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2023年8月27日(日)に、第40回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。本シンポジウムは、オンラインと対面のハイブリッド開催ということで、現地オンライン共に全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。

講演の部では、株式会社デンソー サーマルシステム品質保証部 保坂玲様、文部科学省 私学部 私学行政課 専門官 (併) 法規係長 古屋桃香様にご講演いただきました。司会進行は、本学 伊藤瑛海特任助教が担当いたしました。

講演の部

保坂 玲 様(物理学) 株式会社デンソー サーマルシステム品質保証部

“選ぶ、選べる”こと

保坂様はお茶の水女子大学 理学部物理学科をご卒業後、同大学院 生活工学共同専攻を修了し、株式会社デンソーに就職されました。

高校時代の保坂様は自分が将来どんな仕事をしたいのかが分からず、進路選択に悩む時期があったそうです。そこで、文理選択では成績が良く得意な科目を専門にすることにし、理系/物理・化学クラスを選択しました。大学受験でも同様に、やりたいことが明確になっていない今、基礎学問であれば後々のつぶしが効くのではないかという理由から物理学科を選択し、お茶の水女子大学 理学部物理学科への入学を決意しました。

大学生活では、特に海外研修に力を入れたそうです。中でも大学2年でアメリカでの研修に参加した際には、学内で選抜されたにも関わらず英語での会話になかなか入れず、悔しい思いをしたことが強く印象に残っていると話されました。それがきっかけで大学3年、大学院博士前期課程1年でも語学研修に積極的にチャレンジし、就職活動でも更なる高みを目指すためにグローバル企業を志望したそうです。

会社ではサーマル事業グループに所属し、主に海外自動車メーカー向けエアコン用コンプレッサを担当しているそうです。当該部署への配属理由は、熱力学という大学での専門が活かせる分野であったこと、開発から製造までの全体像を学びたいという思いがあったことが理由でした。実際、学生時代の得た基礎知識があったことで業務へのアレルギーが出にくい点は感じたそうです。一方で、仕事は1つのことだけをやり続ける訳ではないので、就職後も引き続き勉強を続ける日々だと語っていらっしゃいました。異動を繰り返しながら、自分は何が得意なのか?を見つけていき、興味に合わせたキャリアアップを目指していきたいとのことです。

最後に、中高生のみなさんへと3つのメッセージをいただきました。
「”理系” “文系”という枠組みが一番色濃いのは中高時代。どの進路を選んだとしても、何らかの形で学びは役に立つ。」
「いまの選択により、将来が1つに決定づけられてしまう訳ではない。恐れすぎず、興味があるものを選ぼう。」
「自分の意思を一番大切にし、何が好きか、何に刺激を受けたかで選択をしていこう。」

ご自身の経験について、受験生時代のお話からその先の進路選択までを具体的にお話しいただきました。参加者の皆様も自分自身に投影し、自分ならどうするか?と想像を膨らませながらお話を伺うことができたのではないかと思います。

また、例え現時点でやりたいことが定まっていなくても、「後に選択肢を多く残すことができるような選択をする」ということも一つの方法だとお伝えいただいた点は印象的でした。中高生の中には進路に迷われている方もいらっしゃるかと思います。そういった皆様にも寄り添い、「こういう選び方をすることもできるんだ」と新たな視点を発見させることに繋がったのではないかと思いました。


 

古屋 桃香 様 (心理学)文部科学省 私学部 私学行政課 専門官 (併) 法規係長

悩んだときは「ワクワク」するほうへ

古屋様はお茶の水女子大学 文教育学部人間社会科学科 心理学コースをご卒業後、同大学院 人間文化創成科学研究科 人間発達科学専攻を修了し、文部科学省に入省されました。

実は古屋様は、もともとは”理系”志望だったそうです。高校時代、医学部への憧れから先生に「大学は医学部に進学したい!」と告げるものの、苦手教科である数学の壁が大きく、諦めてしまったとのこと。そこで、医師のなかでも精神科医になりたいという想いを持っていた古屋様は、同じような仕事ができる文系の職業として、カウンセラーを目指すことにし、心理学を学びたいと思うようになったそうです。

一方で、心理学には理系的な素質を求められる側面もあることから、当時心理学コースが存在した本学の人間社会科学科は、文系ながら2次試験で数学の受験が求められました。高校の先生からは似たような学問ができる違う学科も勧められる中、「やりたい学問をとるか、試験科目をとるか」で葛藤があったそうです。

最終的には無事、人間社会科学科への入学を果たしました。しかしながら、大学2年次に専攻を決める際、古屋様に再度数学の大きな壁が立ちはだかることになりました。心理学は、”人の心”という見えないものを見える化しようと試みます。そこで見える化するために、統計という形で数学が必要となるのです。再び壁に直面した古屋様は、一度は心理学コースの選択を諦めようとしました。しかし、数学が得意ではないというだけの理由で本当に諦めてよいのか?やりたいことをやるべきではないのか?という想いを強く感じ、心理学コースの選択を決意したそうです。

その後は、附属幼稚園での教育実習や”人間”への関心の強さをきっかけに、「人の生活を豊かにすることを教育というアプローチから実現したい」という思いを持つようになり、文部科学省への入省を決めました。大学では法律とは全く異なる心理学を学ばれていた古屋様ですが、そういった異なるバックグラウンドを持つ自分が文部科学省に入れば、周囲とは異なる形での貢献ができるのではないかと考えていたそうです。実際に、大学での学びを通して得た統計的な考え方や、エビデンスをもとに検討していく力は仕事でも生かされており、自分の強みにもなっていると語っていらっしゃいました。

「”理系”と”文系”は二者択一ではない。その分け方は受験までで、以降の学びではその点は必ず分かれるものではなく、両者をバランスよく扱えることが大切」
「できるかどうか、ではなくやってみたいことをやる。それは後々の納得感や自分の選択に責任を持つという観点でも大切なこと」

古屋さんのお話を通して、学びを深める上、人生の選択をしていく上で大切なことに気付くことができたのではないでしょうか。

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【理系女性育成啓発研究所からの補足】

現在は、お茶の水女子大学に2018年度に開設された生活科学部心理学科(https://www.hles.ocha.ac.jp/ug/psy/index.html)で心理学を専門に学ぶことができます。

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質疑応答

お二人の講演後、質疑応答の時間を設けました。講演中あるいは講演後に、参加者の皆様から挙手またはチャットから質問をお寄せいただきました。今回も対面会場・オンライン双方の参加者から質問をいただき、ハイブリッド開催ならではのにぎやかな交流ができました。参加者からは、”リケジョ”のイメージに対する意外性の有無、仕事をするにあたり感じる女性ならではの悩みや難しさについてなど、多くの質問が寄せられました。特に後者に関しては活発な議論が生じ、実体験から会社の制度の話までを含む、貴重なお話を伺うことができました。


懇談会(対面)

閉会の後、対面会場の希望者のみで懇談会を行いました。懇談会には講演者2名に加え、現役の学生であるお茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 ライフサイエンス専攻 博士前期課程2年の真家瑞希さんにもご参加いただきました。より近い距離で盛んにコミュニケーションが行われており、参加者の皆様も幅広いトピックスについて相談できるよい機会になったのではないかと思います。