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2026年1月11日(日)に「第 54回リケジョ-未来シンポジウム サイエンスの学びから将来の夢へ」をZoomにてオンライン開催しました。

最初に、理系⼥性育成啓発研究所の加藤美砂⼦所⻑より、日本では理工系に進む女性がまだ少ない現状をふまえ、「数学が苦手だから」などの理由で将来を狭めないでほしい、自分の“おもしろい”を大切にしてほしい、というメッセージがありました。進路選択への前向きな姿勢を促す温かい言葉が印象に残りました。

講演の部では、Massachusetts General Hospital(MGH)博士研究員の奈良香織様、公認OriHimeパイロットの加地彩様にご講演をいただきました。

講演の部

奈良 香織 様(生物学) Massachusetts General Hospital(MGH)博士研究員

『米国大学院で博士号を取得した今、私が思うこと』

奈良様は、お茶の水女子大学理学部生物学科を卒業後、シカゴのノースウェスタン大学の医学部博士後期課程で博士号を取得され、現在はMassachusetts General Hospital(MGH)で博士研究員をされています。ご講演ではアメリカの大学院を通して得た学びについてお話しくださいました。

奈良様は小学生の頃から理科に興味を持って地元の科学館のイベントなどに参加されており、高校生の頃に生物の授業で質問したのをきっかけに先生から生物部への勧誘を受け、そこを契機として生物への関心が高まり、大学・大学院において生物学を専攻されるようになりました。大学院では炎症性腸疾患における免疫細胞の働きを研究されていました。現在はポスドクをされており、将来的には製薬会社で研究することが目標だといいます。

お茶の水女子大学在学中には、小規模な大学のため、掲示板掲載の留学など、いろんな経験ができるチャンスが多く、それを活かして積極的に語学留学やサイエンスキャンプなどへの参加をされました。卒業後は2年ほど研究補助員などをしながら大学院に進みたいか悩み、その後、アメリカの大学院で博士課程に進学されました。受験にあたって語学スコアはもちろん、アメリカ等の大学院への進学に必要な試験であるGREの受験や、エッセイの提出などを課されて苦労されたといいます。

アメリカの大学院に入ってから得た大きな学びは2つあり、1つ目は「もっと自己主張をしてもいい」ということです。アメリカには“The squeaky wheel gets the grease.”という諺があり、目立つことはいいことだという価値観があるそうです。2つ目は「人と比べず、自分の成長を大事に」ということです。博士課程の場合は学部を卒業してすぐの人もいれば、10年ほどの研究歴と実績を持っている人もいて、スタート地点が人によって異なるので、他者と比べるよりも自分の成長に自信を持つことが大事だと感じたそうです。

進路選択については、好きなこと、得意なことで選んだり、嫌いなものを知ったりして消去法で選ぶのもありだと奈良様はおっしゃっています。「進路の決め方に正解はない」ので、あとからある程度の軌道修正はできるものだと思って、その時の自分が納得できる決断をすることが大事だと伝えてくださいました。

 

加地 彩 様(化学) 公認OriHimeパイロット

『全ては現在に繋がっている』

加地様はお茶の水女子大学理学部化学科を卒業後、同大学院博士後期課程を修了されました。現在は分身ロボットカフェでOriHimeというロボットの操縦をされています。

講演では、挫折と転機についてを主軸に、直接的に専門分野をいかさなくとも今のお仕事をされる上で活きている学びについてお話しいただきました。

加地様は高校生の頃には薬剤師の働く姿に憧れ、また化学式に面白さを感じて化学科を選択されました。大学に進学してから、繊細な実験を細かな計画立てをして行うことはあまり得意ではないと感じていたところ、研究室配属をきっかけに計算化学に出会われました。金属の構造・理論の解析を専門とされていて、博士課程では水素吸蔵、つまりは水素を貯めることができる金属材料の設計を行なわれました。

就職先では研究内容に関連した水素燃料電池の設計に従事することが決まり、今後も研究者として働いていこうと思っていた矢先、大きな挫折を経験されました。コロナの後遺症と元々の持病によって寝たきりになってしまい、退職を余儀なくされたのです。社会との繋がりが希薄になったことで孤独感に強く苛まれ、加地様は再び働く決意をされました。しかし、身体的な不自由さや日によって変動する体調から、出勤前提での働き方は難しいと感じていました。そこで加地様は自身の状況に合った仕事先としてOriHimeパイロットの仕事を見つけ、自宅にいながら、自身の分身となるロボットを操縦して接客を行うようになりました。勤務先のカフェには海外からのお客さんが多く来店し、交流する中で研究を通じて培った英語力や、経験、専門知識が役立っていると感じる場面も多いそうです。

最後に、「経験は、必ず未来のどこかで繋がる」というメッセージをくださいました。今は一つ一つの経験がどう未来に繋がっていくかはわからなくても、将来、何かに繋がると信じて今という瞬間を自分らしくいてほしい、とおっしゃっていました。

質疑応答

講演後には質疑応答の時間が設けられ、参加した中高生から多くの質問が寄せられました。

「課題研究を学校で行なっているが、お二人の研究の中で大切にしていることはなにか」という問いに対して、奈良様は「研究はうまく行かないことが9割。うまくいかなくてもそれは結果の一つに過ぎないので、そういう結果が出た、ということをポジティブに捉えてほしい」とおっしゃっており、加地様は「研究とは試行錯誤を重ねてデータを得ていく営みなので、失敗しても一つの結果として捉えて、なぜうまくいかなかったのかを考察することを大切にしてほしい」とおっしゃっていました。

また、「中高時代にやり残したことはあるか」という問いに対しては、奈良様は「中高時代は勉強しないといけないと思って部活動には本格的に参加せず、たまにお手伝いをする程度だった。本気で打ち込んでもよかったかもしれない」と答えられており、加地様は「部活動もガッツリやっていたので、大学に進学してからもっと勉強しておけばよかった、と思う場面があった」とそれぞれに後悔があるようでした。お二人がご自身の経験を踏まえて率直に答えてくださり、中高生のうちに何かするべきなのかという現状の不安に応える内容だったのではないかと思います。