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2024年6月9日(日)に、第45回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。本シンポジウムは、オンラインと対面のハイブリッド開催ということで、現地、オンライン共に全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。

講演の部

小高 茜 様(生命理工学) 東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社

生物専攻からエネルギーフロンティアへ!「好き」と「挑戦」で繋げた道

小高様は大学では生命理工学を学び、その後、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科ライフィサイエンス専攻生命科学コース博士前期課程を修了されました。現在は、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社に勤務されています。

人生における選択では、「好き」の気持ちを大事にすること、やってみようかなと少しでも思えたら挑戦すること、人の話を聞いて柔軟な選択をすること、この3点を大事にされてきたといいます。

・「好き」の気持ちを大事にすること
中学時代に植物の構造に面白さを見出して以降、生物科目に魅了された小高様は、大好きな生物がたくさん学べる環境を求めて、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定高校の受験を選択されました。念願の高校に入学してから学んだ「生物基礎」や「生物」の科目はより専門性が高まり面白い内容ばかりで、高校2年生のときには理系を目指すことを決められました。そうして大学に入学すると、さらに専門性の高い生物の授業に、気分が高揚したといいます。研究室紹介の授業で植物化学研究室の先生の言葉に感銘を受けたことをきっかけに、中学時代に植物に魅せられた初心に戻って、植物の研究をすることを決意されたそうです。
そして大学院でも植物化学の研究ができる場所を求め、お茶の水女子大学の大学院を選択されました。まさに、「好き」の気持ちを大事にして進路を決め、大学や大学院でその専門性を高められる選択をされています。

・やってみようかなと少しでも思えたら挑戦する
小高様は学部2年生のときの成績で学年1位を獲得して、学長賞を受賞されたことがあるそうです。そのときに、学長賞受賞者が対象の、奨学金で行ける海外留学の話を大学からいただいたといいます。中学時代から英語を苦手とされていたため、留学とは無縁だと思っておられたそうで、この話には驚かれたといいます。しかし、せっかく留学のチャンスがあって棒に振るのはもったいないと思い、留学に挑戦されたそうです。その留学では英語資格が必要で、取得するために猛勉強をされました。無事に留学に行くことが叶い、またこの時に英語を頑張って学んだことが、後に大学院の入学試験を受けるときにも大変に役立ったそうです。この経験から、やってみたことが思いもよらぬところで役に立つことがあるとおっしゃっていました。

・人の話を聞いて柔軟な選択をする
学部4年生のときに、所属していた研究室が閉室することとなり、どこの大学院に行けばよいのか迷われていたそうです。そのときにお茶の水女子大学に進学した友人に相談したところ、お茶の水女子大学の植物生理学研究室が合っているのではないか、と教えてもらい、志望先を決めたといいます。
また、就職活動の際にも、理系向け就活サイトで東京ガスから社員座談会の案内をたまたま受け取られたといいます。そこで行ってみたところ、人との繋がりを大切にする社風や、社会的貢献度の高い、人々の生活を支える仕事であることに魅力を感じて、東京ガスを第一志望にされました。そして、現在はそこで働いていらっしゃいます。友人との会話や社員の方との会話など、人の話を聞いて選択してきたことで今の小高様があるのでしょう。

最後に、「人生の選択に正解はありません。もちろん、間違いもありません。不安に思うことはあると思いますが、ご自身を信じ、人と接し、進んでいってください。成功も失敗も無駄なことは1つもなく、全てがかけがえのない経験になります。」と、ご自身の経験を踏まえた熱いメッセージをおくられていました。

 


 

黒澤 静霞 様(化学) 株式会社東レリサーチセンターCMC分析研究部

選択するために大切にしていること

黒澤様はお茶の水女子大学理学部化学科を卒業後、大学院人間文化創成科学研究科理学専攻化学・生物化学コース博士前期課程を修了されました。現在は、株式会社東レリサーチセンターに勤務されています。

黒澤様はお仕事をされている現在でも、幼いころから続けていたバレエを、週に1回ほどレッスンに通って継続されているそうです。バレエを続けられるかが、高校や大学選びに影響を与えるほど、打ち込んでいらっしゃったといいます。

バレエは4歳から習い始め、中学時代には週に3回も千葉から東京にいる先生の所へと通われたそうです。勉強との両立が大変で、レッスンの行き帰りの車内で勉強をされることもあったといいます。
しかし、熱心に取り組んでいたバレエは仕事にしたいわけではなく趣味に留め、大学に進学して就職することを前提に高校選びをされました。この時はまだ、行きたい大学が決まっていなかったため、大学受験でどの大学のどの学部を志望しても勉強できるような環境が整っている高校を選ばれました。

