素などの栄養が欠乏すると、栄養の無い状態に耐えるため胞子という形に変化するそうです。単細胞の生き物であっても、栄養があるかないかといった状況に応じて、生き延びるため臨機応変に行動できることに驚きました。

続いて光合成や呼吸について、中学校や高校で学ぶ内容から更に進んだところまで、わかりやすくご説明いただきました。また、光合成に必要なCO2の濃度が低い状態では、植物はより多くのCO2を細胞内に取り込む(輸送する)必要があります。そこで微細藻類のCO2輸送について唱えられた3つの仮説と、最新の研究について写真や動画を交えつつご紹介いただきました。
そのうちの1つである、微細藻類には取り込んだCO2を漏らさないためのバリアがあるという仮説は福澤先生らが証明されたそうです。最先端の研究内容でしたが、わかりやすく噛み砕いてご説明いただきました。

また、これらの研究は特定の機能を失った変異体を調べることで進むそうです。変異体を見つけるために10万個体の微細藻類を調べたというお話を聞いて、福澤先生の研究に対する熱量の大きさに驚きました。
また研究についての、簡単にできそうなことは誰でもやっているが、とことん続けられる人はなかなかいない、続けた先に発見があるというお言葉は印象的かつ説得力のあるものでした。

 

 

質疑応答では対面・オンライン共に多くのご質問が寄せられ、参加者の皆様が講演を通じて研究内容に対して大きな興味・関心を持たれたことを感じました。
質問には福澤先生が様々なお話を交えつつ1つ1つ丁寧にお答えくださいました。参加者の皆様は講演だけでなく、質疑応答の時間を通じても生物の面白さに触れて頂けたことと思います。
また、講演の最後には福澤先生から、面白い研究をしている人が沢山いることや世界の広さを知って欲しいとのお言葉がありました。このセミナーを機に、新たな世界を知ることに対して前向きになった方も多いのではないでしょうか。