2020年7月25日(土)講義:13:30~15:00 交流会:15:00~16:00
笠松 千夏氏(味の素株式会社 食品事業本部食品研究所 エグゼクティブスペシャリスト)

16人と大勢ご参加の回でしたが、講義開始前から入室次第、自己紹介と「笠松先生へのメッセージ」を語っていただき、それに対して先生が笑顔でコメントを下さる、和やかな雰囲気で始まりました。

お勤め先の味の素グループについて多角的にご紹介いただいた後、先生の肩書「エグゼクティブスペシャリスト」とはどのような役職か、ということを最初にご説明いただきました。先生の現在の立ち位置を教えていただくと共に、社内の女性活躍についてもお話しいただきました。

それから、大学入学時から紆余曲折を経て現在に至るまでの先生の研究、仕事、生活について解説していただきました。大学での官能評価の奥深さとの出会いや、出産後、アメリカの大学院で研究する中での自分(日本)を客観的に見る体験、復職後の人や地域社会との繋がり、独自の視点を育んでいく過程など、興味深く伺いました。
先生の提唱される「ワーク・ライフ・スタディバランス」に感銘を受けたという方が多くいらっしゃいました。

生活者視点での商品開発のお話では、企業に入った後、自分の考えていることと期待されていることがどうも違った、というお話から始まりました。
誰でも同じように作ることができるはずの商品を実験にかけたところ、実際は人によって出来上がりが様々になってしまうというデータが得られたというお話(示された開発者側がびっくり!)も面白かったです。そこから導き出された事実と、改善のための多方向からのアタックのお話も、問題解決の道筋の好例として興味深かったとの声がありました。
「バリューチェーン」を発展させた先生の考え方と、それに基づいて、調理者の心理に着目することで生まれたヒット商品についてもご紹介いただきました。
また、官能特性と嗜好の関連付けによる、数学的な趣のある商品開発についてもご解説いただきました。
着眼点や実験、分析のアイデア、それに示し方がどれもユニークで、研究者の自伝としても面白いお話でした。

最後に、先生が今までキャリアを築いてきた中で培われた信念について、いくつか具体的にご紹介いただきました。

今回、受講者からはチャット機能も用いて質問を受け付け、合間合間に丁寧にお答えいただきました。
また講義後のグループワークでは、お話に関連した体験や職場での実践等についてそれぞれ話し合い、最後に各グループの代表者が話題を紹介して、先生からコメントをいただきました。

受講者からは「ワークライフバランスにスタディーも加えましょうという話に共感しました。仕事と生活のバランスと言いつつも、家と職場の往復に疑問や飽きを感じて、昨年度から本講座を受講し始めた時の気持ちを思い出しました」、「商品開発で、技術者目線と消費者目線のズレをお話しされていましたが、サービスでも同じ事が言えると思います。こちらの都合ではなく利用者が今欲しいサービスを柔軟な視点で考え提供できるようにしたいです」等のご感想をいただきました。
笠松先生、根っからの文系人間にも分かりやすく面白いお話をありがとうございました。

文責 森 暁子(グローバルリーダーシップ研究所 特任アソシエイトフェロー)