2020年10月10日(土)講義:13:30~15:00
①「身近な地域で災害に関する地図を作ってみよう」長谷川 直子氏〔本学 基幹研究院 人間科学系 准教授(地理)〕
台風が日本に接近するタイミングで、ちょうど災害に関する講座が開催されました。1時間目は、長谷川先生による災害に関する地図の作成講座です。
まず、災害に対する理解にどのように地理の知識が必要となってくるか、災害の様々な種類を概観しながら解説が行われました。実際に起こった災害の写真を見ながら、土石流が起こる理由などについて考えていきました。日本は地理的に見て災害が多い国であることを確認し、自分の地域のリスクを理解するために実際に5つの地図サイトにアクセスしました。
5つのサイトはそれぞれ掲載情報(標高、古地図、浸水、地形の分類等)が異なり、自分の居住地域を横断的に把握することができました。自治体の作成するハザードマップは一つの目安として限られた想定で作成された物であり、変化する状況を総合的に判断することが重要であると確認しました。
「アニメーションで浸水時間を確認することができ、時間を考えて具体的な避難方法を考えることができました。」など、情報を基にした防災方法をすぐに考え始めている受講生もいました。
2020年10月10日(土)講義:15:10~16:40
②「家族と地域の健康を守る災害時の食事」須藤 紀子氏 [本学 基幹研究院 自然科学系 准教授(災害栄養)]
2時間目は災害食です。最初に、塾生の志望動機に書かれていた質問に答える形で講義がスタートしました。災害時は避難所に行くことがまず頭を占めますが、在宅避難が可能なように普段から備えることが大切であることを、須藤先生のご自宅の備えを例にお話くださいました。
重要なことは、備蓄はその家庭の状況で大きく変化するため、各自の判断が必要である、という点です。実際に本学の備蓄例を示し、不足点や問題点について検討していきました。特に水は飲料水だけではなく、調理に使う水を含めると1日1人3リットル必要であることを確認しました。途中で、画面越しに実際の災害食の調理をしてくださいました。まず、えびピラフ+野菜ジュースです。常温だと戻すのに1時間かかるため、講義終了時に出来上がる計算です。
実際に「備蓄品だけで2日間生活してみる」という研究の結果も示されました。1回目の研究で判明した不足点(栄養価、食欲への刺激、食感の変化など)を分析し、2回目では備蓄品を改善して取り組み、脱落者1名に留まる結果となったそうです。
災害時に備えて、ストレス回避と栄養価を配慮し、日常的なおいしさを兼ね備えて家庭備蓄することが大切なことが良く分かりました。ここで電気、ガスがない状況を考えて「レスキューフーズ」の調理実演を挟みました。こちらも時間がかかるため、こちらも講義後に仕上がりを見ていきます。
実際の災害時を想定した調理実習についても詳しく解説が行われました。どのような献立が作りやすく、美味しく栄養を補給できるか、実際の行程の写真を参照しながら学ぶことができました。
最後に災害食の実食を画面越しに拝見し、ホカホカのビーフシチューがとても美味しそうでした。えびピラフはケチャップライス風になっており、味を楽しみながら食べられそうでした。
長谷川先生、須藤先生のご講義を受講し、塾生から以下のような感想が寄せられました。
「実際のツールをつかって体験してみるということがよかったです。自治体から配布されている紙ベースの情報もいただくのですが、ほどんど見ていないと思います。VRで浸水体験できるようなツールが出ていると最近伺いました。よりリアルなイメージを持つようなものがあるとさらに自分事としてとらえることができるかもしれません。」
「地理情報や災害に関する情報が日常断片的にしか入ってきませんが、まとまった形で情報をいただけて勉強になりました。企業で防災講座をやらないところもあるので大学を通じて学べるというのは良いと思いました。」
「ハザードマップとサイポスレーダーは最近大雨のたびに見るようになりましたが、その他の地図は初めて見るものばかりで新鮮で楽しかったです。さまざまな角度から土地を知るきっかけになりました。避難生活において、食がストレスの原因とならないよう、かつ、栄養バランスが保証できるよう避難食を検討することの大切さを改めて知ることができました。台風が近づいていましたが、オンラインだったので無事受講できてよかったです。」
長谷川先生、須藤先生、平常時からの備えとリスク分析について教えていただきありがとうございました!
(文責:特任アソシエイトフェロー 林 有維)