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2023年3月26日(日)に、第37回リケジョ-未来シンポジウム「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。本シンポジウムは、オンラインと対面のハイブリッド開催ということで、現地オンライン共に全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。

講演の部では、ハウス食品株式会社 角佳奈子様、日本エア・リキード合同会社 杉井昭子様にご講演いただきました。司会進行は、本研究所 研究員の近藤るみ准教授が担当いたしました。

講演の部

角 佳奈子様(食物栄養学)ハウス食品株式会社

“好き”の直感を信じてチャレンジしてみる

角様はお茶の水女子大学生活科学部食物栄養学科をご卒業後、同大学大学院に進学され、その後ハウス食品株式会社に就職されました。

文系科目と理系科目の両方に興味をお持ちだった角様は、高校1年の時の文理選択で、文理に興味を分けることができず選択に非常に迷ったそうです。しかし、理科の実験は学校以外で行う機会が無いことから、ここで文系を選択すると、今後理系に触れることなく生きて行く可能性があるとお考えになり、理系を選択されました。
高校2年の時は、地理の教科書に載っている世界の文化や料理について見ることが好きだったため食に興味をお持ちになり、食に関する大学の学部や書籍を探す等の情報収集をされました。その中で、お茶の水女子大学の教授が書かれた栄養教育学の書籍と出会い感銘を受け、管理栄養士国家試験受験資格を取得できるお茶の水女子大学生活科学部・食物栄養学科に進学されました。
大学受験の際には一般入試対策と推薦入試対策の両方を行われたため負担が大きかったそうですが、大学で何を学びたいか、将来はどんな職業に就きたいかをよく考えることが勉強のモチベーションとなったそうです。
栄養教育に興味を持たれたため、栄養教諭と家庭科教員免許の取得を目指し、在学中は学内で最も多くの授業を受けたと言われるほど多忙な日々を送られました。学びに集中できるのは学生だからこそ、という考えのもとハードなスケジュールをこなす中で、専門的知識と課題解決能力が身に付いたそうです。

角様は課外活動も積極的にされており、理系留学生の支援サークルや食に関するサークルで活動された他、海外でのインターンシップや給食ボランティア活動等にも参加されました。中高生向けの食育授業のボランティアに参加された際には、授業で伝えた「健康のために甘いものを控えよう」という理想とは裏腹に、美味しくて魅力的なものには惹かれてつい食べてしまうという現実を目の当たりにし、人の食行動を変えることの難しさを実感されました。そこから日々の生活や気持ちに寄り添い、食生活をより良くできる商品を開発したいと考えられるようになり、また海外での給食ボランティアの際には加工食品が人々の食生活に深く浸透していたことから、加工食品と調味料を扱うハウス食品株式会社に就職されました。現在は学生時代に勉強されたことを直接活かしながら、スパイス・ハーブ製品の開発担当をされています。

角様は、はじめは自分がどこに進んでいけば良いのか分かりませんでしたが、直感的に好きだと思うことを経験し、それを繋げて行くことで”やりたいこと”が見えてきたそうです。そして、会社に入ってからも”やりたいこと”を追い求める姿勢は続くと仰っていました。
角様から参加者の方々に向けての、「もしも今、夢や好きなことが思いつかなくても、楽にできることや自然とやっていることに注目するとそこに自分の好きや得意が隠れていることがある。また、無意識に排除している選択肢はないか考えてみて欲しい。」というメッセージは強く印象に残った方も多いのではないでしょうか。


 

杉井昭子生物) 日本エア・リキード合同会社

自分だけの“色”を創ろう

杉井様は、お茶の水女子大学理学部生物学科をご卒業後、同大学大学院に進学され、その後日本エア・リキード合同会社に就職されました。

小学校時代は受験のための勉強があまり好きでなく、理科と国語は苦手科目だったそうです。しかし、高校生になってから生物の授業で実験をした際に、生物の美しさに感動したことを機に、生物学に興味を持たれるようになりました。また、高校時代は化学が苦手だったそうですが、理系向けのイベントに参加された際にお茶の水女子大学の学生から「苦手でも嫌いにならないで」と声を掛けられたことが理系へ、またお茶の水女子大学へ進むきっかけとなったそうです。
大学では1年生から自主研究をされ、4年生からは植物生理学の研究室にてバイオ燃料を作る微細藻類に関する研究をされました。韓国の女子大と合同での研究発表会に参加された他、韓国の女子大との交流イベントの企画やイギリスへの短期留学もされるなど、課外活動も積極的に行われました。このような経験から英語で様々な国の人とコミュニケーションを取ることが楽しいと思うようになり、卒業後は国際的なキャリアに期待して外資系の企業に就職されました。現在は研究生活で培った論理的な思考力や留学等の経験で得られた語学力を活かして、様々な国や部署の人と共に液化ガスの配送効率を改善させるお仕事をされています。

研究生活では顕微鏡観察を行うことが多かったそうですが、卒業後も趣味として様々なものを顕微鏡で観察し、撮影されています。また幼少期からピアノを習われていますが、この経験から社内でのバンド活動を行なわれるようになり、社内の方々とコミュニケーションを取る機会が増えました。このように様々な趣味を持ったことが、ストレス解消や社内での部署を超えた交流などに繋がったそうです。

杉井様は何事も経験をすることに意味があり、それが将来何かしらの機会で役に立つ時が来ると仰っていました。これまでに杉井様が経験されてきた全てのことが、大切な財産となり、現在のお仕事や私生活において良い方向に働いているそうです。中でも、研究生活で培われた論理的な思考力は非常に役立っており、社会からも求められている力だと仰っていました。
広い視点を持ち、様々な経験をされた杉井様の「得意なことを続けてみることも、様々な分野に挑戦してみることも良い。目の前のことを一生懸命にやることで道が開けて、自分だけの色を見つけることができる。」というお言葉は説得力のある力強いものでした。


 

質疑応答

お二人のご講演の後、質疑応答の時間を設けました。講演中あるいは講演後に、参加者の皆様から挙手またはチャットから質問をお寄せいただきました。今回も対面会場・オンライン双方の参加者から多くの質問があり、ハイブリッド開催ならではのにぎやかな交流ができました。中高生の参加者からは、文系か理系かはどのように選択すれば良いか、高校時代までにやっておくべきだったと思うことは何か、など今後の進路決定にあたって様々な質問が寄せられました。講演者のお二人が一つ一つの質問に丁寧に回答してくださったことで、参加者は将来の進路への不安や疑問を解消するヒントを得られたのではないでしょうか

懇談会(対面)

閉会の後、対面会場の希望者のみで懇談会を行いました。こちらも多くの方にご参加いただき、終始、和気藹々とした雰囲気で講演者と盛んにコミュニケーションが行われていました。参加者の方は進路や勉強方法についてなど、より相談しやすい機会となったのではないでしょうか。