2025年4月27日(日)に、第50回リケジョ-未来シンポジウム スペシャル「理工系での学びから未来へ」を開催いたしました。本年はお茶の水女子大学創立150周年の節目の年であり、今回はそれを記念しての特別企画になります。本シンポジウムは、オンラインと対面のハイブリッド開催ということで、現地、オンライン共に全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。
講演の部では、弁理士法人あしたば国際特許事務所 弁理士の柴田紗知子様(物理学科卒業生)、お茶の水女子大学理学部化学科 助教の黒木菜保子様(化学科卒業生)、株式会社ベネッセコーポレーションの伊藤舞花様(生物学科卒業生)にご講演いただきました。
パネルディスカッションでは3名の講演者から理工系で学んでよかったことや、質問へのご回答を中心に伺いました。
講演の部

柴田 紗知子 様(物理学) 弁理士法人あしたば国際特許事務所 弁理士
『理系が活躍する知的財産の仕事』
柴田さんは、お茶の水女子大学理学部物理学科をご卒業後、東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻で博士前期課程を修了されました。現在は弁理士法人あしたば国際特許事務所にて弁理士と、(一財)知的財産研究教育財団知的財産研究所の研究員としての仕事をされています。
柴田さんは高校で理系に進み、化粧品開発の仕事に興味があったため、理学部か工学部の化学系を受験しようと思い、物理・化学を選択されました。大学受験の時には最初は物理が苦手だったのですが、克服を図った結果、物理の面白さに目覚めて物理学科を志望されました。大学入学後は物理の研究者を目指されていましたが、大学院で研究を進める中で企業などに就職するほうが向いているのではないかと考えたそうです。
弁理士の仕事は理系の知識が必須で、英語力も求められることを知った柴田さんは知的財産の仕事につくことを決意し、特許事務所に就職されました。弁理士として現在の事務所では特許・意匠・商標全てを担当されています。知的財産の仕事では理系の知識はもちろん、法律の知識や文章力、語学力も必要であり、いろいろなことに興味がある人におすすめだといいます。
柴田さんは高校生の時に文系科目も理系科目も飛び抜けて得意や苦手がないことに悩んでいましたが、それが自分の長所だったのだと振り返られていました。自分の高校時代を省みて、やりたいことは学ぶ中で見つかるので、焦らなくていいとおっしゃっていました。また、保護者の方へはお子さんを信じて興味のある学問を学ばせてあげてほしい、医歯薬系以外でも理系女性は活躍していると締めくくられました。

黒木 菜保子 様(化学)お茶の水女子大学理学部化学科 助教
『好きなことをなんでも選んでみる』
黒木さんは、お茶の水女子大学理学部化学科をご卒業後、同大学大学院人間文化創成科学研究科理学専攻の博士後期課程を修了されました。現在お茶の水女子大学理学部化学科の助教をされています。
高校生の頃に“ロボコン”に参加した黒木さんは情報科学科のパンフレットを見たことをきっかけにお茶の水女子大学に興味を持たれたそうです。化学科へ進学されましたが、入学後も機械への関心が強かった黒木さんはシミュレーションを用いて分子のデザインを可視化し、分子の持つ機能を予測する研究を選択されました。情報学と化学の融合的な分野だといいます。自分の好きな世界を興味のままに探究できる楽しさに魅せられて進学した博士後期課程では、イオン液体のCO2吸収量の予測をされました。イオン液体のCO2吸収の研究は気候変動の対策に有効な技術であり、現在も技術の基盤を作るため、日々研究を続けています。
最後に、「いつでも道は変えられるので、好きなことにどんどん挑戦してみましょう。この時に気を付けて欲しいのは好きと楽を履き違えてはいけないということです。困難が伴っても好きでいられることが大事です。また、時には悩むのも大事ですが、最後に決めるのは自分ということを肝に銘じて、自分を信じて本当に興味のあることに逞しく向かっていきましょう」とおっしゃっていました。

伊藤 舞花 様(生物) 株式会社ベネッセコーポレーション
『”ワクワク”を信じて開く未来』
伊藤さんは、お茶の水女子大学理学部生物学科をご卒業後、同大学大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻博士前期課程を修了されました。現在は株式会社ベネッセコーポレーションで働かれています。
幼い頃から生き物が大好きだった伊藤さんは、高校生の時に玉ねぎの表皮細胞を観察する授業で、生き物の美しさ、実験の楽しさを改めて実感し、理系の大学への進学を決意しました。しかし、当時数学が大の苦手だった伊藤さんにとって、大学受験は不安でいっぱいだったそうです。
大学に入学してからは、授業はもちろん、サークルやアルバイトなどで充実した日々を過ごされました。生物学科の実習はとても充実していて、千葉県にある館山臨海実験所で泊まりがけでの実習で、沖まで出て海底をさらい、生き物の観察をしたのもいい思い出だったといいます。植物の中でミクロな世界がどう動いているのかに興味があった伊藤さんは、陸上植物の二次代謝について学べる研究室を選ばれました。修士論文ではゼニゴケを用いて酵素の働きを調べられました。
研究を通じて、仮説を検証して筋道立てる論理的な思考力や、複数の実験を並行するマルチタスクな能力やチームで動く力、学会では発表能力を養われたという伊藤さん。卒業後は子どもたちの進路選択のサポートに携わり、「学ぶ楽しさ」を伝えたいという思いから、教育業界で就職されました。大学で身につけた力に今も支えられていると感じているそうです。「大学で出会った素敵な友人、先生、先輩や後輩と学び合った日々は宝物だった」と振り返られ、ぜひ学びを楽しんで欲しいという言葉が印象的でした。
パネルディスカッション・懇談会
パネルディスカッションでは、質問をもとにパネリストの皆様がそれぞれ丁寧にお答えいただきました。また、ファシリテーターからのお題にもいくつかお答えいただきました。
最後にいたただいた応援メッセージを紹介します。
柴田さん 「好きなことを楽しもう!」
みなさんと同じ年頃の子どもを持つ身として、やりたいスポーツなど本人の意向や楽しめることを尊重しつつ、ちょっとずつ勉強の種を撒いていくことを心がけています。学生のうちは、今は好きなことを全力で楽しむ時期だと思います。
黒木さん 「全部があなたの実になります」
中高生のうちはいろんなことを、何を学んでもいいと思います。そうして経験してきたことがどこかで自分にしかないオリジナリティとして、強みになる日が来ます。全てを糧にする気持ちでいきましょう。
伊藤さん 「Tomorrow is another day」
日本語では「明日は明日の風が吹く」という意味です。今日失敗したとか、嫌なことがあっても目の前のことを恐れずに進めていこう、という気持ちで頑張ってください。
終了後の懇談会にも多くの方にご参加いただき、講師の皆様とのお話で盛り上がっていました。

パネルディスカッションの様子

登壇者からのメッセージ