高校では大学受験のために2年間もバレエを休学したため、バレエができない生活はとてもストレスだったそうです。そのため、国公立大学に進学すればバレエを続けても良いというご両親との約束が一番のモチベーションになったといいます。
大学を選ぶ際にも、将来何を仕事にしたいのか決めておらず、選択肢が広くなるかどうか、という点を重視して、理系で、特に化学を選択されました。もともと、小学生のころから毎年自由研究に取り組み化学が身近で好きだったことや、国立大学の理系を志望すれば、試験対策のために国語や英語を含む全教科を勉強できることも決定を後押ししたといいます。

大学、大学院に進学されると、晴れてバレエは週に5回通うことが叶ったそうです。また、学術面においても、論文を読んだり、学会発表をしたりなどの経験を積んだことで苦手だった人前で話すことに慣れ、専門性が磨かれて、今の仕事でも必要とされている能力が培われたといいます。

これまでに、自分が何が好きか、得意か、嫌いか、苦手かということを把握して、バレエや化学など好きで得意なことを継続して専門性を伸ばし、それらを軸として選択することを心がけてきたそうです。
中学、高校では将来の目標が明確ではなくとも、将来的な選択肢が広まりつつ、自分のやりたいことを両立できるように、目の前の課題をきちんと越えると良い方向に進んだといいます。また、選択の場面で知らないからハードルが高く感じることがないように、幅広く知識をつけ、視野を広くしようと意識することも大切だと思ったそうです。

黒澤様の就職活動では、学部4年生のときに参加した学会の企業ブースで「受託分析」という仕事を知り、お客様から依頼を受けて分析業務を行う仕事に関心を持ち、今はまさにその仕事をしているといいます。専門性を伸ばしつつ、視野を広くもつようにしたからこそ、好きなことや得意を活かした今のお仕事にたどり着いたのかもしれませんね。


質疑応答

オンラインと対面の両会場にて、参加者から様々な質問が寄せられました。質問の一部をご紹介します。

・受験勉強で好きな教科に多く時間を使い、苦手な教科はやる気が出ず、バランスよく勉強することができません。お二人は好きな教科と嫌いな教科のバランスはどのようにされていましたか。

小高さん:
私も好きな教科に時間を使いがちなので、お気持ちがよくわかります。生物を勉強している時の2時間はあっという間なのに、苦手な英語を勉強しているときには、5分がとても長く感じられます。
私の場合、大学受験では苦手な英語が伸び悩んだので、英語との向き合い方が掴めるようになってきたのは大学で留学をすることが決まって、それに向けて必要な資格をとるために猛勉強をするようになってからでした。その時は、TOEFLの問題のうち、生物に関する文章を読むようにしたり、英語を1時間やったら生物を1時間やって良いことにしたりするなど、好きなものと関連づけて勉強するようにしました。

黒澤さん:
私はどの科目をどのタイミングで、何分やるかを強制的に決めて取り組むようにしていました。まず、1日のタイムスケジュールのなかで、学校の時間や食事やお風呂の時間を確保した上で、どの時間帯に何時間空いているのかわかるかと思います。その勉強に使える時間の中でどの教科を何分やるのか、好きな教科と苦手な教科の偏りがないように決めて勉強しました。

・大学や大学院で、女性が理系を選択する人が少ないですが、女子大で理系の研究をして良かったと思うことはありますか。

小高さん:
私は他大学からお茶の水女子大学の大学院に進学しました。それこそ男女比が9対1の環境から、女性しかいない環境に来たのですが、研究室の中でのコミュニケーションが活発であったのが、お茶の水女子大学の良いところだと思います。
学部のときにいた所は個人主義的な環境で、あまり他の人から意見をもらえなかったのですが、大学院では研究室の仲間とお互いの意見を聞きながら研究ができて、自分に合っていました。特にデータの見落としがないかなど、細かなところも指摘してもらえたのがありがたかったです。

黒澤さん:
私も意見の言いやすさという点でお茶の水女子大学はよかったかなと思います。普段から学生同士で雑談をしていたのでコミュニケーションがとりやすかったです。そうした日頃の積み重ねもあって、研究室では、研究に関してアドバイスし合いやすく、自分が困った時も相談がしやすい環境だったと思います。


懇談会(対面)

閉会後は、対面会場にて懇談会が設けられました。登壇者のお二方とも丁寧に質問に回答してくださいました。保護者の方とともに参加してくださった方も多く、大変な盛り上がりでした。