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2025年3月23日(日)に第49回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。本シンポジウムは、オンラインと対面のハイブリッド開催ということで、現地、オンライン共に全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。

講演の部では、東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 助教の村山友理様、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構食品研究部門 研究員の石川千秋様にご講演いただきました。

講演の部

村山 友理 様(情報科学) 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 助教

『教えるとは希望を語ること 学ぶとは誠実を胸に刻むこと』

村山様はお茶の水女子大学理学部情報科学科を卒業後、同大学院の博士前期課程・後期課程を経て、東京大学大学院で助教をされています。現在は金融分野に特化した自然言語処理の研究に取り組まれています。

幼い頃から研究者を目指していたわけではなく、理系の科目が得意だったため、理系を選択して、研究室が面白そうと感じたことがきっかけでお茶の水女子大学の情報科学科に進学されました。博士前期課程進学後には博士号を取得したいと思うようになり、そのまま進学を決心されました。博士後期課程では日本学術振興会の研究奨励費を受けて、自然言語処理の研究を継続することができました。

講演では研究内容を紹介していただきました。村山様のご専門の自然言語処理とは、人間のように言葉を操れるコンピュータの実現を目指す研究・技術のことを指します。ChatGPTなどがこの技術を応用した例になり、これらは大規模言語モデルと呼称されます。GPTのような文章生成が可能なAIでは、膨大な文章データを学習することで、「can」や「machines」という単語が出てくる文章には、「think」という単語が共起する可能性が高い、といったことを条件付き確率で予測しています。しかしこの方法では長い文章ほど推定が困難になるため、語の意味は周辺に現れる語彙によって定まるとする分布意味論や、単語の意味をベクトルで表現して、ベクトルの要素値を学習して決定する仕組みを用いることで、予測の精度を上げています。これらの原理によって作られた汎用的なAIは次の単語に何がくるのがふさわしいかを学習して、それに基づいて出力しているため、稀にハルシネーションと呼ばれるもっともらしい嘘や求めている情報と齟齬のある情報を出力する原因になっています。

必要とする情報とAIの出力との齟齬は金融分野においてはより顕著となります。それは金融分野における語の意味の特殊性に起因する問題です。たとえば「tax」「cost」などの表現は金融分野では企業にとってポジティブな意味を持つことがあります。しかし、これらの表現は一般的にはネガティブな意味を持つため、汎用的なAIでは否定的な文章を誤って生成してしまいます。そのため、村山様はこのような現状のAIの限界を踏まえて、金融分野に特化した大規模言語モデルを構築し、正しいアウトプットを生成するための研究をされています。


 

石川 千秋 様(食物栄養学) 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構食品研究部門 研究員

『好きこそ物の上手なれ!』

石川様はお茶の水女子大学生活科学部食物栄養学科を卒業後、同大学院博士前期課程を経て、農研機構に入職されました。食物研究部門で農作物の機能性表示に関わる機能性評価の仕事をされています。この機能性とは、巷で見ることのできる“機能性表示食品”と聞いて想起するのと同様の意味になります。食品中の成分量を調べたり、対照実験などで科学的に効果が確認できるのか調べたりしていらっしゃいます。

つくば市で生まれ育った石川様は親が研究職だったこともあり、理系研究職という進路が身近で、研究所の一般公開に行く機会にも恵まれていたといいます。研究の面白さに気づいたのは、高校生の時の自由研究で陸上競技のタイムを向上させるために動画を使い、自分で昼食を作ってその効果を検証したことがきっかけでした。食べることと運動することを好んでいたため、食について科学的に学びたいと考えて、農学部か栄養学を学ぶことができる大学を志されました。

お茶の水女子大学での学びは人や食についてじっくり学ぶことができ、その経験は今の仕事に生かされているといいます。実習などではカツオを丸々一匹使って料理を作ったり、お粥の米と水の比率をさまざまに試行したり、病院食を作ってみたり、今思うと貴重な体験ができたといいます。他にもOchasというサークルに所属して野菜を育てる活動もしており、農業へより関心を抱くきっかけになりました。

博士前期課程に進んだ時に、就職するか、博士後期課程まで進学するか悩まれたそうです。そのタイミングで農研機構が研究職の採用を募集しており、こうした募集が次はいつ出るかはわからないため、試験採用に応募して、研究経験を積んでから博士課程に戻ってこようと思われました。現在では仕事を続けつつ、お茶の水女子大学の博士後期課程に在籍されています。

最後に、数学よりも国語が得意など、理系科目が得意で理系を志したわけではなかった石川様の経験を振り返られました。それを踏まえて、「科目の得意不得意はもちろんあると思いますが、まずは自分が何を好きか、何をしたいのかを優先して、自分の好きなことを軸に進路を考えるのが一番大事なのではないか」とおっしゃっていました。

質疑応答

オンラインと対面の両会場にて、参加者から様々な質問が寄せられました。質問の一部をご紹介します。

・今まで仕事をしていて嬉しかったことは何ですか。

村山さん
学生が活躍して、そして喜んでいる姿を見るのが嬉しいです。みなさん優秀で、そうした人たちに囲まれて教えつつ教えられたりするのはいい経験になっていると思います。

石川さん
研究してきたことが論文などの形で発表できた時には報われた気持ちになります。また、農研機構では一般公開をしていることがあるのですが、そこで楽しんでいらっしゃる方の姿を見るとやりがいを感じて嬉しいと感じます。

・研究職に興味があるのですが、高校時代の経験で今の職業にも活かされていると思うことはありますか。

村山さん
中学校や高校では将来やりたいことが決まっていなくて、将来的に職には困らないだろうと親からの勧めもあって情報科学科に進学しました。目の前のことをこなしていくことが大事だと思います。

石川さん
高校でスポーツをしていた時に、強豪校がどんな練習をしているのかを調べて実践したことや、強化合宿にスポーツ栄養学の専門の方がいらっしゃって教わったことなどが研究に繋がっているように思います。

・大学卒業後の進路を決断する上で何を重視されましたか。

村山さん
博士前期課程だけでは自分の満足できるところまで辿り着くことができなかったという気持ちがあったので博士後期課程への進学を決めました。情報系は博士後期課程まで行っても企業でも大学でもどちらの進路にも舵を切ることができるので、何とかなると思っていました。やりたいことや興味あることを優先した結果が今なので、そうした気持ちを尊重して選択することが重要なのではないかと思います。

石川さん
やりたいことを優先するようにしました。どんな選択をしても、こっちにすればよかったなど後悔に思うことはあるので、「一番これがやりたい」という気持ちがあると自分の選択に納得感や自信を得られるように思います。近年は転職も多いので、一回選んで合っていなくてもいくらでも再挑戦できると思います。その時の自分の気持ちを最優先に判断しつつ、別のことがやりたいという気持ちが芽生えたらそれも尊重していけばいいと思います。

懇談会(対面)

閉会の後、対面会場の希望者のみで懇談会を行いました。大学という場を実際に経験する,講演者から直接話を聞く,対話するという経験そのものの大切さを共感していただけていると実感しました。