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2021年2月21日(日)に、オンラインにて第27回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。今回も引き続きオンラインでの開催ということで、全国各地の方々にご参加いただきました。

講演の部は、花王株式会社 柳本彩様、株式会社日立製作所 中條佑美様にご講演いただきました。

司会進行は、本機構副機構長の加藤美砂子教授が担当いたしました。

講演の部

柳本彩様(食物栄養学) 花王株式会社 基盤研究セクター 生物科学研究所

『迷ったときのヒント』

柳本様からは自身のご経験を踏まえた、迷ったときのヒントを5つ教えていただきました。1つ目は「掛け算の力」。高校生時代、美術部員の中で唯一の理系選択者だった柳本様は、理系クラスの学校行事で絵を描くことを頼まれて活躍できたそうです。そのご経験から、自分の特徴や強みを2つ掛け合わせると武器になるということを教えていただきました。自分は何が得意なのだろうと悩まれている学生さんにとって、自分の武器を見つける良いきっかけとなったのではないでしょうか。2つ目は「無条件に信頼できる人を見つける」。受験生のとき、模試の結果について相談すると背中を押してくれたお母様の存在があったから、お茶大の受験をチャレンジできたとおっしゃっていました。家族でも友人でも、相談した時になんでも受け止めてくれる存在を見つけ、チャレンジできる環境を作ってほしいという学生さんへのメッセージでした。3つ目は「世界を広げる」。大学での指導教員の先生や就職活動で出会った人々と話をする中で、世界が白黒では決まらないという奥深さを知ることができたそうです。様々な人との出会いによって自分自身についても深く知ることができたとおっしゃっていました。4つ目は「大切なのは自己決定」。今までの人生を振り返ってみると、人から勧められて始めたことは続かず、自分から選んでやったことは楽しく取り組めたとおっしゃっていました。そこから、選んだ道を最適にするのは自分自身であり、自分の選択に自信を持つことの大切さを教えていただきました。最後の5つ目は花王株式会社の創業者の言葉である「天佑は道を正して待つべし」。自分が正しいと思う生き方をしていれば、運はついてくるという思いが込められているそうです。これからの様々な選択の場面においても、自分の選択に誇りを持ってほしいという学生さんへのメッセージでした。その他、幼少時代から現在に至るまでの考えや大学生と社会人それぞれの研究内容など、詳細に教えていただきました。冒頭で『10年後の自分を想像しながら話を聞いてください』と柳本様がおっしゃっていたように、参加者の皆さんもそれぞれの10年後を想像し、これからの人生を深く考える時間になったのではないかと思います。

 

中條佑美様(物質生物科学) 株式会社日立製作所 社会システム事業部

『私の理系散歩』

大学生時代は化学、大学院生時代は生物を専攻され、現在は情報の分野でご活躍の中條様からは、興味の向くままに理系の分野を散歩してきたご経験についてお話いただきました。高校時代は得意科目や不得意科目がなかったために、家族や周りの人を参考にして理系選択されたそうです。大学時代は化学と生物の融合学科で学ぶうちに、遺伝学の講義をきっかけに遺伝子や進化に興味を持ち始め、分子生物学の研究室を選ばれました。このとき自分の興味と学びたいことが一致し、初めて自分の思いから進路選択ができたというお言葉が大変印象的でした。大学の研究室ではDNAの複製についてのご研究をされ、大学院ではより一層ダイレクトに生き物の進化について学びたいという思いからお茶大の遺伝学研究室に進学されました。そして現在はシステムエンジニアの立場から、業務システムの開発管理に携わられております。今までの理系散歩を振り返ってみると、一見大学での学びと仕事内容が直接関わっていないように思えるかもしれないが、以下の2つの学びが現在に活きていると教えていただきました。1つ目はプロジェクトの進め方。仕事で業務を進めるために大切なPDCAサイクルの考え方は、計画と仮説を立てて検証し結果を考察するという研究のプロセスと同じであるそうです。2つ目は相手に分かりやすく伝える力。大学で日々実験データを可視化したり学会で発表したりしたご経験ゆえ、仕事でも物事やデータを分かりやすく相手に伝えることができているそうです。
最後に、くねくねと歩んできた理系散歩によって理系の世界の広さを知ることができたとおっしゃっていました。理系の世界は生物、化学、物理、地学という単独の科目ではなく互いに交わっている学問であるという気づきは、様々な分野に携われた中條様ゆえのメッセージだと感じました。やりたいことが1つに定まっていない学生さんにとって、興味を惹かれるままに選択することによって行く先々で面白いことに出会えるという中條様のご経験は大変勇気づけられるものだったのではないでしょうか。

 


お二人のご講演の後、質疑応答の時間を設けました。講演中あるいは講演後に、参加者の皆様に質問をチャットに書いていただきました。質問を書いた参加者は、マイクを通じて自分の言葉で講演者に直接質問を投げかけました。ビデオをオンにして講演者とお話しする中高生も多く、大変活発な交流の時間となりました。鹿児島県の高校の教室からも、複数の高校生にご参加いただき、質疑応答を行いました。今回は理系科目の勉強法や大学での研究生活の様子についての質問が多く、お二人には1つ1つの質問に丁寧にお答えいただきました。

 

懇談会(ブレイクアウトセッション)

閉会の後、希望者のみで懇談会を行いました。ブレイクアウトセッションのツールを用いて2つの部屋を作り、講演者が1人ずつ部屋に入って、参加者との交流の場を設けました。それぞれの部屋の司会進行は、本学理学部生物学科2年生の池田陽香さんと本学大学院ライフサイエンス専攻修士1年生の永田榛花さんが担当しました。講演の部よりも少人数での実施となり、より講演者と参加者の距離が近く、盛んなコミュニケーションが行われていました。