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2023年1月8日(日)に、第36回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。本シンポジウムは、オンラインと対面でのハイブリッド開催ということで、現地オンライン共に全国各地からたくさんの方々にご参加いただきました。

講演の部では、日本電気株式会社 都市インフラソリューション事業部門 西田珠実様、株式会社ニコン次世代プロジェクト本部 百瀬淳美様にご講演いただきました。司会進行は、本研究所 研究員の近藤るみ准教授が担当いたしました。

講演の部

西田 珠実 様(数学) 日本電気株式会社 都市インフラソリューション事業部門

「やってみる」から始める進路検討

西田様はお茶の水女子大学理学部数学科をご卒業後、同大学大学院に進学され、その後教職と迷いながらも、日本電気株式会社 都市インフラソリューション事業部門に就職されました。
中学生時代の得意科目は国語や社会で、必ずしも理系科目ばかりが好きというわけではなかったそうですが、高校の時に数学に関連したミステリー小説をきっかけに数学に特別興味を持ち、数学科に進学することを決められました。一方、教育分野にも興味をお持ちで、教育学部への進学も迷われたと言います。しかしながら最終的に理学部数学科にご進学されたことは、数学について深く学ぶことができたという点で良い選択だったと感じているそうです。
学部生時代にはご専門である数学の勉強に励みつつ、他分野へも広く関心をお持ちで、文理問わず様々な分野を勉強されていたそうです。また、以前から続く教育への関心から教職課程も履修され、将来は数学の学校教員になることを目指して大学院時代には非常勤講師としてのご経歴も積まれました。しかしながら、非常勤講師のお仕事をされるなかで、教員としてご自身の教育現場のみに従事するのではなく、より広い社会を対象として人のために働きたいというお気持ちが強くなり、教職ではなく一般企業への就職を決意されました。
現在は、大学生時代に培った文理を問わない幅広い知識と、非常勤講師のキャリアの中で得たコミュニケーション能力や集団をマネジメントする力を活かして、都市インフラをサポートするお仕事でご活躍されています。

西田様は、理系の強みは何よりも論理的思考や数理能力を養えることであるとおっしゃっていました。学部生・院生時代に行う数々の実験や研究を通して経験する、「仮説を立て、検証を繰り返す」というプロセスは、現在お仕事をされるうえでも主軸となっているそうです。

自分の専門科目だけでなく、幅広い分野に関心を持ち、勉強に励まれた西田様からいただいた、「幅広い分野に目を向けて、チャレンジすることによってさまざまな世界が見えてくる。どんどん色々なことにチャレンジしてほしい」というお言葉は非常に力強いものを感じられました。


 

百瀬 淳美 様(人間・環境科学) 株式会社ニコン次世代プロジェクト本部

興味のあることにチャレンジしよう

百瀬様はお茶の水女子大学生活科学部人間・環境科学科をご卒業後、東京工業大学大学院に進学されました。現在は株式会社ニコン次世代プロジェクト本部で製品開発のお仕事をされています。
子供のころから科学や実験に関心をお持ちで、日頃から科学館や博物館に足を運ばれることも多かったそうです。高2の頃はそのようなご自身の興味関心から迷わず理系を選択されましたが、高3の時、心理学などの文系分野にも関心がわき始め、それまで理系一筋で勉強をされていた百瀬様は受験直前まで大変迷われたといいます。そこで、今すぐに決めてしまうのではなく、選択の余地を残しながら幅広く学ぶことのできる学部を目指したいと考え、お茶の水女子大学生活科学部人間・環境科学科にご進学されたそうです。人間・環境科学科では、人間工学や人類学の授業、建築などについても学ぶことができ、幅広い分野に興味をお持ちであった百瀬様にはぴったりの環境だったそうです。
卒業研究では化学系の研究室にてゲルの研究を行われましたが、大学院ではもともと興味をお持ちだった情報系の研究に挑戦したいと、東京工業大学の大学院にご進学されました。大学院では、ヒトの視覚による認知情報について研究をされたそうです。
このような大学院での研究を活かしたいというお考えから、現在はヒトの視覚に着目した製品の機能開発といったお仕事をされています。製品開発はまさにトライアンドエラーの繰り返しで、それはまさに理系での研究のプロセスによく似ており、そのような点においても理系の利点を感じていらっしゃるそうです。さらに現在は新しい製品の開発に携わるなかで、お客様を訪問したり、ニーズ調査を行ったりと、様々な人に出会えることがご自身にとっての刺激になっているそうです。

百瀬様はご講演を通じて、「今後の進路において、もしも選択を迷ったときは、その時に選択を急がずとも様々な選択肢を選べる方向へ進む」ということの重要性をお話しされていました。ご自身も大学受験時には直前まで迷われたものの、結果的にはその時に決断をせず、ひとまず様々な選択肢のある方向へ進路を決定されたことは非常に良い選択であったと感じているそうです。また、大学、大学院で取り組まれていた研究の内容と、現在のお仕事の内容に関連性が少ない点について振り返り、大学、そして大学院時代の研究が今の仕事と離れているからといってそれが無駄になるのではなく、むしろ幅広い知識や経験があることによって、色々な環境や状況に対応でき、より早く深く考えることができるというアドバンテージにもつながったのではとおっしゃっていました。

最後に、この先進学や就職を控える参加者へ向けて、とりあえず挑戦してみると何とかなることも多いので、自分で納得した進路を選んでほしいという心強いお言葉をいただきました。なかなか自分の希望する進路に向かって一歩を踏み出せないでいる参加者の方にとっては、非常に勇気をもらえるお言葉となったのではないでしょうか。


 

質疑応答

お二人のご講演の後、質疑応答の時間を設けました。講演中あるいは講演後に、参加者の皆様から挙手またはチャットから質問をお寄せいただきました。今回も対面会場・オンライン双方の参加者から多くの質問があり、ハイブリッド開催ならではのにぎやかな交流ができました。中高生の参加者からは、困難なものにチャレンジすることについて、進路決定にあたり重視すべきこと、などなど今後の自身の進路決定にあたって様々な質問が寄せられました。講演者のお二人が一つ一つの質問に丁寧に回答してくださったことで、参加者は将来の進路への不安や疑問を解消するヒントが得られたのではないでしょうか。

懇談会(対面)

閉会の後、対面会場の希望者のみで懇談会を行いました。講演の部よりも少人数での実施となり、より講演者と参加者の距離が近く、進路や勉強方法についてなど、より相談しやすい機会となったのではないでしょうか。ときには会話するような形で盛んなコミュニケーションが行われていました。