2024年3月24日(日)に、「第43回リケジョ – 未来シンポジウム ~サイエンスの学びから将来の夢へ~ 」を開催いたしました。オンラインと対面のハイブリット開催で、全国各地から沢山の方々にご参加いただきました。今回のイベントは、理系に進学した女性たちがどのような経験を経て将来への道を切り開いていったのか、将来ある中高生の方々にはどのような選択肢が広がっているのかを、講演を通じて理解していただくことを目的としております。
講演の部では、キユーピー株式会社 研究開発本部 食創造研究所の石田萌子様、東北大学大学院 薬学研究科の有澤琴子様にご講演いただきました。司会進行は、本学の伊藤瑛海特任助教が担当いたしました。
講演の部
石田 萌子 様(生物学) キユーピー株式会社 研究開発本部 食創造研究所
『 「好きなこと」で繋がる道 』
過酷な環境に直面しても逃げずに適応し、進化し続けるという特性を持つ植物に惹かれ、生物学に興味を持った石田様は、本学の理学部生物学科に入学しました。微細藻類による脂質生合成の研究から、植物の適応能力を活用して燃料不足や人々の健康問題を解決することの重要性を実感されます。
また、石田様は学生時代に様々な経験を重ねており、テニスサークルにて部長を務め、短期留学ではカナダのトロントにて多種多様な人種との交流を深められました。こうした学業以外の経験からも、チーム内で同じ方向を向いて努力することの大切さや、多様な価値観を認め合い尊重することの意義を身につけられました。
そうした学びが、食品開発の業務において、他部署と連携したり、試行を重ねて何度も挑戦したりする際に役立っていると語られています。食を通じてものづくりに貢献し、人々を笑顔にしたい。石田様のこの思いは学生時代から一貫しており、現在も多くの消費者の豊かな食生活に貢献されています。
最後に、将来を考える皆さんに向けたアドバイスで締めくくられました。「好きなことに一生懸命取り組んで、とことん突き詰めることを大切にしてください。何が好きかわからない人は、まずはなんでもチャレンジしてみてはどうでしょうか。皆さんが実際に行動して体験したことが、今後の将来を形成する重要な鍵となります。」
有澤 琴子 様(食物栄養学) 東北大学大学院 薬学研究科 助教
『 可能性を広げる「理系」という選択 』
幼少期の家庭菜園やお菓子作りなどの経験から、食事と科学の親和性に興味を抱かれていた有澤様は、大学受験を機に、理系知識を活かして困っている人を助けられる職業に注目されました。当時の本学食物栄養学科のオープンキャンパスを通じて、食物栄養分野の研究と教育に惹かれ、入学を決意されます。サークル活動で食品の商品開発や手作り菓子販売を経験したり、肥満患者の脂質細胞膜の構成脂肪酸を研究したりした経験から、健康問題の観点から人々に寄与したいと思うようになりました。
より多くの人々の健康課題にアプローチしつつ、次世代にその重要性を説きたいと考え、大学教員への道を歩まれます。その後、社会をより俯瞰したいという思いから出版社の編集者として活躍されたり、疾患に対する直接的な課題解決を図りたいという思いから薬学部の研究にてキャリアを重ねたりと、多くの経験を積まれ、現在に至ります。
最後に、「大学卒業後は、マルチな能力が求められることが多々あります。ぜひ文系にも理系にもとらわれない選択を心がけてください。そのうえで、大学の専門は『自分の軸足』となります。進路選択が必ずしも将来の道を決定するものではありませんが、人生の選択肢を増やすために、軸足を置ける範囲を広げていくことを大切にしてください。」と締めくくられていました。
質疑応答
オンラインと対面の両会場にて、参加者から様々な質問が寄せられました。質問の一部をご紹介します。
- お茶の水女子大学への進学を選んだ理由はなんですか?
―オープンキャンパスに参加した際、生徒が少人数でアットホームな雰囲気を感じたからです。教授と近い距離で研究ができるという点にも魅力を感じています。また、女子大だからか何事も人に頼らず自立している女性が多く見られるところも、本学の良いところだと思います。
- 中学や高校の間にやっておいた方がいいことはありますか?
―部活など、今しかできないことを楽しんでください。体力をつけたり、芸術的な感性を養ったりした経験が、将来の自分の可能性を広げてくれます。
―様々な大人と触れ合ってください。親や先生以外の大人の意見を取り入れることで、幅広い分野に対して多様な価値観を学ぶことができます。
- 現在のお仕事に役立てている、学生時代に培った力はなんですか?
―研究者的な思考力です。課題を設定し、仮説検証のアプローチ法を練り、計画的に遂行する……この一連の流れは、文系理系問わず様々な分野で大切になります。
―継続力です。誰もが諦めそうになる課題に対しても、試行錯誤を重ねて粘り強く挑戦する精神力は、学生時代の研究を通じて鍛えられたものだと実感しております。
懇談会(対面)
閉会後は、対面会場にて両ゲストを囲んだ懇談会が設けられました。各々の講演者と直接お話ができる機会のため、参加者の方々と積極的に相談や質問が交わされました。