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2023年4月30日(日)に、第38回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。本シンポジウムは、オンラインと対面のハイブリッド開催ということで、現地オンライン共に全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。

講演の部では、国立研究開発法人産業技術総合研究所 荒井咲紀様、東京都立戸山高等学校 鹿島由紀様にご講演いただきました。司会進行は、本学 伊藤瑛海特任助教が担当いたしました。

講演の部

荒井 咲紀 様 (生物学) 国立研究開発法人産業技術総合研究所 企画本部大学室

「楽しそう」をやってみたら、次の「楽しそう」が見つかった!

荒井様はお茶の水女子大学理学部生物学科をご卒業後、同大学院を修了し、国立研究開発法人産業技術総合研究所に就職されました。

荒井様の祖父母が家庭菜園をおこなっていた影響で、幼少期から新鮮な野菜が育つ現場を「見て」「食べて」お育ちになりました。野菜の独特の形や旬をもつこと、同じ野菜でも品種で味が違うことなど、さまざまなことを自然と目にし、興味を持つようになりました。また、一つ上にお姉さんがいらっしゃり、大きな影響を受けられたそうです。

高校時代は文系科目が得意だったため文理選択に悩んだそうですが、品種改良に興味を持っていたことや文系を選択したお姉さんとは違う道を歩みたいという気持ちから、理系を選択されました。

大学に入学すると、勉学だけでなくインターンシップなどの学外での活動に参加されたり、文化祭の実行委員会で総務部局長をお務めになったりと、充実した学生生活をお過ごしになりました。

大学生4年生になると、本格的に研究生活が始まり、研究室では植物の二次代謝に関して研究をおこなっていました。自分の裁量でプロジェクトを進めることの楽しさと、科学に貢献できたという充実感から大学院に進学することをお決めになりました。大学院での経験を通して、研究の楽しさと大変さ両方を体験され、研究成果を広く社会に還元したいという思いが強くなりました。また、家庭教師のアルバイトなどを通して、たくさんの人に科学を伝えたいという気持ちが強くなりました。こうした思いから、大学・公的機関・企業との連携の橋渡しを行い、豊かな社会を実現することを目指す産業技術総合研究所への就職をお決めになりました。産業技術総合研究所では研究者ではなく、研究を支える仕事、技術を社会へ送り出す仕事を担われています。

就職されてからは、仮説検証・論理的思考・エビデンスを集めるなど、研究生活が仕事に生かされていると感じることが多くあるそうです。

「一見すると何もつながりのないことでも点と点が繋がることがある。直感でも少しでも楽しそうと感じたら飛び込んでみてください。飛び込んだらその先の世界で、また新しい「楽しそう!」が待っているはずです」荒井様のお言葉で進路選択に悩める心が救われた中高生も多いのではないでしょうか。


 

鹿島 由紀 様 (物理)東京都立戸山高等学校 教諭

興味で決めた進路と仕事

鹿島様はお茶の水女子大学理学部の物理学科をご卒業後、同大学院を修了し、現在、東京都の高等学校教員として勤務されています。

小学生の時から算数が得意で、中学生の頃までは薬剤師を志していらっしゃいました。中学3年生の時に夏休みの課題で空の青さについて研究され、その面白さに夢中になったそうです。当時の担任の先生が理学部卒であったこともあり、理学部を視野に考え始めました。しかし、「理学部に就職先は少ないよ」という先生からの言葉に、「就職と大学での勉強は結びついていないといけないのだろうか?」と疑問をお持ちになりました。

高校1年生の時、お茶の水女子大学の理学部のオープンキャンパスを訪れ、偶然参加した物理学科の説明会で「物理を学んで楽しい人生を」という言葉を受け、それまでは考えていなかった物理学科という選択肢が増えました。受験期には,教育学部または理学部の数学科か,理学部の物理学科か,どちらかにしたいと大変お悩みになりました。出願の時期にも決め切ることができず、数学科と物理学科の両方を受験し、物理学科での合格をなさいました。これを天命だと感じ、数学ではなく物理の道をお進みになりました。

大学では研究や授業のほかに、中学校での教育実習に参加され、教員の仕事の大変さとやりがいを体験なさいました。大学院入試合格後、実習先から時間講師としての誘いを受け、教員として新年度から挑戦することをお決めになりました。

大学院に進学後は、時間講師のせいで研究が進まないと言われるのが悔しく、懸命に研究を進め、論文掲載まで達成なさいました。さらに、時間講師としての経験を通して、理科の楽しさを伝える意味にお気づきになったそうです。

学生生活を終え、最終的には私立高校の教員としてご就職されました。しかし、就職後にいろいろな環境で教育することへの興味を抱くようになり、一つの場所で働き続けることに困難を感じられたそうです。そこで、すぐに東京都の採用試験を受け直し、見事合格され、東京都の教員として働くことになりました。

教員としては工業のエンカレッジスクールである東京都立練馬工業高等学校(現 練馬工科高等学校)で勤務されたのち,現在は東京都立戸山高等学校で勤務されています。勤務する学校によって、就職指導をしたり、医学部志望生への専門的な指導をしたり、指導の内容や1日の時間の過ごし方が異なるそうです。

鹿島様の、「興味を持ったことは全力で。どんな職業に就きたいか、だけでなくどんなふうに働きたいか、どんな人になりたいか。進路選択の正解はない。」というお言葉は大変説得力のあるものでした。


 

質疑応答

お二人の講演後、質疑応答の時間を設けました。対面会場・オンライン双方の参加者から多くのご質問をいただき、充実した時間となりました。中高生の方々からは、理系に進んで女性として苦労したことはあったか、就職先はどのようにして決めたのか、テストの点を上げるにはどうしたら良いか、など幅広い質問が寄せられました。講演者のお二人は、一つ一つの質問を真摯に受け止め、丁寧に回答してくださいました。参加者の皆様は、講演を聞くだけでは得られなかった将来に向けたヒントをたくさん得ることができたのではないでしょうか。