2025 年 11 月 3 日(⽉・祝)に「第 53 回リケジョ-未来シンポジウム サイエンスの学びから将来の夢へ」を立川市のホテル東京立川エミシアにおいて対⾯開催しました。
最初に、理系⼥性育成啓発研究所の加藤美砂⼦所⻑より、日本では理工系に進む女性がまだ少ない現状をふまえ、「数学が苦手だから」などの理由で将来を狭めないでほしい、自分の“おもしろい”を大切にしてほしい、というメッセージをいただきました。進路選択への前向きな姿勢を促す温かい言葉が印象に残りました。
講演の部では、エームサービス株式会社の川永芙美様、三菱商事ライフサイエンス株式会社の小森絵美様にご講演をいただきました。
講演の部
川永芙美 様(食物栄養学) エームサービス株式会社DX推進部
川永様は、お茶の水女子大学生活科学部食物栄養学科を卒業後、同大学院博士前期課程を経て、エームサービス株式会社に入職されました。講演では、高校時代から現在に至るまでの道のりと、理系の学びがどのようにお仕事へつながっているのかについてお話してくださいました。
高校では野球部のマネージャーをされており、選手を支える“食”に関心をもち、スポーツ栄養への興味が理系進学のきっかけになったとおっしゃっていました。大学では食品科学の研究室で研究に励まれ、加工による大根の成分変化を調べる研究に取り組まれたそうです。実験結果がなかなか思うように出ないこともあったとのことですが、原因を考え、仮説を立て、また試すというサイクルを通して粘り強さや論理的な思考力が身についたと振り返られていました。
エームサービス株式会社では、人事部とDX推進部を経験されています。大学での専門分野と関係がなさそうに見えますが、人事部で課題の本質を考え改善策を探る場面や、DX推進部でアプリ開発に携わる場面などで、研究を通して培った問題解決力やコミュニケーション力が大きく役に立っているとお話しされていました。理系の学びは専門的な知識だけでなく、あらゆる場面で活かされる思考や姿勢を育ててくれるということを実感されているとのことでした。
川永様は、「どんな経験も必ず自分の力になる」「迷ったとしても、自分で選んだ道であることが大切」と伝えてくださいました。高校での部活動や大学での勉強、ボランティアなど、一見すると直接関係がなさそうなことでも、将来の自分を支える経験になるかもしれないという前向きなメッセージが印象に残りました。
小森絵美 様(生物学) 三菱商事ライフサイエンス株式会社
小森絵美様は、お茶の水女子大学理学部生物学科を卒業後、同大学院博士前期課程を修了され、現在は三菱商事ライフサイエンス株式会社で商品開発や品質保証のお仕事をされています。講演では、日頃何気なく口にしている食品が、安心してお店に並ぶまでにどれほど多くの工夫や科学的知識が使われているのかを、実際の経験を交えてお話しくださいました。
商品開発では、美味しさを追求するだけでなく、保存性、安全性、アレルゲン表示など、たくさんの条件を満たした上で製品化されているそうです。例えば、カットフルーツが変色しないように工夫したり、豆腐の水分が味に影響しないよう改善したりと、日常で目にするものにも理系的なアプローチで取り組んでいるとのことです。
進路選択では、「自分の作ったものが店に並ぶ姿を見てみたい」という思いが食品分野を選ぶ一つのきっかけになったとおっしゃっていました。また、医療分野にも興味はあったものの、解剖が苦手であることや得意科目とのバランスを考え、自分に向いている分野として食品や化粧品を選ばれました。オープンキャンパスや学祭、先輩の話を聞くことで進路を決められたそうです。
大学では、他学部の授業への参加、留学生との交流など、興味のあることには積極的に挑戦されたそうです。その経験を通して、人と関わりながらものづくりをする楽しさを見つけられ、現在のお仕事にもつながっているとお話しされていました。
最後に、「気になったことはまずやってみること」「やらずに後悔するより、やってみて後悔するほうがいい」という前向きなメッセージをくださいました。好きなことや興味のあることに目を向け、失敗を恐れずに、とおっしゃっていました。
質疑応答
講演後には質疑応答の時間が設けられ、参加した中高生から多くの質問が寄せられました。「好きなことと苦手なことが両方ある場合、どのように進路を決めたのか」という問いに対し、お二人とも「得意・不得意だけで決めなくていい。興味のあることをまずは試してみることが大切」と答えられていました。また、「就職して良かったと思う瞬間」については、感謝の言葉をもらえたことや、自分の携わった仕事が形になることなどを挙げておられました。大学生活の過ごし方についての質問では、行事や部活動、友人との交流など、学業以外の経験も大切にしてほしいというアドバイスをされていました。お二人がご自身の経験を踏まえて率直に答えてくださり、進路への不安が少し軽くなったように感じました。
懇談会
懇談会では、講演者のお二人と現役大学 2 年生が参加者の質問に率直に答える形で進みました。「苦手科目に行き詰まったときはどうするか」「多摩地域から通えるか」など、具体的な質問が多く寄せられ、和やかな雰囲気の中で意見交換が行われました。講演者のお二人は、自身の経験や学び方、仕事選びの考え方を包み隠さず共有してくださり、参加者は 学ぶことや将来の選択肢について理解を深めることができたと思います。こうして直接質問できる場は、進路の不安や疑問を解消する貴重な機会となりました。参加者が理系進学や自分の興味を前向きに考えるきっかけとなり、少しでも背中を押せたのではないかと思います。今後も、自分の「好き」を大切にして学びや将来を考えてほしいです。







