2021年1月17日(日)講義:13:30~16:40
鹿住 倫世氏(専修大学 商学部 教授)

冒頭では前回の補論としてソーシャル・イノベーションについてお話しいただきました。病児保育や途上国の食糧支援などのNPO法人の実例を挙げ、それぞれの団体が問題を見出し、解決し、雇用と経営をうまく回していった過程について教えていただきました。善意第一、使命第一、儲けは不要と見なされがちな組織であっても、持続可能な運営方法を確立することが重要なのだなと感じました。
今回の参加者に当事者がいることから鹿住先生が急遽追加して下さったこのお話、お役に立ちましたら何よりです。

本日はイノベーションを起こす企業家(アントレプレナー)についての回でした。その心理的な特徴や、企業家と起業家の違い、研究者による定義から丁寧に教えていただきました。「アントレプレナーシップ」についても日本で定着してしまった解釈にとどまらない、本来の意味について解説していただきました。

企業家的な思考と行動、ビジョンのモデルについてのお話を伺いながら、「あの人の店は面白い商品を作るのが好き」、「あの人の店はもともと扱っていたものはぱっとしないが、流通ルートを持っている」と知人の顔を思い浮かべていました。イノベーションの源泉となるビジョンは、それぞれなのですね(さて、自分の「原動力」はなんでしょうか)。
先生からは、このモデルを踏まえてビジネスプランを作る課題を若い人に出すと、価値観が変化していることが見出せるというお話も伺い、面白かったです。

事業機会の選択や組織の特性、市場プロファイル分析、新規事業開発のプロセス等についても教えていただき、イノベーションを生み出す組織の実例についてもいくつも挙げてお話しいただきました。勤務時間の○%を自分のプロジェクトに使えるなんて、何と羨ましい。メンバーの多様性が尊重されるフラットな土壌でないと、新しく面白いものは生まれてこないようです。

グループワークでは、このコロナ禍で必要とされる、新しいシェアビジネスを考案し、先生からコメントをいただきました。店舗の空き時間にテレワークの場として貸し出すアイデアや、オンライン化に伴い需要の高くなった機材や技術を届けるアイデアなど、この状況下ならではのビジネスプランが出てきて興味深かったです。実際、素早く現状に対応して新しいサービスを成功させた企業もあることに思い当たりました。
「中小企業もターゲットに含めるといいかもしれない。なぜなら…」、「こういうサービスも並行で行うと広がりがある」、「この形であれば、コロナ収束後にも需要がある」などと、鹿住先生からは顧客ターゲットや付加価値についてご指摘が百出し、いちいち膝を打って伺っていました。ビジネスプランを練り上げるのは難しいですね。でも、「グループのメンバーの職種が色々だったので、思いも寄らない情報や案が出てきて面白かったです」とおっしゃる方もいらっしゃいました。

1月講座前半、あっという間に幕となりました(もっと伺いたいです!)。
受講者の皆様からは、「グループディスカッションで色々なアイデアが出て、ビジネスの種は実はいろいろなところにありそうだと感じました。実際に実行に移すのはまた別の難しさがあるのかもしれないけど、ビジネスチャンスという視点で物を考えるのを習慣にしたいと思います」、「先生にお聞きしました価値観に基づく事業機会の選択をゆっくり見つめなおし、今後の地域活動(ソーシャル的な事業展開をしています)を丁寧に考えなおしたいという気持ちになりました」、「多様な視点で、たまには外側から見る視点も必要であると勉強になりました。ゼロから生み出すと大変ですが、あるものを変革して新たな価値を生み出すのは、少しはできそうな感じがします。チャレンジ to チェンジの精神で。ありがとうございました」などとご感想をいただきました。

鹿住先生、今年度もありがとうございました。今回残念ながら欠席された方から熱いリクエストも寄せられていますので、今後とも末永くよろしくお願い申し上げます。

文責 森 暁子(グローバルリーダーシップ研究所 特任アソシエイトフェロー)