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2021年6月13日(日)に、オンラインにて第30回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。今回も引き続きオンラインでの開催ということで、全国各地の多くの方にご参加いただきました。
講演の部は、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 板垣舞様、三菱電機株式会社 高田ゆかり様にご講演いただきました。
司会進行は、本機構 機構長の加藤美砂子教授が担当いたしました。

講演の部

板垣舞様(生物学) 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 神戸医薬研究所

『薬の“カタチ”をつくる仕事』

幼いころからずっと“理系”に興味があったわけではなかったという板垣さんからは、理系を志すようになったきっかけや、現在取り組まれている製薬開発のお仕事についてお話しいただきました。板垣さんは中学生までは数学や理科といった“理系”の科目は特別好きでも嫌いでもなく、バトントワリングに打ち込む日々を過ごしていたそうです。高校進学後、好きなスポーツ選手が運動生理学や栄養学などの科学的な知識をトレーニングに取り入れている姿を見たのが科学に興味をもつようになったきっかけだったそうです。高校2年生のときにJST主催のサイエンスキャンプに参加し、大学での講義や実験を体験したことで「理系っていいな!」と初めて強く感じたそうです。大学の学部選択は生物学と栄養学のどちらを専攻にするか悩んだそうですが、ご自身の興味がどちらにあるのかを考え、お茶の水女子大学生物学科に進学されました。大学ではω3脂肪酸の抗炎症作用の研究を行い、その後は横浜市立大学の修士課程に進学されました。現在は日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社で、研究開発職として薬の”カタチ”=剤形(ざいけい)の開発に取り組まれています。医薬品開発の仕事というと薬になる新しい物質を見つける仕事というイメージがあるかもしれませんが、新しい薬が出来上がるまでにはいくつかのステップがあり、その中には品質や安全性を確認するなどの様々な業務があることを教えて頂きました。大学での専攻や研究は仕事とダイレクトに結びついているわけではないそうですが、大学で身につけた基本的な科学の知識、文献調査やプレゼンテーションをする力、筋道を立てて考える力などは分野を超えて役に立っているとおっしゃっていました。最後に理系に関心をもっている参加者に向けて「大学の専攻=仕事ではなくても、理系で学んだ経験は色んな場面で生かされます。ぜひ、理系に興味をもった方は進学を考えてみてください。」というお言葉をいただきました。

 

高田 ゆかり様(物理学) 三菱電機株式会社 情報技術総合研究所

『“好き”を仕事に』

小さいころから数学が好き、宇宙や光に興味があったという高田さん。大学進学を前に進路に悩んだそうですが、自分の好きなことを学びたいと考え、物理現象を数学で記述する物理学を勉強したい!と理学部物理学科への進学を決めたそうです。お茶の水女子大学物理学科に進学後、大学・大学院では光粒子の研究に取り組まれました。修士課程修了後の進路として博士課程進学も悩まれたそうですが、生活を便利に豊かにする「もの」を開発したい、技術を生かしてものづくりがしたいという思いから、メーカーへの就職を決めたそうです。そして光に関する研究開発部門のある三菱電機株式会社へ研究開発職としてご就職され、レーザーを搭載するさまざまな製品の開発に取り組まれています。レーザーとは集光性、可干渉性、指向性(直進性)という特殊な性質をもった光のことで、産業的にさまざまな場面で利用されています。高田さんも現在までに風計測ライダ用のレーザーや医療用レーザーなど、様々な製品の開発に携わってこられました。メーカーでの研究開発職としてはたらく上では、自身が開発した製品が実際に使われることにやりがいがある反面、開発に携わった技術が必ずしも製品化される保証がなくモチベーションを保つのが難しいことや、新しい技術の開発は正解が分からないといったご苦労があることを教えていただきました。また、数年単位で異なる技術開発に携わるので日々新たな勉強が欠かせないそうですが、新しい技術に多く触れることができるのは刺激的で研究開発職ならではの喜びを感じるということでした。最後に参加者に向けて、小さなころからの“好き”なことを仕事にして活躍している高田さんから「興味があるのもがあればやってみてください。今興味があることがなくてもいつか出会えます。仕事では文理問わず広い知識と能力が必要なので得意分野に限らずなんでも関心をもってみてください。」と、興味のあることを広げて伸ばしていこうというメッセージをいただきました。

 

質疑応答

お二人のご講演の後、質疑応答の時間を設けました。講演中あるいは講演後に、参加者の皆様に質問をチャットに書いていただきました。質問を書いた参加者は、マイクを通じて自分の言葉で講演者に直接質問を投げかけました。今回は、参加者から時間内に紹介しきれないほど多くの質問があり、オンライン開催でありながら活発な交流ができました。進路選択や勉強方法についての相談、就職後のライフプランについての疑問など、幅広い質問が寄せられました。講演者のお二人が一つ一つの質問に丁寧に回答してくださったことで、参加者は目標達成へのヒントや理系の進路の具体的なイメージをつかんだ時間となったのではないでしょうか。

 

懇談会(ブレイクアウトセッション)

閉会の後、希望者のみで懇談会を行いました。ブレイクアウトセッションのツールを用いて2つの部屋を作り、講演者が1人ずつ部屋に入って、参加者との交流の場を設けました。それぞれの部屋の司会進行は、本学大学院ライフサイエンス専攻修士1年生の大堀智博さんと井上柚紀さんが担当しました。講演の部よりも少人数での実施となり、より講演者と参加者の距離が近く、ときには会話するような形で盛んなコミュニケーションが行われていました。