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2021年5月16日(日)にオンラインにて第11回先端科学セミナーを開催いたしました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、今回も引き続きオンラインでの開催となり、全国各地の沢山の方々にご参加いただきました。

今回は「海にいこうよ -サイエンスの宝庫へ-」というテーマで、海の近くの実験所で研究をしている、二人の先生にご講演いただきました。講演後の質疑応答では、参加者はマイクを通して自分の言葉で講演者に直接質問を投げかけました。対面式のときと同様に講演者と質問者との間で活発なやりとりが行われました。

最初の講演は、柴小菊先生(筑波大学下田臨海実験センター 助教)「海の中のミクロの世界 - 鞭毛と繊毛」というテーマでお話しいただきました。先生の研究されている鞭毛と繊毛は細胞表面にある微細な毛で、鞭打つように運動することで、生物は移動や水流をつくることに利用しています。私たち人間の気管や腎臓、脳などにも繊毛は存在し、異物の排除や体のはたらきを維持することに役立っているそうです。目に見えないミクロな世界のお話しでしたが、さまざまな海の生き物の鞭毛・繊毛運動の様子を動画や顕微鏡写真で見せていただいたので、まるで自分の目で見ているかのように感じました。最後に先生の研究の場である下田臨海実験センターを案内していただきました。オンラインならではの臨場感あふれる中継で、最先端の研究が生まれる場所を身近に感じることができました。

次の講演は、清本正人先生(お茶の水女子大学 湾岸生物教育研究センター 教授)で「北限域の造礁サンゴとウニの発生生物学」というテーマでお話しいただきました。まず、サンゴの北限域である千葉県館山市の海の特徴について教えていただき、さらに十数年にわたるサンゴ礁の調査についてお話しいただきました。海水温の変化によって、数年という短い期間でサンゴ礁や海藻類など海の生き物の様子が大きく変化していることに驚きました。次に、最先端の遺伝子編集技術であるCRISPR/Cas9をウニに使った世界初の研究についてお話しいただきました。CRISPR/Cas9を受精卵に導入することでウニの色素をつくる酵素を壊し、色素をもたないウニを作り出すことに成功したそうです。ウニは「発生」などのモデル動物として研究されてきましたが、CRISPR/Cas9を使った遺伝子編集が可能になったことで、今後さらに研究が進んでいくことが期待されるそうです。

お二人の先生から海にいる多様な生き物を沢山紹介していただき、海をより身近に感じることができました。また、海の生き物の研究から、多くの重要な発見が生まれていることを知ることができました。講演後の質疑応答では、参加者から生き物の仕組みがどのように生き物自身に役立っているのかという質問が多く寄せられ、最先端の研究のお話からさらに海の生き物への興味を深めていたようでした。