2022年6月19日(日)に、ハイブリッド式で第33回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。今回は初めてのハイブリッド開催となり、約2年ぶりに参加者の皆様と直接お会いすることができました。オンラインでも全国各地から多くの方にご参加いただきました。
講演の部は、H.U.フロンティア株式会社 土谷実穂様、ソニーグループ株式会社 森麻紀様にご講演いただきました。
司会進行は、本研究所 所長の加藤美砂子教授が担当いたしました。
講演の部
土谷 実穂(生物学)H.U.フロンティア株式会社 商品・サービス開発課
『自分の好きを磨き、自分の好きを武器にする』
現在は医療機関の血液等を検査する会社で働かれている土屋さんから、理系に興味を持ったきっかけや現在のお仕事などについてお話しいただきました。医療に興味を持った最初のきっかけは5歳の時の入院経験だったそうです。高校生時代にはメンデルの法則の授業で遺伝学の面白さを知り、これまでの経験から「遺伝医療を必要とする患者さんやその家族の役に立ちたい」と思ったそうです。
その後お茶大に「遺伝カウンセラー」という、生まれつき持っている染色体や遺伝子の情報が関係する病気の患者さんや家族を支援する専門職の養成コースができたことを知り、お茶の水女子大学の生物学科に進学されました。生物が大好きだけど実は苦手だった土屋さん。得意ではないけれど好きな生物を学びたい!という熱い気持ちで受験勉強に臨まれていたそうです。入学後は幅広く生物学を学び、大学院では遺伝カウンセリングについて研究されました。大好きな生物学を幅広く学んで研究に没頭できるだけでなく、本を読むだけでは得られない体験や、少人数だからこそ深まった学科の仲間との出会いが土屋さんにとって大きな財産になったといいます。
卒業後は、病院勤務と比べて、より多くの疾患にかかわることができ、様々な現場に関われる企業就職を選ばれました。女性が働きやすく、やりたいことを尊重してくれる環境の中で、今は実施する検査のラインナップを増やす仕事を行われています。
女子中高生の皆さんに向けて、「高校で学んだことは巡り巡っていつか必ず自分の役に立つ」「激動の時代である今だからこそ、今ある職業にこだわらず広い視野で未来を考えてほしい」「英語は必ず必要になるから学生のうちに頑張ってほしい」など、たくさんのメッセージをいただきました。
自分の興味に正直に、そして深く広く学んでいくことが未来の「自分らしさ」につながる――進路を考える学生にとって、自分自身を見つめなおすきっかけになったのではないでしょうか。
森 麻紀(情報科学)ソニーグループ株式会社 R&Dセンター
『私が大切にしていること』
幼い頃からゲームが大好きだった森さん。現在は総合電機メーカーで研究開発を担当されています。小学1年生の時は算数が苦手だったそうですが、そろばん塾に通い始めたことがきっかけで、算数が大好きになったそうです。
高校で進路について悩んだ時には、「なるべく将来の可能性を残そう」と理系コースを選択されました。たまたま手に入れたゲーム機のCG技術と、お茶大のオープンキャンパスでの研究発表に感動した森さんは、お茶の水大学の情報科学科に進学されます。
いざ入ってみると、興味の対象はCGから「ヒューマンインターフェース」に変わっていったそうです。企業のインターンに参加する中、大学院に進学してもっと深く勉強したいという思いが募り、大学院への進学を決意。後にSONYから「新提案」として公式発表されることになる「拡張現実システムの食卓への応用」という研究をしながら、将来は「自分が、人が笑顔になる技術やサービス」を提供したい、自分がワクワクできて感動できる製品を作っている会社に入りたいと思ったそうです。
入社後は専門外のプログラミングやスマートフォンのカメラに関する研究、視線検出技術、顔認識技術などを担当されました。現在は人の振る舞いを検知し作動するシステム技術を開発中とのことです。
そんな森さんには大切にしていることがあるといいます。それは学生時代から今までずっと変わらない「自分と人が笑顔になる技術を作りたい」という想いです。仕事で行き詰まった時の拠り所にもなるそうです。
ご講演の最後には、「自分の進路について悩む時間は人生の中でもなかなかないから、存分に悩んで可能性を見つけてほしい。そして一歩行動してみて。自分の好きや大切なものを見つけるきっかけになるかもしれない。」というお言葉をいただきました。
今だからこそ将来のことを考え、行動次第ではそれを現実にすることができる貴重な学生時代。森さんのメッセージは悩める女子中高生一人一人の心にまっすぐ刺さったことでしょう。
質疑応答
お二人のご講演の後、質疑応答の時間を設けました。オンライン参加者の皆様には、講演中あるいは講演後に質問をチャットに書いていただきました。対面での参加者の皆様には、挙手で直接質問していただきました。今回も参加者から多くの質問があり、オンライン・対面ともに活発な交流ができました。進路選択や大学生活、勉強方法などについて、幅広い質問が寄せられました。講演者のお二人が一つ一つの質問に丁寧に回答してくださったことで、参加者がより自分の未来を深く考えるきっかけになったと思います。
懇談会(対面)
閉会の後、対面での参加者のうち希望者された方と講演者で懇談会を行いました。2つの懇談スペースを設け、講演者は1人ずつ分かれていただき、参加者との交流の場を設けました。今回は対面ということで、進行役を介すことなく、講演者にダイレクトに質問できる環境でした。講演の部よりも少人数での実施となったため講演者と参加者の距離が近く、より細かい質問が飛び交う有意義な時間となりました。