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2021年3月28日(日)に、オンラインにて第28回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。今回も引き続きオンラインでの開催ということで、全国各地の方々にご参加いただきました。

講演の部は、株式会社ブリヂストン 中島智美様、キリンホールディングス株式会社 辻有万里様にご講演いただきました。

司会進行は、本機構副機構長の加藤美砂子教授が担当いたしました。

講演の部

中島智美様(人間・環境科学)株式会社 ブリヂストン

『やりたいことってなんだろう?』

自分が「やりたいこと」について思い悩み、現在も「やりたいこと」について考え続けておられるという中島さんからは、決断の考え方のポイントを教えていただきました。中島さんの初めの決断は中学生の時の部活動についてでした。ここでは仮入部期間にたくさんの部活を経験したり、周囲に悩みを共有したりすることで、ハンドベルという自分が興味を持つものを見つけることができたそうです。『情報収集』のためにまずは行動を起こすこと、そして周囲の人と関わる中で得た情報を活用することが大切だと教えていただきました。次の決断は高校生時の文理選択や大学選びでした。ここでも中島さんの強みである『情報収集』を活かして、積極的にオープンキャンパスに参加し、研究室の話を聞かれていたそうです。得意な化学や興味がある地学について、大学ではより深く学びたいという思いから理系を選択されますが、具体的なやりたいことは決められなかったそうです。そこで、やりたいことが決められないからこそ、広範な学びを得たいと考え、お茶の水女子大学の生活科学部に進学されます。大学では、身近な科学について自分の手を動かして実験したいという思いから、化学系の材料物性研究室に所属されました。研究活動での教授との議論を通し、多角的に物事を捉え、PDCAサイクルを回す姿勢を身につけられることができたとおっしゃっていました。大学院ではかねがね興味を抱いていた地学(気象学や台風について)を学びたいと考えた中島さんは、ここでも『情報収集』を発揮して他大学の研究室や講演会に積極的に参加されます。お茶の水女子大学大学院か他大学の大学院か進学先を迷われたそうですが、最終的にはお茶の水女子大学大学院の同研究室で修士号を取得されます。ここでは『自分で納得して決めること』の大切さを教えていただきました。情報収集をした上で最後は自分で決断をすることで、現在も進学先について後悔をすることはないというお言葉が大変印象的でした。そして現在は製品設計というお仕事をされていらっしゃいますが、自分の興味があるものについての勉強は継続され、気象予報士の資格取得を目指しておられるそうです。今回の中島さんのお話を通して、自分が「やりたいこと」について思い悩みながらも『情報収集』をすることで視野を広げ、興味が湧くものに向けて行動を起こし続ける姿勢に感銘を受けました。「やりたいこと」が明確でなくても自分に合うものや興味を大切に突き進んでいくことで、後悔なく進路を決断なさってきた中島さんのご経験は、「やりたいこと」が見つからなくて悩んでいる中高生の方々にとって考えるヒントになったのではないでしょうか。

 

辻有万里様(情報科学)キリンホールディングス株式会社 経理部

『数学の力で社会貢献』

幼い頃から数学パズルが好きで、パズルをすることが放課後の楽しみだったという辻さんは、得意な数学を極めたいと考え、理系を選択されます。お茶の水女子大学大学院にて数学を専攻され、数値化が難しい音楽コンテストなどの印象評価に組み合わせの考えを活用し、公平な評価ができることを目指して組み合わせ理論について研究をされていました。研究活動を通して、自分の得意不得意に囚われずに、視野を広げて考える力を身につけることができたとおっしゃっていました。そのような力を得られたことで、社会人としての準備ができたそうです。大学院1年生の就職活動時には、自分が社会に対してできることは数学以外にないと考え、会計の資格をとるべく専門学校との二足のわらじ生活を始められます。自分の将来を見据え自主的にアクションを起こす姿勢や、夢に向かって困難を惜しまない姿勢に辻さんらしさを感じました。会計を学ぶ中で、会計の面白さにハマり、数学の武器を活かした経理職を志されます。現在は経理部にて、数学に対する感性や数字データを扱う辻さんの能力を活かし、会社の予算に対する分析や税務を担われているそうです。経理部の前は営業を担当されていたそうですが、営業職においても商品についてお客様にプレゼンする際に数字データを扱うため、理系のバックグラウンドを活かすことができたとおっしゃっていました。営業はいわゆる文系職というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、辻さんのご経験から、文系職でも理系だからこそ活躍できる場面があるのだと教えていただきました。最後に、参加者の方々へ文理選択のヒントとなるお言葉をいただきました。それは、「文理選択で悩んだら、とりあえず理系に進んでみたらどうですか?ただ、社会人にとって文系理系は重要なことではないので、社会への入り口である文理選択にこだわりすぎず、自分の輝ける場所を見つけてください!」というメッセージでした。ご自身の好きな数学を極めたことで理系だからこその強みを手に入れ、その強みを活かして社会で活躍されている辻さんらしいお言葉だと感じました。また、文系だから理系だからという括りではなく、学生時代に培った自分の強みを社会にどのように貢献していくかが社会人にとっては大切なことなのだと教えていただきました。

 


お二人のご講演の後、質疑応答の時間を設けました。講演中あるいは講演後に、参加者の皆様に質問をチャットに書いていただきました。質問を書いた参加者は、マイクを通じて自分の言葉で講演者に直接質問を投げかけました。一部の質問者は講演者と顔を見合わせる形でお話されており、オンライン開催でありながら双方の活発な交流が実施できた時間となりました。今回はご講演の中にあった進路選択を考えるポイントについての質問が多くありました。お二人が1つ1つの質問に丁寧に回答してくださったため、質疑応答の時間が参加者の方々の将来を拓くヒントになっていたと感じました。

 

懇談会(ブレイクアウトセッション)

閉会の後、希望者のみで懇談会を行いました。ブレイクアウトセッションのツールを用いて2つの部屋を作り、講演者が1人ずつ部屋に入って、参加者との交流の場を設けました。それぞれの部屋の司会進行は、本学理学部生物学科2年生の池田陽香さんと本学大学院ライフサイエンス専攻修士1年生の永田榛花さんが担当しました。講演の部よりも少人数での実施となり、より講演者と参加者の距離が近く、盛んなコミュニケーションが行われていました。