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2022年5月15日(日)に第12回先端科学セミナーを開催いたしました。新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえ、今回は対面とオンラインでの初のハイブリッド同時開催となり、臨場感ある中で沢山の方々にご参加いただきました。

今回は「おもしろい生き物の話」というテーマで、私たちが普段あまり耳にしたことがないようなユニークな生き物の研究をされている、二人の先生にご講演いただきました。司会進行は、本研究所 所長の加藤美砂子教授が担当いたしました。
講演後の質疑応答では、対面参加者もオンライン参加者も自分の言葉で講演者に直接質問を投げかけ、講演者と質問者との間で活発なやりとりが行われました。

 

最初の講演は、山中 明 先生(山口大学大学院 創成科学研究科(理学系) 教授)「蝶々の衣替え & 蝶々を襲う小さな虫」というテーマでお話しいただきました。
昆虫は脱皮と変態によって形を変えながら成長していきます。結紮(けっさつ)実験などによって、昆虫ホルモンがどこから分泌され、どのように脱皮と変態を制御しているのかが分かってきたそうです。また、蝶の翅(はね)の色にもホルモンは影響しています。アゲハチョウなどは幼虫が過ごした季節によって「季節型」が決まり、翅の色や鱗粉が異なるそうです。異なる環境に適応するための調節がホルモンによって厳密におこなわれ、同じ種であっても見た目が異なることに驚きました。次に、チョウの幼虫に寄生する昆虫についてお話しいただきました。チョウの免疫系をかいくぐり寄生を成功させるお話や、研究の中で同じチョウに寄生する別の新しい寄生昆虫を見つけたお話が印象的でした。昆虫は私たちの身近にいる生き物ですが、名前も生態もまだまだ未知のことが多くあるのだと感じました。

 

次の講演は、田川 訓史 先生(広島大学大学院 統合生命科学研究科附属臨海実験所 准教授)で「海の珍しい動物ギボシムシやムチョウウズムシ」というテーマでお話しいただきました。
田川先生が研究されているのは、海の中に生息するギボシムシや無腸動物です。私たちヒトやなじみ深い生き物のほとんどは脊索動物門に分類されますが、ギボシムシは脊索(セキサク)動物門に最も近い半索動物門に分類されるそうです。そしてギボシムシのゲノム解読から、脊索動物門を含む新口動物の中で、鰓の発生に重要な遺伝子が保存されていることが分かったそうです。次に、見た目も名前もプラナリア(ウズムシ)と似ている無腸動物についてお話しいただきました。無腸動物は名前の通り腸が無いそうですが、プラナリアと同じく全能性の幹細胞を全身にもっているため、からだを再生する能力があるそうです。ユニークな生き物についての研究が、私たちヒトや身近な動物の進化、そして医療への応用につながる再生能力の研究と結びつくことに驚きました。

 

お二人の先生から、まだまだ知られていない多様な生き物を紹介していただき、生き物や科学への好奇心が膨らみました。対面会場では蝶のサナギやムチョウウズムシの観察ができ、参加者は新鮮な発見があったようでした。講演後の質疑応答では、参加者から生き物の生態や発生の仕組みについてなど多くの質問が寄せられ、最先端の研究のお話からさらにユニークな生き物への興味を深めていたようでした。