2020年11月28日(土)講義:13:30~16:40
森 暁子(お茶の水女子大学 グローバルリーダーシップ研究所 特任アソシエイトフェロー)

11月本講座の1週空いたところの隙間産業として、サブタイトルを「日本古典文学の発想と遊び」と銘打ち、「ビジネスパーソンの教養」シリーズ第3弾を開講しました。

講師(と称するのもおこがましい者)の身上を明らかにした後、参加者の皆様にも「本」に絡めて自己紹介をお願いしました。人生の転機となった1冊や、自分の関心やルーツに深く響く存在、ユニークな著者に惹きつけられる名(迷)作など、十人十色のお話が伺えました。期せずして面白いメンバーが揃っていることを共有した上で、講義に入りました。

前半では我々の生活の中に溶け込んでいる文学に注目し、屏風や小袖、建築、作庭などを取り上げてお話ししました。先人の親しんだ古典の表され方と、文学のまなざしを持つことで異なる風景、複数の風景が目の前に出現することを説明しました。日頃、気にも留めないところに潜んでいる古典の気配に気づく、契機としていただけたら幸いです。個人的には、我ながら上手に撮れた某大名庭園の美しい写真がご披露できたので満足です。コロナが収束したら、ぜひ足を運んでお確かめ下さい!
それから、国語や日本史などの授業で名前は知っている(が、手に取ったことがない)古典で、いまぜひ読んでいただきたい上代~近世の作品を恣意的に数点ご紹介しました。バラエティに富む『万葉集』とそれにちなむ銘、意外と長明がアクティブに散歩していたと知れる『方丈記』と地図、『とはずがたり』著者の波乱の人生と、現在の歴史学からのジェンダー見直し、『曾根崎心中』の影響力と、「文学にひたりすぎない」技術についてお話ししました。どれか1点でもご興味に響くところがあれば何よりです。紹介の方法を間違えているかもしれませんが。

後半では、まず文学を活用するアイデアについて、例を挙げながらご説明しました。前半で「衣」と「住」にまつわる話題を持ってきていたため、ここでは「食」を軸にお話ししました(というのは言い訳で、本当は趣味だからです)。古典を活用したビジネスや、物語を持つことの強み、「銘」の効果について解説した後、グループワークで和菓子に銘を付け、その呪いじみた強力さを実感していただきました。優雅で高級な銘を考案して下さった方も、食べる気も買う気も失せる銘を考案して下さった方も、ありがとうございました。私の中の「最底辺の銘ランキング」がおかげさまで更新されました。
最後に、このコロナ禍の中でひっそり流行しているオンライン歌会、オンライン連歌をご紹介し、連歌と、そのカジュアル版から地位を築いた俳諧について簡単にご説明しました。連想を繋げつつ切り替え、みんなで作り上げる文芸である俳諧を、気楽に体験してみましょう!ということで、「ぐだぐだ過ごす 霜月の午後」(本日のことです)を発句(最初の句)に据え、2グループに分かれて付けていっていただきました。同じ発句なのに、まるで異なる連想が生まれており、楽しかったです。それにしても、西鶴先生はすごい!

ご参加下さった皆様からは、「古典文学への理解を深めることで、普通に見えているものが新しい意味を持って見えてくることが新鮮でした」、「古典文学は何となく小難しくて、学生時代からずっと敬遠していましたが、背景知識や現在にどのように活用されているかを知ったことで、もっと知りたいという欲求が湧いてきました」、「ぜひ、次回はフィールドワークを!」などとご感想をいただきました。皆様ありがとうございます(S様、私の幼少時のベスト時代劇はご賢察の通りです。新さんもいいけど、やっぱり長さんですよね!)。

皆様、貴重な土曜の午後に、愚にもつかぬ話を聞いていただき、一緒に遊んでいただき、本当にありがとうございました。お勧めのお菓子までご教示いただき幸せです。
またみんなでぜひ「なんちゃってオンライン俳諧」をしましょう!

文責 森 暁子(グローバルリーダーシップ研究所 特任アソシエイトフェロー)